2018年1月22日月曜日

平昌五輪 首相欠席問題を批判しないマスコミ

 平昌冬季五輪が近づいていますが、安倍首相開会式への欠席をちらつかせて、出席を明言していません。
 韓国側が日韓合意の見直しに言及したことがその理由であるのは明らかで、一国の首相が慰安婦問題を理由に五輪を欠席することが、いか子供じみた恥ずべき行為であることが分からないのでしょうか。それが国際社会から認められることはありません。
 それなのに日本のテレビ界では何故か反韓・嫌韓の一色で、首相の欠席を支持しています。国際世論の視野から安倍首相を批判すべきメディアがこれでは、この風潮は直りようがありません。

 15年末の日韓合意で韓国側が強調したのは、「不可逆的な謝罪でなければならない」ということでした。これは慰安婦問題について、日本のある内閣が謝罪しても別の内閣がそれを否定することが重なったことについての苦言で、極めて当然の主張でした(それを日本側は勝手に「不可逆的な合意」にすり替えました)。

 現在の安倍政権の姿勢を見ると、「首相の心からのお詫び」は実質的に「一内閣」の間に否定されたわけで、韓国側の懸念が実現化しました。
 強い米国にはひたすら卑屈に振る舞う一方で韓国には傲慢に振る舞う、朝野をあげてのこのあり方こそは「愧ずべき」ものです。

 LITERAの記事を紹介します。
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平昌五輪出席問題で安倍首相がまたぞろ卑劣な二枚舌!
しかしマスコミは安倍批判を一切せず、韓国バッシング
LITERA 2018.01.21
 韓国が慰安婦問題日韓合意見直しの方針を打ち出したとたん、平昌冬季五輪開会式への欠席をちらつかせはじめた安倍首相。外務省や自民党幹部までが出席を進言しているというのに、いまだ首をたてにふらず、態度をはっきりしていない。

 一国の首相が慰安婦問題を理由に五輪を欠席することが、いかに恥ずべき行為で、世界中からの「歴史修正主義者」という非難を招くものであるか、この男は、わかっているのだろうか。
 いや、わかっているのだろう。だからこそ、安倍首相は平昌冬季五輪欠席をちらつかせながらもその理由が日韓合意見直しであることを一切口にしていない。欠席する際にも「来年度予算の成立に向けて国会に専念するため」「平昌は−20度で寒すぎる」など、お笑い種のような理由が検討されているという。
「安倍首相自身は欠席を頑なに主張しているようですが、今回はさすがに国際社会から一斉に批判されるのが目に見えているので、最終的には、出席することになるかもしれません。そのときになって、“大人の対応”とかなんとか、ごまかすつもりなんでしょう」(全国紙官邸担当記者)

 まったく相変わらずの二枚舌ぶりだが、驚いたのはマスコミの姿勢だ。こうした安倍首相の態度を批判するどころか、テレビのワイドショーでは「安倍首相は行かなくていい!」の大合唱。南北会談や北朝鮮の平昌冬季五輪参加のニュースと併せ伝え、猛烈な韓国、平昌冬季五輪バッシングが巻き起こっている。

 とくに露骨だったのが、14日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ)だ。ゲストコメンテーターとして出演したキャスターの安藤優子は、「北朝鮮がなんでそこまでオリンピックに参加することを文在寅大統領がこだわるのか」と言い、その理由を「(文大統領は)平和の祭典になっただろうという手柄を立てたいわけですよ。だから北朝鮮は『おまえに手柄を立てさせてやるから』という、割り合い、上から目線の状態で参加をするという」と解説すると、松本人志も「そうですよね。主導権は全部向こう(北朝鮮)の感じ」と同意。「結局はオリンピックはそっち(政治)に利用されてますよねえ」と述べたのだ。

 こいつらは一体何を言っているのだろう。北朝鮮の五輪参加はいま、米朝戦争危機を回避するきっかけになる、少なくとも五輪中にテロや戦争が起きる可能性はなくなる、と世界中から歓迎されているのだ。実際、北の五輪参加からに約2年ぶりに南北で会談がおこなわれたことについて、アメリカ政府も歓迎。
 ところが、連中は北朝鮮には何が何でも制裁を加えるべきで、対話にもちこもうとする行為は敵対行為としてとして全否定。“韓国は国際世論に反して北朝鮮の言いなりになった”とばかりに批判し、「五輪の政治利用だ!」と強調するのだ。どう考えても、五輪を政治利用しているのは、安倍首相のほうだろう。

松本人志、安藤優子がデタラメだらけの平昌五輪、韓国バッシング
 しかも、唖然としたのはこの後だった。日韓合意でヒロミが、この新方針と北朝鮮の五輪参加を絡めて「韓国ってわかんない!」と言い出し、「日本と決めたこと……もうちょっと日本にもアレしてくれりゃあいい」というヒロミにつづいて、松本がこう追い打ちをかけたのだ。
「あんだけ世界のルールをめちゃくちゃにした国がタダでオリンピック行けるっておかしくないですか? だったらもうやったもん勝ちやんけっていう」

 クーベルタンの提唱したオリンピズムに「スポーツを通して文化や国籍などの違いを越え、フェアプレイの精神を培い、平和でより良い世界を目指す」とあるように、国家や政権とか関係なくいかなる国籍の人間でも参加できるというのがオリンピックの根本原則だ。実際、北朝鮮と同じように反民主主義的で、戦争行為を仕掛けているような国家の選手たちも何人も参加している。根拠のない対イラク戦争を仕掛けたアメリカや、クリミア半島に侵攻したロシア、内乱で自国民を大量虐殺したシリアだって、その後に五輪に参加している。
 松本はそんなことも知らずに「オリンピックはタダで行けると思うな」などといった荒唐無稽な主張を強弁したのだ。

 まさに無教養なデタラメと言うしかないが、しかし、こうした主張は、話題が日韓合意新方針に移ると、さらにヒートアップする。松本は「笑ってしまうくらいダメでしょ?」と強調し、話を振られた安藤も「日韓合意は正式な合意だったことは否定しないと韓国は言っているんですよ。でも、あれは当事者の気持ちを汲んでないからダメだって、これ、まったく整合性がないじゃないですか(笑)」と展開した。

 当事者の気持ちが反映されずに勝手に政府間で合意をおこなったならば、それを見直そうとすることは当然の話である。また、前政権による合意が選挙を経て翻るケースはよくあることなのに、合意を絶対視して「整合性がない」というのはデタラメだ。

 だが、こうした安藤の意見をまとめるようにして口を開いた松本は、このように述べた。
「(10億円を)返してくれよ(と言うと韓国は)『返さない』。で、『誠意を見せろ』。じゃあどんな誠意を見せたらいいんですか? (韓国の返事は)『考えろ』。(スタジオ爆笑)……めちゃくちゃですよね」

 この松本の発言もまったく事実ではない。日本政府は韓国からの10億円返還など求めておらず、韓国政府は新方針で自国での10億円負担を予算化しているのだ。実際に菅義偉官房長官も「現実に10億円のこと言って来たら、それは再交渉と同じじゃないですか。ですから私は日本は1ミリたりとも動かないと。まったく応じる気はありません」と述べている。つまり、韓国が「10億円は返さない」と言った事実などなく、返還に応じないのは日本のほうなのに、松本はこうした虚偽によって韓国が強欲で無理難題を押しつけているような印象を広めたのだ。

 しかも、松本のこの発言のあと、ヒロミは「どんだけ日本嫌いなんだろうね? 毎回思うけど」と話すと、松本は肩を振るわせて笑っていた。ここには、日本は加害国で韓国が被害国だという意識など微塵もない。心からの謝罪など、安倍首相はこれまで一度たりともおこなってこなかったのにもかかわらず、松本もヒロミも“何度も謝った”と言い張り、呆れたように笑って見せることで韓国は“意地汚い国”だと誘導するのである。

 しかし、こうした報道は『ワイドナショー』だけのものではない。なかでも、連日のように韓国バッシングをおこなっているのが『ひるおび!』(TBS)だ。

 11日の放送で落語家の立川志らくが「(約束を反故にされたら)そりゃ安倍総理は行かないですよ、平昌オリンピックに。私だって行かないですよ。そのぐらい腹ただしい。もっと日本人怒るべきじゃないですか?」と激怒したことは本サイトで先日もお伝えしたが、同番組で南北協議と北朝鮮の五輪参加を批判しつづけたのは八代英輝弁護士だ。
 嫌韓を隠さない八代弁護士は、五輪参加を「北朝鮮が参加して喜ぶのは韓国だけなんで」「国際社会としては、北朝鮮が平昌オリンピックに参加するかどうかは、ある意味、どうでもいいことであって、二国間の問題ですよね」と吐き捨てる一方、日韓合意新方針では、やはりこんな主張を繰り返した。
「最終的かつ不可逆の合意というように双方が約束したことを、平気でこうやって蒸し返そうとしてくる。これはやはり国とは言えないですよね」(11日放送での発言)
「本来でしたら平昌オリンピックの開会式も当然、安倍総理はご出席される意向だったと思うんですけど、やはりこれから韓国との信頼関係を積み重ねていこうという、その一段目を崩されてしまいましたから。しかも、このオリンピック開会間際にこういうことをされてしまったので、なかなか出席というわけにはいかないと思うんですよね」(12日放送での発言)

『サンデーモーニング』までが日韓合意見直しを批判
 合意見直しは韓国の国内事情に過ぎず、文大統領による人気取りのための反日政策だ。慰安婦問題は解決済みの話なのに国際的に通用するはずがない。安倍首相の五輪欠席は当然だ──。このようなコメント・解説は、『ワイドナショー』や『ひるおび!』だけではなく、いま、報道のスタンダードになってしまっている。実際、ネトウヨから毎度総攻撃を受けている『サンデーモーニング』(TBS)でさえ、司会の関口宏は合意見直しを「矛盾だらけの話」だと批判した。

 だが、同番組では、このようなまっとうな意見も出た。元国連開発計画(UNDP)職員の大崎麻子・関西学院大学客員教授のコメントだ。
「たしかにこの問題は二国間の問題ではあるんですけれども、でもその背景に紛争下における性暴力ですとか強制売春について、これはいま起こっている現代的な問題で、それに対する国際的な意識の高まりは国際的に非常に大きいということを理解しておくことが必要だと思うんですね」「これは普遍的な女性の人権の問題であるという国際潮流ができあがっているんですね。それを私は韓国もすごくわかっていると思うんです。なので、日本の主張が国際社会で受け止められるかどうかといったときに、日本はいま、国内外で女性の人権や暴力の問題とどう向き合っているのかということも、非常に重要な評価のポイントになるんだというふうに思います

 読売新聞社がおこなった世論調査では、韓国からの追加要求に応じないとした日本政府の方針を「支持する」と答えた人が83%に上ったが、こうした世論を生み出しているのはマスコミの報道にも大きな原因がある。だが、肝に銘じなければならないのは、被害者である元「慰安婦」の人びとにとって、心からの謝罪もなく、手紙も応じず、歴史修正主義をあらわにする安倍首相の態度がどのように受け取られているのか、さらには戦時性暴力に対して「金は出した」「謝った」と開き直る人権意識のかけらもない政府の態度が国際的にどう受け止められているのか、そうした視点がまったくないまま突き進めば、どんどんと国際社会から孤立してゆくということだ。

 先進国とは思えぬ人権意識の低さをアピールしつづけ、五輪を政治利用してみせる総理大臣と、それを支える国民。こんな国で、果たして東京五輪は開催できるのか。甚だ疑問だ。(編集部)