昨年ノーベル文学賞にカズオ・イシグロ氏が選ばれたときには安倍首相は即座にお祝いコメントを出したにもかかわらず、ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のノーベル平和賞受賞には現在にいたるまで一切の祝福コメントを出していません。
それだけではなく、ICANのベアトリス・フィン事務局長は12日に来日するに当たり、昨年12月22日と今年1月8日の2回にわたり、内閣府を通じて安倍首相に面会を要請したものの、「日程の都合が合わず面会できない」と断られたということです。
東欧歴訪の安倍首相の帰国は17日午後4時ごろで、フィン氏が日本を発つのは18日昼すぎなので、17日夕方から18日午前までの日程をやりくりすれば、安倍首相がフィン氏と会うことは可能だった筈です。
ことほど左様に安倍首相の反核・平和運動への敵視は徹底しています。
かつて安倍氏が在野中に世耕氏らに組織させた自民サポーターズクラブは、いまや数万の規模に達したそうですが、その他のネトウヨを巻き込みながら陰湿な活動を活発化させています。
彼らは有名人、特に芸能人やアーティストなどが少しでも政治的発言、とりわけ安倍政権を批判しようものなら、すぐさま総攻撃を開始しして相手を辟易させます。それは吉永小百合さんでさえ例外ではなく、ネット上では “在日” “反日女優” “売国芸能人” などという大バッシングに晒されているということです。
安倍氏らはまことに陰湿で異常な世相を現出させました。
確固たる覚悟を持って声を上げ続ける吉永さんに賛辞を贈りつつ、LITERAの記事を紹介します。
日刊ゲンダイの記事も併せて紹介します。
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ICANの面会を断りバルト3国で北朝鮮危機を煽る安倍首相!
吉永小百合は対話に向けて「一人一人が声をあげることが大事」と
LITERA 2018年1月15日
昨年ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)のベアトリス・フィン事務局長が現在来日中だが、来日に合わせ安倍首相に面会を申し込んだが断られていたことが明らかになった。安倍首相と言えば、カズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞受賞には即座にお祝いコメントを出した一方、ICANのノーベル平和賞受賞には現在にいたるまで一切の祝福コメントを出していないなど、一貫して冷淡な態度をとり続けている。今回の面会拒絶で、核廃絶に後ろ向きな安倍首相の姿勢がまたしても露呈した格好だ。
ICANを無視した安倍首相がいま何をしているかというと、わざわざバルト3国まで出かけて行き、エストニアの首都・タリンや、リトアニアの首都・ヴィリニュスについて「タリンもヴィリニュスも北朝鮮の弾道ミサイルの射程圏内」「欧州全体の危機」などと、北朝鮮の脅威を煽ってまわっている。平昌五輪への参加問題をきっかけに南北会談が実現したことで、対話に向け世界各国が協調しているなか、いまだ「対話より圧力」路線を崩そうとしていない。
戦争を回避するどころか、積極的に戦争を煽る姿勢を貫く安倍首相だが、そんななか、2018年1月6日付朝日新聞のインタビューに応えた吉永は、現在の状況についてこのように怒りをにじませた。
「東アジアは大変な状況ですけれど、それでもみんなでテーブルについて話さなければならない。そうさせるのは私たち一人一人です」
吉永といえば、日本のみならず世界中で原爆詩の朗読会を開き核廃絶を訴えてきたことでもよく知られているが、加えて昨年は、ICANがノーベル平和賞を受賞した記念碑的な年。
前述のとおり安倍首相がICANの平和賞受賞に冷淡な態度をとり続けているが、昨年12月11日の定例記者会見にてICANの受賞について質問が及んだ菅義偉官房長官も、核兵器禁止条約について「我が国のアプローチと異なるものであり、署名、批准は行わない考え」とコメント。改めて安倍政権には核廃絶や平和のために行動しようなどという考えは微塵もないことが明らかになっている。
そんななか、朝日新聞のインタビューでICANについて問われた吉永は、このように述べている。
「今、核兵器の禁止をそれぞれの国の人たちが考え、意見を出し合って大きな流れにしたのは素晴らしい。次は、この国で生きている一人一人が声を出していくことが大事だと思います」
吉永は今年3月公開予定の滝田洋二郎監督作『北の桜守』で南樺太からの引き揚げ家族の母を演じる。15年には、山田洋次監督作『母と暮せば』にて、長崎の原爆で息子を失った母を演じていた。
女優としての演技の仕事や、インタビューや、朗読劇の公演など、吉永は自分の関わるありとあらゆるチャンネルを使って平和への思いを訴えている。
吉永小百合が語った、芸能人が政治的発言をすることのリスクと自身の覚悟
先に引いた発言のなかで、「みんなでテーブルについて話さなければならない。そうさせるのは私たち一人一人です」や「この国で生きている一人一人が声を出していくことが大事だと思います」と話している通り、吉永は人々が自発的に声をあげることの大切さを繰り返し語る。
確かに、それは重要なことなのだが、なぜ彼女は人々ひとりひとりが声を出すことをそれほどまでに説くのか。その背景には、吉永の母が語った太平洋戦争中の体験がある(吉永小百合は東京大空襲の3日後に代々木で生まれた)。
「女性自身」(光文社)16年8月23・30日合併号に「みんな、声をあげて! 命が押し潰される前に」と題して掲載された、東大名誉教授で政治学者・姜尚中氏との対談のなかで、吉永はこのように語っている。
「私は若いころ、母に『なぜ戦争は起こったの? 反対はできなかったの?』と質問したことがあるのです。
そしたら母は、ひと言『言えなかったのよ……』って。言えないってどういうことなんだろうと、その時には理解できなかった。けれど最近、母の言っていた意味がわかります。今の世の中を見ていると息苦しい感じがして」
吉永の言う通り、この国は日を増すごとに、権力に対しアンチテーゼを唱えるような発言をすることが難しい国になってしまっている。
それはとくに、芸能人やアーティストなどにおいて顕著な傾向だ。著名人が少しでも政治的発言、とりわけ安倍政権を批判しようものなら、ネットですぐさま炎上騒動が巻き起こり、血祭りにあげられる。それは吉永でさえ例外ではなく、ネット上では“在日”“反日女優”“売国芸能人”などという大バッシングに晒されている。
しかし、それでも吉永はひるまない。前掲朝日新聞のインタビューで記者から「息苦しくなってきた世の中で、芸能界で発言することは厳しくないですか」と問われた吉永は、このように喝破している。
「それは、自分たちでそう思っちゃっているところがあるかもしれませんね。ラジオ番組などでご自分の意見を言われている方もおられるし。結局、その人がどう向き合うかだと思うんですね」
しかし、その一方で、吉永は「弱い立場の人にはダメージが大きすぎることもある」とも付け加え、政治的発言が芸能人としてのキャリアの存続を危険にさらしてしまうケースがあることへの配慮を語る。そのうえで「私たちみたいに(芸能活動が)長い人間が発していかないと」と、決意を述べている。
そもそも、権力に対して疑問の声を呈しただけで炎上を焚き付けられるような現状が異常なのは言うまでもない。しかし残念ながら、2018年もそのような状況は続くだろう。
だからこそ、吉永のように、確固としたキャリアをもっている人にはこれから先も積極的に社会的なメッセージを発信してもらいたいし、若い世代からもそれに続く流れが生まれることを切に願う。
「日程合わず」と面会拒絶 安倍首相ICAN“門前払い”の狙い
日刊ゲンダイ 2018年1月16日
昨年、ノーベル平和賞を受賞したNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の事務局長で、初来日中のベアトリス・フィン氏の面会要請に、安倍首相が“門前払い”をくらわせた。
フィン氏は長崎大の招待に応じて12日に来日した。長崎、広島を訪問し、きょう午後には超党派の国会議員との討論集会に参加。ICANの主要運営団体「ピースボート」によると、昨年12月22日と今年1月8日の2回にわたり、内閣府を通じて面会を要請したが、外務省から「日程の都合が合わず面会できない」との回答があったという。
菅官房長官は面会拒否について、「日程の都合上だ。それ以上でも、それ以下でもない」と言い張るが、東欧歴訪中の安倍首相の帰国は17日午後4時ごろ。一方、フィン氏が日本を発つのは18日昼すぎだ。17日夕方から18日午前までの日程をやりくりすれば、安倍首相がフィン氏と会うことは可能だったはずである。
安倍首相は普段、官邸で「ミス〇〇」などの表敬訪問を受け、鼻の下を伸ばしているクセに、ノーベル平和賞受賞者の面会をすげなく断るとは、よっぽどICANの活動を毛嫌いしている証拠だ。
「ICANの平和賞受賞の理由は広島、長崎の被爆者と連携して核兵器の非人道性を訴え、使用・保有などを全面禁止する『核兵器禁止条約』の国連採択に尽力したこと。被爆国として日本は核保有国と非保有国との『橋渡し役』を自任してきたのに、安倍政権は『核の傘』に依存する米国の反対などを理由に禁止条約への署名を拒否したのです」(外交関係者)
ICANの平和賞受賞後も、安倍政権は「政府のアプローチとは異なるが、核廃絶というゴールは共有」などと、味も素っ気もない談話を発表したのみ。ICANには一貫して冷淡なのだ。
「『日程の都合』なんて体のいい断り文句で、禁止条約に反対するトランプ米政権の機嫌を損ねたくないだけ。安倍政権は2016年4月に『憲法9条は一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止しているわけではない』と閣議決定。武器輸出三原則を葬り去ったように、いずれ『持たず、作らず、持ち込ませず』の非核三原則の撤廃にも道筋をつけたいはず。2年前のオバマ前大統領の広島訪問同行時には『核兵器のない世界へ』と表明し、広島・長崎の原爆犠牲者の慰霊式では『被爆者に寄り添う』と語っていますが、しょせん上辺だけ。核廃絶を望む被爆者を突き放してばかりです」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
被爆国の首相として恥ずかしくなる。