アベノミクスの柱である金融の異次元緩和は、本来は短期で行って目的を達したら常態に復すべきものです。しかしいつまで経っても物価上昇が起きないままもう5年近くも継続されています。
こんなに長期に続ければ経済の構造が歪になってしまい、今度は常態に復させようとした瞬間に巨大な反作用が起きて、収拾がつかなくなります。
16年1月末にはゼロ金利政策を導入した結果金融業界が大打撃を受け、メガバンクで大々的なリストラが起きています。
すべては、消費税を10%に上げるために物価をムリに2%上げようとするからで、日刊ゲンダイは、日銀=政府の中で「目的と手段が入れ替わり、物価本位主義となった」結果であるとしました。経済が活性化した結果として物価が上がることと、ムリに見掛けの物価だけを上げるのとでは、消費税アップ後の悲劇の深さが全く異なります。
いまや、続けるべきでない経済政策を続けるしかないというのが現政権が陥っている状況です。このままでは大金持ちと大企業だけが利を貪るという構造は今後も続きます。
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とっくに破綻した異次元緩和 黒田日銀が強気継続の厚顔
日刊ゲンダイ 2018年1月24日
国民生活は苦しくなるばかりだ。日銀は23日の金融政策決定会合で、現行の金融緩和策の継続を賛成多数で決めた。
安倍政権と黒田日銀が政策協定を結び、物価上昇率「2%」を掲げて「異次元緩和」と称した大規模緩和を始めたのが13年4月。だが、4年8カ月経っても「2%」は一度も達成されず、時期は6回も先送りされた。
昨年11月の消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)は前年同月比0・9%で、日銀内でも大規模緩和に対する懐疑的な見方が支配的だ。にもかかわらず、黒田総裁は「達成に向け、(緩和を)粘り強く続ける」「変更の必要はない」と言い切っていたから唖然ボー然だ。
経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「金融緩和の目的は、ざっくり言うと『経済の成果を上げるため』です。企業収益が過去最高となり、(政府の言う通り)完全雇用状態になったのであれば、本来は手段である金融緩和を続ける必要はないはず。しかし、黒田日銀は目的と手段が入れ替わり、物価本位主義となってしまった。金融緩和というのは本来、短期で行うもの。長期に実施すれば経済に“歪み”を生じさせるからです。
今やゼロ金利、マイナス金利によって90年代に30兆円ほどあった個人の金利資産はほぼ失われ、金融機関では行員の大規模リストラに加え、ATM廃止論さえ出てきている。すでに大きな副作用が出始めているのです。もはや2%達成は絶望的で、金融緩和の維持は日本経済にとってダメージを与えるだけなのに、黒田総裁は悪びれる様子もない。失望を通り越して怒りすら覚えますね」
金融緩和で円安が進み、輸出企業を中心に大企業はボロ儲けしたものの、低賃金は相変わらず。黒田日銀が「2%」にこだわり続けるほど、庶民生活が圧迫されることになるのだ。安倍政権に水面下で「総裁続投」をほのめかされて黒田総裁が強気になっているのだとすれば、なお許し難い。