「読売」は5月3日付で首相の改憲発言を掲載しましたが、インタビューの2日前には、渡辺恒雄「読売」主筆とインタビュアーの政治部長が首相と日本料理店で2時間にわたり会食するなど、渡辺主筆は、今年だけで5回も首相と会食をしています。
この5年間で安倍首相と会食した回数は、「読売」38回、日本テレビ21回、「日経」16回、「産経」14回、フジテレビ11回です。
「読売」には、官邸と結託して前川元文科次官の人格攻撃をした疑惑もあります。
こうした権力との癒着はメディアの自殺行為であり海外では『あり得ないこと』です。
しんぶん赤旗が、これでは権力の監視などできないとする記事を出しました。
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「権力の監視」できるのか 安倍首相とメディア幹部の会食
「読売」突出 5年で38回
しんぶん赤旗 2017年12月31日
国政私物化疑惑にまみれ、改憲への執念を際立たせている安倍晋三首相と大手メディア幹部との会食が、今年も15回に及びました。首相は5月に2020年までの9条改憲構想を「読売」紙上で明らかにしましたが、同社幹部との会食は8回、第2次安倍政権以降の5年間では38回と突出しています。
「読売」が首相の改憲発言を掲載したのは、5月3日付でしたが、インタビューが行われたのは4月26日。その2日前には、首相と渡辺恒雄「読売」グループ本社主筆、インタビュアーとなった前木理一郎政治部長とが飯田橋のホテル内の日本料理店で2時間にわたり、会食しています。
「読売」インタビューは「憲法施行70年を迎えた。改めて憲法改正にかける思いを」という質問から始まり、首相に言いたいことを言わせるもので、報道機関としてのあり方が問われました。国会では、改憲発言の意図について野党から質問を受けた安倍首相が「読売新聞を熟読して」と答弁し、国会軽視と問題になりました。
そのインタビューの裏では、社のトップとインタビュアーが首相と会食してすり合わせをしていたのではないかと思わせる行動は報道機関失格です。「読売『御用新聞』という汚名」という見出しの週刊誌記事まで出ました。
ちなみに、渡辺主筆は、5年間で18回、今年だけで5回も首相と会食を繰り返しており、特別の親密ぶりが問われています。
「首相が選別・利用」進む
表:安倍首相とメディア幹部の会食(2017年)
安倍首相とメディア幹部との会食から見えてくるのは、首相によるメディアの選別と利用が、5年間でいっそう進んでいることです。「権力の監視」というジャーナリズム本来の役割が果たせない状況が危惧されます。
政局の節目で
5年間で会食回数が突出しているのは、1面所報のように「読売」38回、次いで同社が大株主の日本テレビが21回。フジサンケイグループでは「産経」14回、フジテレビ11回です。また、「日経」も16回に及んでいます。
重大なのは、首相がこれらのメディアを使って、政局の節目節目で発言していることです。2月に、トランプ米大統領との日米首脳会談を終えて帰国した首相は、BSフジとNHKの「ニュースウオッチ9」に生出演し、訪米の“成果”をとくとくと語りました。
5月3日には、「読売」で改憲インタビューを掲載。同月15日には、「日経」系のBSジャパンと日経CNBCの共同インタビューで改憲問題を語っています。
9月の衆院解散前の13日には、「日経」の単独インタビューでのちに総選挙の公約の目玉になる「全世代型の社会保障制度」をめざす考えを披露しています。
そして、総選挙開票日の翌日(10月23日)には、「読売」渡辺恒雄主筆、「産経」清原武彦相談役、「日経」芹川洋一論説主幹、共同通信・福山正喜社長と、“祝杯”をあげるかのように、東京・大手町の読売新聞東京本社ビルで会食するという念の入れようです。
さらにはトランプ大統領の来日前後では、長女のイバンカさん持ち上げ報道がテレビを席巻するなど異常なお追従報道が目立ちました。
これらのメディアには、権力の監視というジャーナリズムの自覚があるのかが鋭く問われます。
問われる癒着
もう一つ、問われるのは、首相とメディア幹部の会食の中で権力との癒着が疑われる事態が生まれていることです。
5月17日、「朝日」が加計疑惑にかかわる文科省の内部文書をスクープし、「赤旗」も翌日続きました。首相の腹心の友・加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園の獣医学部新設について、「官邸の最高レベル」の意向が働いたとの疑惑が噴出しました。24日には、前川喜平前文科事務次官が、内部文書について「自分が説明を受けた際に示された」と証言しました。
ところが、前川証言の3日前、こうした動きを察知したかのように「読売」(5月22日付)が「前川次官、出会い系バー通い」と人身攻撃の記事が出たのです。菅義偉官房長官は、「出会い系バー通いには違和感がある」と人間性をおとしめ、問題をそらすために利用しました。
犯罪行為でもない個人の行動が、公器である新聞に出ること自体が異例でした。前川氏によれば、「読売」記事が出る直前、首相補佐官から面会の申し入れがあったといいます。
仮に権力と結託して告発者を攻撃したとすれば、メディアの自殺行為です。「読売」は6月3日付に東京本社社会部長の署名記事で「不公正な報道であるかのような批判が出ている。…こうした批判は全く当たらない」と菅長官ばりの反論をおこないました。
「出会い系バー」記事が掲載された1週間後、「読売」の編集局総務、政治部長、国際部長の3人が、赤坂の居酒屋で、安倍首相と3時間あまりにわたって会食しています。