2018年1月18日木曜日

18- 原爆症 大阪高裁も認定/生活保護 奨学金収入認定に賠償命令 福島地裁

 大阪高裁は、2013年に国が後退させた原爆症認定新基準について「内部被ばくの影響を考慮しないなど過小評価の疑いがある」とする一審判決を支持しました。
 国が認定基準を改正しないと、今後も原爆症の認定申請から裁判で認められるまでに、極めて長期間が掛かるという事態が改善されません。

 それとは別に、高校入学の娘の奨学金を全額収入認定され、生活保護費を削られた母親が、福島市を相手に損害賠償を求めた裁判で、福島地裁は市の処分が違法だと認め、親子に各5万円ずつの賠償を命じる原告勝訴の判決を言い渡しました。
 市は、事後的に奨学金相当額を追加支給したので損害は発生していないと主張しましたが、地裁は経済的な不安、精神的苦痛など、原告親子の損害発生を認めました。
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原爆症 高裁も認定 近畿訴訟 新基準の誤り指摘
しんぶん赤旗 2018年1月17日
 原爆症の認定申請を却下された京都府と兵庫県の被爆者6人が、国の処分取り消しを求めた「ノーモア・ヒバクシャ近畿訴訟」の控訴審判決が16日、大阪高裁でありました。高橋譲裁判長は、6人のうち3人を原爆症と認めた一審大阪地裁判決を支持し、一審で敗訴した原告3人と国の控訴をいずれも棄却しました。

 一審判決は、2013年に国が定めた新基準について「内部被ばくの影響を考慮しないなど過小評価の疑いがある」と指摘。甲状腺機能低下症の3人は原爆に被爆したことが原因と認めました。一方、狭心症や心筋梗塞、ケロイドの3人は放射線が原因とは認めませんでした。

 判決について藤原精吾弁護団長は、国の認定基準が誤っていることを再度明確にしたと評価した上で「被爆者が原爆症認定を受けるためには裁判を起こさなければならないという異常事態がなお、続いているということを示している」と指摘し、全原告の救済を求めました。
 ノーモア・ヒバクシャ訴訟では、新基準で対象外とされた被爆者を認定する司法判断が相次ぎました。しかし、2017年11月の広島地裁で原告12人全員が敗訴となり、大阪高裁の判断が注目されていました。

国は認定行政の転換を
判決受け全国原告団など会見
 ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国原告団と弁護団、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表らが16日、同日の原爆症認定訴訟・大阪高裁判決を受けての記者会見を東京都内で開きました。

 原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会事務局長の宮原哲朗弁護士は、「国は被爆者の実態を無視した態度を早急に改め、被爆者の立場に立った原爆症認定行政に抜本的に転換すべきだ」と訴えました。
 ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国弁護団連絡会事務局長の中川重徳弁護士は、原爆症の認定申請から裁判で認められるまでに8年、9年もかかっているとのべ、長期の裁判闘争を強いている異常さを告発しました。
 日本被団協代表理事の大岩孝平さん(85)は「国を相手に裁判を起こすのは大変なこと。泣き寝入りしている被爆者がたくさんいる」と訴えました。

 記者会見に先立ち代表らは厚生労働省に次の項目を要請しました。
(1)原爆症認定基準を定めた「新しい審査の方針」の誤りを認め、これを変更し、全被告を救済すること
(2)被爆者が「裁判をする必要がないように」被爆者援護法と原爆症認定の在り方を抜本的に改め、被爆者の命あるうちに問題を解決すること
(3)唯一の被爆国として核兵器の非人道性を国際世論に訴え、核兵器禁止条約に加入し、核兵器廃絶国際運動の先頭にたつこと―。

(関係記事)
原爆症認定で新基準 厚労省分科会 被爆者の要求退ける
 しんぶん赤旗 2013年12月17日
 被爆者からの原爆症認定申請を審査する厚生労働省の被爆者医療分科会は16日、同省内で会合を開き、同省が示した新しい認定基準を了承しました。現行基準を後退させ、被爆者の間に新たな線引きを持ち込むものです。

 がんや白血病、副甲状腺機能亢(こう)進(しん)症は、爆心地から3・5キロ以内で直接被爆したか、原爆投下後100時間以内に2キロ以内に入市したなどの条件に該当すれば原則的に認定します。しかし、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変は2キロ以内の被爆または投下翌日までの入市を積極的に認定すると限定。放射線による白内障は1・5キロ以内の被爆を積極認定するとしました。この七つの病気以外に積極的に認定する病気は追加されませんでした。

 認定制度の抜本改定を求める被爆者の要求を退けたことに対して、日本原水爆被害者団体協議会などは同日、同省内で記者会見を開き、「残留放射線の影響や被爆の実態をふまえて認定してきた司法判断を無視するものである」と抗議する声明をだしました

 広島市の松井一実市長と長崎市の田上富久市長は同日、首相官邸で加藤勝信官房副長官と面会し、安倍晋三首相あてに認定範囲の拡大を要請しました。


生活保護 福島市の処分 違法
奨学金収入認定 削減に賠償命令 福島地裁
しんぶん赤旗 2018年1月17日
 高校入学の娘の奨学金を全額収入認定され、生活保護費を削られた福島市在住の母親のNさんが、同市を相手に国家賠償法にもとづく損害賠償を求めた裁判で、福島地裁(金澤秀樹裁判長)は16日、市の処分が違法だと認め、親子に各5万円ずつの賠償を命じる原告勝訴の判決を言い渡しました。

 Nさんは2014年春の同市の処分に対し、県知事と厚生労働大臣に不服審査請求。15年4月30日に裁判を起こしました。同年8月には厚労相が、市の収入認定処分は不当だとして処分取り消しの裁決を下しましたが、同市はその後も「違法ではない」などと繰り返していました。

 金澤裁判長は、保護費で賄えない就学費用が発生した場合、生活費不足になることが十分あり得るから、給付型奨学金を収入認定することには慎重な態度で臨むべきだ、と指摘。市には被保護者への適切な助言と調査義務があったが、被告の福祉事務所は奨学金が収入認定除外の対象となるかどうかの検討を行わず、原告から提出された自立更生計画書や添付資料の検討などもせず処分し、公務員の裁量権を逸脱したと述べました。

 同裁判長は、事後的に奨学金相当額を追加支給したので損害は発生していないとの市の主張を退け、経済的な不安、精神的苦痛など、原告親子の損害発生を認めました。

 勝訴したNさんは「同じ思いをする子が二度と出てほしくないという思いからたたかってきたので、市の違法性が認められたことは大きな意味を持つ」と話しています。また弁護団は、奨学金を収入認定の対象から除外することなどを求めた声明を発表しました