長時間の残業や休みなしの勤務を強いられる結果、労働者が突然死したり、そうした過労が原因で自殺することなどの過労死・過労自殺が社会問題になっている中で、安倍首相は、22日召集の通常国会を「働き方改革国会」と位置付け、関連法案の成立に全力を挙げる考えを示しています。
「働き方 云々」などと何か目新しい指針であるかのような名前がついていますが、それが目指しているところは「残業代をゼロにする方策」です。
「裁量労働制」というネーミングもまさしくそれで、何か労働者の意志が尊重されるかのように装われていますが、要は残業代を払わないで労働をさせる方式に他なりません。
大企業や金持ちは優遇する一方で労働者の方は絞り上げるというのが安倍政権の基本方針です。
日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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裁量労働制を拡大 安倍政権がもくろむ“過労死法案”の中身
日刊ゲンダイ 2018年1月18日
22日召集の通常国会を「働き方改革国会」と位置付け、関連法案の成立に全力を挙げる考えを示した安倍首相。だが、法案の中身といえば、昨秋の衆院解散で一度も審議されずに廃案となった「残業代ゼロ法案」や、年収1075万円以上の「高度専門職」の労働時間、割増賃金の規制を撤廃する「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の導入など、雇用破壊を促進させるものばかり。とりわけ、絶対に成立させてはならないのが、過労死を増やすと懸念されている「裁量労働制の拡大」だ。
■サラリーマンは蟹工船行き
実際の労働時間ではなく、いわゆる「みなし労働時間」を採用する裁量労働制。現行では編集者やデザイナーといった「専門業務」や「事業運営」に関する企画業務などに限られているが、安倍政権はこの対象業務を拡大するつもりだ。「事業運営」に加え、事業の分析や管理・評価を行う業務や、法人顧客に対する企画立案や調査に基づく提案営業などを新たに含めるという。
裁量労働制の見直しについて、安倍首相は〈自律的で多様な働き方を可能とするために行うもの〉(2017年2月の衆院予算委)、〈健康を確保しつつ意欲や能力を発揮しながら働くことができるよう、働く方のニーズに合った選択肢を用意することを目的とする〉(同11月の参院本会議)――と説明しているが、冗談ではない。
現行制度でも裁量労働とは名ばかりで、残業代を支払わない「定額の使い放題社員」を増やしている。昨年12月、大手不動産の「野村不動産」が裁量労働制を違法適用し、社員に残業代を支払っていなかったとして、労働基準監督署から是正勧告を受けたのが、その例だ。長時間労働させて残業代ナシ――という「ブラック企業」を増やすだけで、対象業務の拡大なんて許されるはずがない。「働き方改革」の関連法案が「過労死法案」といわれるワケだ。
労働問題に詳しい「ブラック企業被害対策弁護団」代表の佐々木亮弁護士(旬報法律事務所)はこう言う。
「そもそも現在の裁量労働制が長時間労働の温床になっており、(制度の)検証もないまま、さらに対象業務を拡大するのはあり得ないでしょう。(拡大されれば)定額で長時間労働させられる“名ばかり管理職”が増える恐れもあります。高プロは年収基準がありますが、裁量労働制の拡大には基準がなく、多くの労働者を直撃する危険な内容といえると思います」
法案が成立すれば、サラリーマンは今以上に重労働を課せられ、ひたすら搾取されるだけ。それこそ「蟹工船」になりかねない。働き方改革の「改革」が経営者と労働者のどちらの視点に立っているのかをよく考えるべきだし、何が何でも法案を通させてはならない。