名護市長選が28日に告示されます。
「米軍ヘリの不時着が相次いでいることについて、米海兵隊のネラー総司令官は25日、事故を未然に防ぐための予防的着陸だったとして『非常に素直に言って良かった』と述べた。~ 『誰も負傷しなかったし、機体も失わなかった。私は心配していない』とも語った。
ハリス米太平洋軍司令官も9日、ハワイで小野寺五典防衛相と会談した際、『一番近い安全な場所に(機体を)降ろす措置に満足している』と述べている。」
これは26日付沖縄タイムス「社説」の書き出しです。日本政府が弱腰で米軍にヘリ航行の見合わせを申し入れしても、歯牙にも掛けない米軍の態度がよく分かります。
今回は沖縄で南城市長選(21日投開票済)名護市長(28日告示・4日投開票)があるため日本政府も必死に米軍への「抗議のパフォーマンス」を行っていますが、事態は全く変わりません。
1月に入ってからも、6日・うるま市伊計島UH-1Y不時着、8日・読谷村儀間AH-1不時着、23日・渡名喜村渡名喜島AH-1Z緊急着陸と、3回も立て続けに不時着乃至類似事故を起こしています。たまりかねた小野寺五典防衛相は24日午前、同型機全機の緊急総点検と、その間の飛行停止をマルティネス在日米軍司令官に要求しました。政府が米軍に飛行停止を求めるのは異例だということです。
1月に入ってからも、6日・うるま市伊計島UH-1Y不時着、8日・読谷村儀間AH-1不時着、23日・渡名喜村渡名喜島AH-1Z緊急着陸と、3回も立て続けに不時着乃至類似事故を起こしています。たまりかねた小野寺五典防衛相は24日午前、同型機全機の緊急総点検と、その間の飛行停止をマルティネス在日米軍司令官に要求しました。政府が米軍に飛行停止を求めるのは異例だということです。
沖縄タイムスの社説は、上記に続いて、
「これらはすべて『軍の論理』で、~ 事故やトラブルが多発し住民に大きな不安を与えているにもかかわらず『軍の論理』で正当化するのは、占領者意識というしかない。~ 住民は、憲法第13条で保障された平穏な日常を求める権利(幸福追求権)を脅かされているのである。事態は極めて深刻なのに日米双方から伝わってくるのは県民感情を逆なでする『不適切発言』ばかりだ」 と述べています。
そんな中で21日に投開票された南城市長選では、自・公・維推薦で現職の古謝景春氏が、野党が推薦した新人の瑞慶覧長敏氏に敗れ、自民党の大物国会議員を投入して必勝を期していた政府に衝撃を与えました。これまで決して沖縄県人に寄り添うことをしなかった自民党が、付け焼刃的なパフォーマンスをしても支持されなかったということです。
LITERAがジャーナリスト横田一氏の沖縄市長選に関するレポートを載せました。
横田氏は、ワシントンポストが安倍首相のことを「忠実な従属的助手の役割を演じている」と酷評したことを紹介し、米軍ヘリ事故頻発は、安倍首相が米国に「NO」と言えない “下僕” 状態を続けているからだとし、野党が翁長知事ら “オール沖縄” と連携しながら、飛行再開にNOと言えない安倍政権を徹底追及し、日米地位協定改定の論議を挑んでいくことが必要だと述べています。そして日米地位協定改定論議が本格化すれば、”下僕“のような安倍首相の属国的実態が露わになるとしています。
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米軍ヘリ事故直後の沖縄・南城市長選で“オール沖縄”が勝利!
名護市長選や日米地位協定改定論議、さらに改憲に楔を!
横田一 LITERA 2018年1月27日
「ニッポン抑圧と腐敗の現場」29
沖縄で相次ぐ米軍ヘリ事故問題が安倍政権を直撃した。1月21日投開票の南城市長選で、社民、共産、社大、自由、民進が推薦する新人の(元民主党衆院議員)が、自民、公明、維新推薦で現職の古謝景春氏を抑えて初当選したからだ。
南城市長選は「翁長雄志県知事らオール沖縄VS安倍政権」の“代理戦争”初戦と位置付けられた選挙だ。そのため石破茂・元防衛大臣ら自民党大物議員が応援に駆けつけたが、結果は65票の僅差で古謝氏が敗退。“オール沖縄”が弾みをつけた形となった。翁長県政が始まって以降、オール沖縄支援候補は市長選で連敗を重ねてきたが、その流れが止まった瞬間だった。その理由を地元記者はこう分析している。
「南城市は保守系が強い地盤で米軍基地もないため、ヘリ事故の影響が及ぶ可能性は低いとみていたが、大物国会議員を投入しての自公推薦候補敗北は、米軍ヘリ事故と弱腰の安倍政権への反発が想定以上であったことを示すものです」
選挙結果について翁長知事が「勇気が湧いてくる」とコメントしたが、この勝利は2月に控える名護市長選にも大きな影響を与えるだろう。名護市長選は菅義偉官房長官と二階俊博幹事長が年末年始にテコ入れのため訪沖しているが、今回の南城での勝利は安倍政権の出鼻を挫く形となった。
米軍ヘリ事故頻発でも米国に「NO」と言えない安倍首相の“下僕”ぶり
翁長知事は1月19日、米国に「NO」と言えない安倍政権の対米従属ぶりを厳しく批判している。ヘリ事故の視察で沖縄入りした与野党国会議員11名(衆院安全保障委員会メンバー)に対し、「日本政府は国民を守ることにまったく当事者能力がない。事故が起き、要請に行くたびに日米両政府にたらい回しにされてきた。これが誇りある品格のある日米安保体制か」と強く訴えたのだ。
米軍ヘリの窓枠が12月に落下した「普天間第二小学校」(宜野湾市)の上空を視察前日の18日に飛んだことにも知事は、怒りを爆発させた。「沖縄防衛局がカメラでヘリを撮っているのに、米軍は否定している。米軍はよき隣人ではない」
素朴な疑問が湧いてくる。11月のトランプ大統領訪日を受けて安倍自民党は「日米首脳の関係はかつてないほど良好」と強調。特別国会で山本一太参院議員は日米首脳を「晋三・ドナルド関係」と呼んだ上で「総理は各国首脳と比較してもトランプ大統領と突出した別格の関係を築いていると思います。首脳会談5回、電話会談17回、ゴルフも2回」と称賛した。
しかし実際は、相次ぐヘリ事故で日本国民が危険にさらされているのに安倍政権は形だけの申入れをするだけで、すぐに米軍は飛行再開に踏み切ることが繰返されてきた。「米軍ヘリ全機種点検と安全確認までの運用(飛行)停止」という沖縄県の要求は無視され続けている。
日米首脳の共同記者会見で安倍首相は、トランプ大統領の日本を見下すアドリブ発言に反応できずに「忠実な従属的助手の役割を演じている(Japanese leader Shinzo Abe plays the role of Trump’s loyal sidekick)」(ワシントンポスト)と酷評されたが、米軍ヘリ事故頻発に対しても安倍首相は米国に「NO」と言えない“下僕”状態を続けているといえるのだ。
与党の事後現場視察や公共事業推進は名護市長選向けの“パフォーマンス”
「『米国ファースト・日本国民二の次』の対米追随の安倍政権(首相)VS県民第一の翁長知事」という構図が浮彫りになったが、野党は沖縄の訴えを重く受け止めて安倍政権を徹底追及する構えだ。
実は、19日の与野党合同視察は15日の野党合同視察が発端だったという。両方とも参加した立憲民主党の本多平直衆院議員は、与党の内情をこう暴露した。
「12月に米軍ヘリの落下物事故が宜野湾市の緑ケ丘保育園と普天間第二小学校で起きた後、安全保障委員会の閉会中審査を求めましたが、与党は拒否しました。1月に入ってからは立て続けにヘリの不時着事故がうるま市と読谷村で起きた後、閉会中審査を再度申入れたところ、これにも応じない。そこで『野党はまず調査団を出す』と言って15日に視察をしたのですが、すると与党はようやく『安保委の議員視察をする』と言い出した。『15日に野党だけでは行かないで欲しい』とも言われましたが」
野党の現地視察を与党が後追いした狙いは、「トランプ大統領の“下僕”のような安倍首相VS米国と対米追随の安倍政権に物が言える翁長知事の代理戦争」と見られている名護市長選への悪影響回避であることは容易に想像がつく。「米国に弱腰の自公推薦の渡具知武豊候補VS米国と安倍政権に物を言う『オール沖縄』支援の稲嶺進市長」という対決の構図では分が悪いので、現地視察と知事面談で“汗”をかいて米軍ヘリ事故問題や米海兵隊用の辺野古新基地建設が主要争点にならないようにしているのではないか。「名護市長選向けのパフォーマンスではないか」と勘繰りたくなる。
安倍政権の「米国ファースト・日本国民二の次」の姿勢は15日の野党合同視察でも露呈した。読谷村のヘリ不時着現場で希望の党の渡辺周元防衛副大臣(党の外交・安全保障調査会長)が「(防衛省の)政務三役は現地視察に来ていますか」と質問すると、防衛省の中嶋浩一沖縄防衛局長から「来ていません」との回答。これを視察後に県庁で野党議員団から聞いた翁長知事は「別の所に行っていたのではないか」とつぶやいた。
その場所が名護市を指すことはすぐに分かったが、防衛省政務三役が不時着現場を視察していなかったことも、安倍政権の「米国ファースト・日本国民二の次」の姿勢を物語るものだった。年末年始に菅官房長官と二階幹事長は名護市長選のテコ入れで現地入りした際、名護東道路完成前倒しなど公共事業予算増をアピールしながら自公推薦候補支援を呼びかける“土建選挙”を展開、血税を選挙対策費に流用するに等しい手法で新基地反対の稲嶺市長交代を目論んでいる。対米追随の安倍自民党は「県民の命よりも米海兵隊用の辺野古新基地建設優先」「日本国民の血税流用で米国益実現」と批判されても仕方がないだろう。
野党と“オール沖縄”の連携は、野党結集の新たな旗印になり得るか!
翁長知事は野党議員団に対して「(安倍首相の言う)戦後レジームからの脱却ではなく、完結だ」「日米地位協定が問題」とも指摘した。事故原因究明なき米軍ヘリ飛行再開は、日本が70年以上経った今も占領国状態である現実を突きつけるものだが、この翁長知事の問題提起を野党は受け止めて、自衛隊明記の憲法改正で事足りようとする安倍首相に論戦を挑もうとしている。
知事面談後の囲み取材で「日米地位協定改訂を通常国会で取り上げるのか」と聞くと、立憲民主党の本多衆院議員から前向きの答えが返ってきた。
「各党代表クラスもそういう発言をしていますので、各党それぞれの立場で地位協定には問題意識を持っている」
そこで、「戦後レジームの完結」という知事発言を紹介した上で「憲法改正の前に日米地位協定を見直すのが先決ではないか」と質問をすると、これに対しては希望の党の渡辺・元防衛副大臣がこう答えた。
「『(今ほど)日米関係が緊密だった時代はない』と得意げに(自民党は)言っているが、だったらいつまでも隷属的な主従関係を続けるのか。(ヘリ事故の詳細について)日本側から聞かないと米軍は答えない体制を変えないといけない。米軍に申入れをするだけなく、定期的に途中経過や原因の説明を受ける仕組みを作らないといけない。形だけの申入れで終わって状況は改善しない。親密な日米首脳関係と言うのなら『対等な関係にしましょう』と言うべき。『戦後レジームの脱却』というのなら、日米地位協定改定で仕組みを変えないとおかしい」
“アベ友ファースト5大疑惑”(森友・加計・準強姦・スパコン・リニア)に加えて、通常国会で与野党激突の政治課題がもう一つ増えた。沖縄ヘリ事故問題を重く受け止めた野党が翁長知事ら“オール沖縄”と連携しながら、事故原因究明なき飛行再開にNOと言えない安倍政権を徹底追及、日米地位協定改定の論議も挑んでいく。その結果、「占領国(下僕)状態脱却の野党VS自衛隊明記の9条改憲で戦後レジーム完結の対米追随の安倍自民党」「安倍政権(首相)VSオール沖縄・野党連合」という対決の構図が可視化される。名護市長選に影響を与えるだけでなく、安倍首相主導の憲法9条改正(改悪)に対抗する代替案として、「日米地位協定改定なき改憲論議はありえない」が野党結集の新たな旗印となる可能性も出てきた。
非自民勢力の結集で日米地位協定と憲法改悪にNOを!
米軍ヘリ事故問題での「オール沖縄と野党の連携(非自民勢力結集)」は、年内の憲法改正発議を目指す安倍首相に突き刺さった“棘”ではないか。北朝鮮や中国や韓国への強硬姿勢で高支持率を維持してきた安倍政権だが、沖縄問題をきっかけに日米地位協定改定論議が本格化すれば、「トランプの忠実な従属的助手」と酷評された”下僕“のような安倍首相の属国的実態が露わになる恐れがあるからだ。
なお総裁選を目指す石破氏も憲法改正と日米安保と日米地位協定改定はセットで議論すべきという立場で、石破氏が野党と超党派的に連携して、自衛隊明記で事足りる安倍首相に異論を唱えることも十分に考えられる。通常国会での論戦が注目される。