2018年1月15日月曜日

ICAN事務局長が 米の核兵器使用を懸念

 来日しているICANのベアトリス・フィン事務局長は13日、長崎市での記者会見で、「核兵器が使われる可能性がある非常に危険な状態だ」と述べまし

 時事通信の記事はとても短いので詳細は不明です。
 米軍による北朝鮮攻撃が平昌オリンピック後にあると噂されているので、それについて述べた可能性もありますが、トランプ米政権が2月にも発表する核戦略の中期指針「核体制の見直し」(NPR)について述べたのではないかと思われます。

 そこでは、中国やロシア、北朝鮮に対する圧倒的な優位性を確保するため、局地攻撃を想定した低爆発力の小型核の開発を検討することと、核兵器の役割を拡大し、核攻撃の抑止・反撃に限定しない方針を盛り込むということです。
 要するにより小型の核兵器を開発して、それを核攻撃の抑止・反撃以外にも戦術兵器として自由に使えるようにするというものです。
 これは昨年国連で採択された、核兵器の開発、実験、・・、使用を禁止した「核兵器禁止条約」に反するのは勿論ですが、何よりも「核兵器は使用しない」とする世界の「理性」に公然と挑戦するものです。これほど身勝手で非人道的なものはありません。
 
 米国は1960年代に戦闘機搭載用の戦術核兵器を開発し、既に最小03kt-TNTの核兵器(広島型原爆15kt-TNTの1/50に相当)を保有しているので、前記のNPRがどの程度の小型化を目指すというのか不明ですが、既に開発済みと見ることも出来ます。それをここで打ち出すというのは、核兵器の使用を世界に向けて改めて宣言するに等しいものです。
 国連がこうした米国の傍若無人の乱暴狼藉を野放しにしている一方で、北朝鮮に対しては様々に干渉しているのは如何にも理不尽です。

 時事通信と東京新聞のNPRに関する記事に加え、「被爆者の尽力で核禁止条約生まれた ICANフィンさんが長崎で感謝の講演」の記事を紹介します。
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ICAN「非常に危険」=米核戦略を懸念
時事通信 2018年1月13日
 トランプ米政権が核攻撃に踏み切る基準を緩和した中長期核戦略「核態勢の見直し」(NPR)の草案について、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長は13日、訪問先の長崎市での記者会見で、「核兵器が使われる可能性がある非常に危険な状態だ」と述べた。


米、小型核開発を検討 新指針 核兵器の役割拡大へ
東京新聞 2018年1月8日
 【ワシントン=共同】トランプ米政権が二月にも発表する核戦略の中期指針「核体制の見直し」(NPR)の概要が七日判明した。中国やロシア、北朝鮮に対する圧倒的な優位性を確保するため、局地攻撃を想定した低爆発力の小型核の開発を検討、核兵器の役割を拡大し、核攻撃の抑止・反撃に限定しない方針を盛り込む。柔軟な核運用を前面に出す内容で「核なき世界」を掲げたオバマ前政権からの戦略転換となりそうだ。 
 米政府の説明を受けた複数の議会関係者や外交筋が明らかにした。

 新指針は大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機の「核の三本柱」を堅持。一方で北朝鮮の核・ミサイル施設への攻撃などを想定し、弾道ミサイルに搭載する低爆発力の核兵器の開発・配備を検討する。爆発威力を抑えた小型核は、非戦闘員の巻き添えを極力防ぐ狙いがある。

 核弾頭と通常弾頭の双方を搭載できるため核攻撃と誤認されるリスクがあるとして、反対論が根強い核巡航ミサイルの新規開発も推進する。現行計画の空中発射型に加え、海洋発射型の開発方針が盛り込まれる見込み。将来の配備を巡り、日本を含む関係国との協議も始めたもようだ。

 核兵器の役割低減を目指したオバマ政権は二〇一〇年発表の前回NPRで、核使用を米国と同盟国の「死活的な利益を守るための極限の状況」に限定した。しかしトランプ政権は核攻撃の抑止や反撃だけでなく、基幹インフラへのサイバー攻撃などに対しても核使用を排除しない方向で、核使用のハードルが下がる恐れがある。米シンクタンク、軍備管理協会のキングストン・リーフ氏は「米国が核使用のシナリオを拡大すれば、世界情勢の不安定化を招く」と懸念を示している。


被爆者尽力で核禁止条約生まれた ICANフィンさん、長崎で感謝の講演
東京新聞 2018年1月14日
 昨年のノーベル平和賞を受賞した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))のベアトリス・フィン事務局長(35)は十三日、長崎市で講演し、核の非人道性を訴え続けた被爆者の証言活動を高く評価した。「被爆者なくして核兵器禁止条約は生まれなかった」と振り返り、尽力に感謝した。

 核禁止条約をテーマにした長崎大主催のシンポジウムでの基調講演。フィンさんは、日本政府の安全保障政策について「(米国の)核の傘に進んで入ることは受け入れられない。長崎、広島の価値観と大きな隔たりがある」と苦言を呈し、日本の核禁止条約参加を求めた。

 「(長崎への原爆投下以降に)核兵器が使われなかったのは、幸運だったからにすぎない」とも語り、北朝鮮の核・ミサイル開発を巡る米朝関係の緊迫化を踏まえ「使用の可能性は高くなっている」と警鐘を鳴らした。

 講演後のパネル討論で外務省の今西靖治(のぶはる)軍備管理軍縮課長は、北朝鮮の動向を念頭に「厳しい安全保障環境にある。条約への参加は、米国による核抑止力の正当性を損なう」と主張した。

<ベアトリス・フィンさん> 1982年11月7日、スウェーデン・イエーテボリ生まれ。2010年、スイス・ジュネーブに国際本部がある非政府組織(NGO)「婦人国際平和自由連盟」に入り、軍縮問題を担当。14年に移籍し現職。英国の大学院で国際法の修士号を取得している。