実質賃金が下がり続けるなかで景気回復の実感は全くありませんが、内閣府は「景気が緩やかに回復に向かっている」としていて、このままいけば2012年12月から始まった景気回復局面が来月、戦後最長の「いざなみ景気」(02~08年、73カ月間)に並ぶのだそうです。
しかしこの「いざなぎ景気」を超え、「いざなみ景気」に並ぶなどという言い方が根本的に間違っているということは、経済学者の植草一秀氏がかねてから強調しているところです。
彼によれば、日本の名目GDPは1997年の534兆円をピークにして、その後、2014年までの17年間、これを上回ったことがなく、2016年にようやく537兆円に達して1997年の水準に肩を並べたのであり、ならしてみれば18年間ゼロ成長だったといえるものでした。
植草氏は、「2014年1月から2014年末まで、日本経済は“消費税増税不況”に突入している」とも指摘しています。
そもそも「いざなぎ景気」では、1966年から70年の実質経済成長率は73%と5年間に7割も所得水準が上がりましたが、「いざなみ景気」などと政府が称している2002年から2007年の実質経済成長率は僅かに9%で、所得水準は6年間で僅か1割も増えませんでした。
東京新聞が、NHKが好んで用いたがる「景気回復・景気拡大」基調はすでに終わっているとする記事を出しました。
たとえ「いざなみ景気」に並ぶといわれてみても、国民の間に何の感興も起きないのは明らかです。
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景気拡大はすでに終わっている? 指標の変調を識者が指摘
東京新聞 2018年11月11日
「景気は緩やかな回復基調が続いている」――。何度となく耳にしているこのフレーズ。実質賃金が下がり続け、庶民感覚では景気回復の実感が全くないのだが、それでもこのままいけば2012年12月から始まった景気回復局面が来月、戦後最長の「いざなみ景気」(02~08年、73カ月間)に並ぶのだという。
ところが、「足元の景気指標ではいくつも変調を見せるものが表れています」というのは、経済評論家の斎藤満氏。例えば、7~9月期の鉱工業生産が前期比1.6%の減少となった。政府は台風や北海道の大地震など自然災害の影響であり、一時的な落ち込みと説明しているが、そうではない、とこう続ける。
「内閣府は7日に発表した9月の『景気動向指数』から見た『基調判断』を前月までの『改善』から『足踏み』に修正しました。景気指標が一時的な要因で変動することはよくあります。しかし、3カ月や7カ月という期間で見ると『足踏み』どころか『悪化』を示唆する指標もあります」
■内閣府の判断は「足踏み」だが…
景気動向指数の基調判断が「悪化」とは、景気後退を意味する。「悪化」となるのは、景気と同じタイミングで変化する「一致指数」が当月マイナスであることに加え、3カ月移動平均が3カ月以上マイナスになる、というのが条件。実は9月時点ですでにこの定義を満たしているというのだ。
だが、「足踏み」から「悪化」へ移行する前に、「下方への局面変化」というステップを踏まなければならず、その条件は一部満たしていないため、現状は「足踏み」というのが内閣府の判断らしい。
いずれにしても、景気後退入りの一歩手前であり、「緩やかな回復が続いている」なんておかしいのである。
「天候や自然災害を一時的な理由とするには指標となる数字の出方もおかしい。災害によって交通トラブルが起きたり、生産できなかったりすれば、在庫を使うので在庫は減るはずです。しかし電子部品や建設機械などで在庫が増えている。一時的な天候ではなく、中国向け需要の落ち込みが理由だからではないのか。後になって、『実は、今年の2、3月くらいから景気後退局面に入っていた』となる可能性もあると思います」(斎藤満氏)
景気判断もアベノミクスのマヤカシか?