2018年11月16日金曜日

16- 外資の餌食 「種の交換」が共謀罪に 政府の省令は農家・自治体イジメ

 農家や自治体がその種を育成する権利(育成者権)は、「種苗法」によって保護されており、違反者には10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併せて科す」という厳罰が定められていますが、実際には特別な措置が認められていて、農家が自ら生産した作物から種を取る「自家採取」は原則自由とされています
 
 ところが農水省は、自家採取を認めない例外作物を省令でどんどん増やし昨年からでも67種類増え、現在、タマネギやジャガイモ、ダイコンなど356種類にまで上ります
「省令で自家採取禁止の品種を増やして、新品種の開発を促そうと考えていというのがその言い分なのですが、グローバル種子企業が営業をし易くするためとなると話は全く違ってきます。
 弱者を救済する規制改革なら意味がありますが、グローバル企業がやり易いようにという規制改革は有害そのものです。
 元農水大臣で弁護士の山田正彦氏は「もしかすると、農水省は来年の国会で『自家採取の原則禁止』を定めた法案を出してくるのではないか」と警告しています。
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外資の餌食 日本の台所が危ない  
「種の交換」で共謀罪?  政府の省令は農家・自治体イジメ
日刊ゲンダイ 2018年11月15日
 農家が直面するのは、多国籍の種子企業による市場支配や固定種の農産物が作れなくなるという心配だけではない。思いもよらない刑罰に処せられる恐れがある。
 新しい種を登録した農家や自治体がその種を育成する権利(育成者権)は、「種苗法」によって保護されている。一方、違反者には、次のような罰則が科せられる。
<(侵害の罪)第67条 育成者権又は専用利用権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する>
 要するに、特許権や著作権の侵害と考え方は同じ。新しく品種登録された種を勝手に増殖したり、売ったりすると、権利侵害とみなされ罰則を受けるということだ。とはいえ、種苗法では特別な措置が認められていて、農家が自ら生産した作物から種を取る「自家採取」は原則自由とされている
 
 ところが問題なのは、農水省が自家採取を認めない例外作物を省令で増やしていることだ。その数は、昨年から67種類増え、現在、タマネギやジャガイモ、ダイコンなど356種類にまで上る。
「日本は海外に比べ、新たな品種登録の出願件数が減っている。省令で自家採取禁止の品種を増やして、新品種の開発を促そうと考えています」(農水省知的財産課)
 
 日本各地で土地の風土や気候に適した在来種の種の交換会が行われているが、こうした交換会で、政府が自家採取禁止と定めたものを交換すると、種苗法違反の罰を受ける可能性があるのだ。元農水大臣で弁護士の山田正彦氏がこう言う。
「育成者権の侵害は重い刑罰が科せられている上に、共謀罪にも問われます。種の交換会に参加した人はもちろん、会の準備に加わった人も罰則の対象です。それなのに、政府は省令で、自家採取できない例外品種を増やしている。もしかすると、農水省は来年の国会で『自家採取の原則禁止』を定めた法案を出してくるのではないか。政府が自家採取できない種を勝手に決めるのは、在来種を守ってきた農家に対する権利侵害ですよ」
 
 もはや政府による、農家・自治体“イジメ”である。こうしたトップダウンの政策は、官邸や規制改革会議という密室で決められている。   =つづく 
(取材=生田修平、高月太樹/日刊ゲンダイ)