2018年11月16日金曜日

自民改憲案 今国会への提示は困難に

 改憲派に属する産経新聞が、自民党の改憲案を今国会に提示できる可能性はほぼなくなったとする記事を出しました。
 衆院憲法審査会の運営を担う「幹事」内定していた自民党の下村博文氏が9日のCS番組で、「(衆院憲法審メンバーが)率直な議論さえしないのは国会議員の職場放棄ではないか」と述べたことに対して野党が一斉に反発したため、下村氏は内定していた「幹事」を辞退しましたが、それではとても収まらずに,現在衆参両院の憲法審査会が開催できない状況にあります。
 
 下村氏は首相の信任が厚いことから、自民の憲法改正推進本部長の要職に就きましたが、この発言は首相の意向を忖度して審議を急ごうとした余りの勇み足でした。ただ党内には、下村氏は「ほとんど国会対策をしたことがない」ので、与野党が激突する憲法審で議論を主導するのは無理という見方があり、結果的にミスキャストであったことが証明されました。
 
 木曜日が定例の開催日である衆院憲法審は、与党筆頭幹事の新藤義孝元総務相野党筆頭幹事の立憲・山花郁夫氏間で行われた14電話協議が整わず、15日(木)も開かれませんでした。
 衆院憲法審では、幹事の選任に引き続いて、先の通常国会からの継続審議となっている国民投票法改正案を成立させるのが第一の段取りで、産経新聞によれば、憲法審に提示されてから改正案成立するまで3週間はかかるとされるので、仮に22日に憲法審が開かれたとしても、会期を延長しない限り国民投票法改正案成立は危ういとされています。
 自民党の改憲案が提示されるのは、その次自由討議の場においてになるので、今国会中にそこに行き着く見通しはないということです。
 
 かくして、自民党内で一時ささやかれた「来夏の参院選前の国会発議」は非現実的となっています。
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自民改憲案、今国会の提示は困難 「職場放棄」に野党反発
産経新聞 2018年11月14日
 自民党が目指す憲法9条への自衛隊明記など4項目の党改憲案の臨時国会提示が困難となっている。10月24日の国会召集から3週間が経過した今も、衆参両院の憲法審査会は野党の抵抗により開催されておらず、初回は早くて今月22日。自民党の下村博文憲法改正推進本部長が野党を「職場放棄」と批判したことも反発を招き、改憲議論が進展する気配はみられない。
 衆院憲法審の与党筆頭幹事の新藤義孝元総務相(自民党)は14日、野党筆頭幹事の山花郁夫氏(立憲民主党)と電話で協議を重ねたが、開催日程について合意は得られなかった。
 
 改憲議論の先行きは不透明感を増している。「率直な議論さえしないのは国会議員の職場放棄ではないか」。下村氏が9日のCS番組でこう発言し、野党側の反発を招いたからだ。
 そもそも野党第一党の立憲民主党は憲法審開催に後ろ向きで、下村氏の発言が「野党に審議拒否の口実を与えた」(自民党幹部)。下村氏は野党との運営協議が行き詰まると判断し、内定していた衆院憲法審の運営を担う「幹事」を辞退した。だが、立憲民主党の辻元清美国対委員長は14日、記者団の取材に、幹事辞退ではけじめにならないとの認識を示し、当面開催に応じない姿勢を見せた。
 
 自民党は、安倍晋三首相(総裁)が今国会での党改憲案提示の意向を示したことから、憲法審査会の自由討議の場を設けて各党に説明する構えだった。
 しかし初回の憲法審では事務手続き(幹事の選任)を行う必要がある。続いて、先の通常国会からの継続審議となっている国民投票法改正案を成立させる段取りだ。同改正案の審議は少なくとも衆参で計3日間必要とされる。
 憲法審の開催定例日は衆参ともに週1日しかない。順調に進んでも、初回の憲法審から改正案成立まで3週間はかかるとされる。会期を延長しない限り、成立は危うい。その次に控える自由討議に行き着く見通しは全く立たない。
 
 先に自由討議を行う方法もあるが、新藤氏は野党の反対を押し切って運営を進める考えを持っていない。憲法改正の是非を決める国民投票を踏まえ、世論の分断を避けるためだ。自民党内で一時ささやかれた「来夏の参院選前の国会発議」は非現実的となっている。(田中一世)
 
 
自民・下村氏、憲法審幹事を辞退=「職場放棄」発言に野党反発
時事通信 2018年11月13日
 自民党の下村博文憲法改正推進本部長は、就任予定だった衆院憲法審査会幹事を辞退する意向を固めた。党関係者に13日に伝えた。下村氏から改憲論議への慎重姿勢を「職場放棄」と批判された野党が反発し、与党内でも懸念が出ていた。
 
 主要野党の憲法審幹事らは同日、国会内に集まり、下村氏から謝罪がない限り、自民党の憲法審開催要求には応じないとの方針で一致した。
 国民民主党の原口一博国対委員長は記者会見で「与野党の枠を超えて議論する憲法審を壊し、審議拒否してきたのは自民党だ。他者に責任転嫁し、罵倒するのは、本気で憲法を議論する気持ちがないと受け止めた」と下村氏に猛反発した。
 一方、公明党の山口那津男代表も会見で「よろしくない発言だ。かえって議論が進まない状況をつくってしまうのではないか」と指摘した。
 下村氏は9日、「(憲法審で)議論しようということさえしなかったら、それは国会議員として職場放棄ではないか」と述べていた。