2018年11月17日土曜日

17- 東京新聞 <税を追う> 歯止めなき防衛費 13

 2基で6000億円超にもなる「イージス・アショア」の導入は、日本の防衛のためではなく米国のためです。台数を2基とし設置場所を秋田県と山口県に決めた根拠は、北朝鮮から秋田、山口に向かう延長線上にそれぞれハワイとグアムが位置するからです。
 北朝鮮からハワイやグアムの米軍基地に向かうミサイルの軌道や速度等の情報が、日本のイージス・アショア」によっていち早く寄せられれば、米軍基地を防衛するうえで大いに役に立ちます。
 その逆に2基の「イージスアショア」には日本を防衛する能力はありません。
 
 要するに、日本は米国に対する「ミツグ君」に過ぎないということです。
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<税を追う>歯止めなき防衛費(3)進む日米一体化 軍事戦略の一翼担う
東京新聞 2018年11月16日
 四回目の核実験、続く長距離弾道ミサイルの発射。二〇一六年二月、北朝鮮の挑発行為に半島情勢は緊迫の度合いを増していた。
 その頃、海の向こうの米連邦議会では、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の日本導入が話題に上っていた。「アジア太平洋に配備されているわれわれのイージス艦の任務を軽減するのではないか…」
 議員から日本配備による米国のメリットを問われたハリー・ハリス米太平洋軍司令官(当時)は、質問を途中で遮り断言した。「もちろんだ」。まるで米国のミサイル戦略の一角を日本が担うと言わんばかりだった。
 昨年末、日本は地上イージスの導入を決めた。トランプ米大統領が日米首脳会談で、安倍晋三首相に大量の防衛装備品の購入を迫った翌月のことだ。
 
 ハリス氏は今年二月の米下院軍事委員会でも日本の地上イージス導入の効果を聞かれ、「私や海軍、太平洋艦隊の負荷の一部を軽減することになるだろう」と明言した。日本国内では今も、「トランプ氏に買わされた」との声がくすぶる。
 地上イージスを運用する陸上自衛隊でトップの陸幕長まで務めた冨澤暉(ひかる)氏は、日本で先にミサイル弾道を探知すれば米国は迎撃しやすいと分析。日米一体の運用を見据えた配備とみる。「日本にとってミサイル防衛はあったほうがいいが、米国は日本を守るためだけに売るわけではない
 政府が配備候補地に挙げるのは、陸自の新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市、阿武町)。北朝鮮から秋田、山口に向かう延長線上には、それぞれ米軍基地のあるハワイとグアムが位置する
 
 もし、北朝鮮がグアムを狙ってミサイルを発射したらどうするのか。防衛省の答えは「地上イージスで対応することも理論上は考えられる」。日本を守るための兵器が米国を守るために使われる可能性を認めた。
「地上イージスだけでなく、どんどん日米の軍事一体化が加速している」。民主党政権で防衛相を務めた北沢俊美氏は、第二次安倍政権下での日米同盟の変貌ぶりに目を見張る。
 転機は一五年九月、他国を武力で守る集団的自衛権の行使に道を開いた安全保障関連法の成立だ。自衛隊の戦闘機や護衛艦が、米軍機や米艦を警備するケースが増えている。日米安保政策に長年かかわってきた米国務省の元高官でさえ、「五年前にはあり得なかった光景だ」と言う。
 
 官邸で安保政策を担当する薗浦健太郎首相補佐官は「今や日米同盟は、かつてないほど強固。揺るぎない絆により、同盟の抑止力・対処力は大きく向上し、日本の安全はより確固たるものになった」と主張する。
 今年九月、海上自衛隊は中国が進出を強める南シナ海で潜水艦の訓練を実施したと発表した。「極秘であるはずの潜水艦の行動を公表することは、本来ありえない」。北沢氏は異例の公表に、米国にすり寄る日本の姿を重ねて続けた。「集団的自衛権が容認された証しとして世界にアピールする。おもねってるんだ、米国に」