2018年11月15日木曜日

15- 東京新聞 <税を追う> 歯止めなき防衛費 12

 今回は、無人偵察機グローバルホークの価格が、2014年11月時点で3機で510億円だったが、2017年4月には新たな部品の開発に追加費用が発生したとして629億円と23%も高騰したことに関するものです。
 これは価格が15%上昇したら事業の見直しを検討、25%の場合は事業中止を検討するという防衛省の内規に該当するので、省内では導入中止に傾いたのですが、結局外務省やNSSから異論が出てそれがされました。
        ※ 国家安全保障局 因みに GHは無人偵察機グローバルホーク
 外務省や内閣にとっては、国益よりも性能よりも米国への迎合が何よりも重要ということのようです。
 
 ところでそんなに高価であるにも関わらず、得られた偵察データーは全て米国に送られるため、それを日本が見るためには有償で米国から情報をもらうしかないのだそうですまことに常識では考えられない「ふんだくりのシステム」です。
 
 そもそも、米国政府が同盟国に自国の兵器を売却する制度「FMS」Foreign military sales)を日本は「有償援助調達」などと訳してきましたが、原文からも明らかなように、実態は兵器の売りつけ制度そのものであり「援助」に当たるような要素は何もありません
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<税を追う>歯止めなき防衛費
(2)コストより日米同盟 覆った偵察機導入中止
東京新聞 2018年11月14日
「GHの取得を中止する方向で、政務、関係省庁(NSS、官邸)と調整する」
 防衛省整備計画局が昨年六月に作成した内部文書。GHとは当時、米国から輸入を検討していた無人偵察機グローバルホークを、NSSとは国家安全保障局を指す。文書にはGH導入の経緯と輸入中止を検討する理由が記されている。その上で、防衛大臣ら政務三役とNSS、首相官邸と調整するとなっていた。
 
 米政府の提案を受け、防衛省がGHの導入を決めたのは二〇一四年十一月。価格は三機で五百十億円だったが、米側は昨年四月、価格上昇を防衛省に連絡してきた。レーダー部品が製造中止となり、新たな部品の開発に追加費用が発生したとして、計六百二十九億円と23%も高騰していた。
 防衛省には装備品の価格が上昇した際の管理規則があり、価格が15%上昇したら事業の見直しを検討、25%の場合は事業中止を検討することになっている。
 整備計画局では、GHは今後も部品枯渇による価格上昇リスクがあると判断した上で代替策を検討。「近年の画像収集衛星の進展をふまえると、より安価な手段で相当程度が代替可能」と結論付けた。「日米同盟に与える影響」も検討の結果、「対処が不可能なものではない」と判断。導入中止の方向で、官邸などと調整するとあった。
 
 さらに導入中止に向けた段取りとして「自民党に事業中止の根回しを行った後、対外的に発表する」と記されていた。GHの導入中止へ防衛省の自信がうかがえる内容。ところが、わずか一カ月で覆った。
 昨年七月、整備計画局と防衛装備庁が作成した別の内部文書。「GHの価格の上昇リスクは引き続き存在する」としながらも、「能力はわが国を取り巻く安全保障環境に必要不可欠」として「事業を進めることとしたい」とある。正反対の結論を導いていた。
 
 文書は共産党の小池晃書記局長が入手した。整備計画局の幹部は本紙の取材に「外務省やNSSから『安全保障環境や日米同盟をふまえ、さらに検討を深めてほしい』と打診され、省内でもう一度議論した結果、購入継続を決めた」と回答した。導入中止の方針に外務省やNSSから異論が出て、覆ったことを認めた。
 
 ある欧米系軍事企業の幹部は「GHは米空軍でもコストが問題視されたが、政府はコストより日米安保を踏まえ、米国との関係を重視したのでは」と話す。
 実際、米空軍はGHの経費高騰などで、調達計画数を六十三機から四十五機に縮小している。ドイツでは一二年にGHの初号機一機を米から導入したが、コスト増加などを理由に追加購入を中止した。
 自衛隊の元幹部は「装備品の導入は現場で必要性を詰めることが重要。もともと現場はGHをいらないと言っていたのに、トップダウンで決めてしまうのがNSSの弊害だ」と話す。
 GH三機の年間の維持整備費は計百二十億円余り。かつて一時間飛ばすのに三百万円かかるという米側の試算もあった。日米同盟の名の下、兵器ローンのツケが国民に重くのしかかる。
 
 
<税を追う>取材班から 「売買」を「援助」変な訳
東京新聞 2018年11月14日
 米国政府が同盟国に自国の兵器を売却する制度「FMS」Foreign military sales の頭文字で、日本では制度が始まった一九五〇年代から「対外有償軍事援助」とか「有償援助調達」と訳されてきた。セールスが援助とは違和感がある。
 
 七七年に国会で当時の社会党議員が「だいたい援助という言葉はどこから訳したのか。有償軍事販売だ」と批判している。政府側は「日米防衛援助協定に基づいて日本に付与される、一応援助の形態を取っている」と答弁。その上で「ご指摘は、気持ちとしてはごもっともだと私どもも思っている」とも。
 二〇一六年にも旧民主党議員が「この訳は誤解を与えるのでは」と質問。当時の中谷元防衛相は「米国政府が認める武器輸出適格国のみが、軍事機密性の高い装備品を調達できるという意味で、一般的な売買とは異なる」と反論した。
 当の米国が援助ではなく売買や取引と言っているのだから、なぜそう訳さないのだろう。近年、FMSによる兵器ローンが急増し、防衛費を圧迫する。それでも「これはアメリカからの援助です」と言い続けるのだろうか。(原昌志)