2018年11月14日水曜日

外国人実習生を“失踪”に走らせる地獄の労働環境

 8日に始まった外国人技能実習生への野党合同ヒアリング12日も行われ、実習生たち改めて惨状を訴えました。
 大坂恭子弁護士は「いわゆる失踪する実習生は、『警察に捕まったら助けてくれるのではないか』と考える。それくらい耐えられない環境なのです」と語りました。
 指宿昭一弁護士「まずは、技能実習制度の廃止を決め、その上で、同様のことが起こらないよう徹底審議して欲しい」と述べました。
 また、実習生を支援するNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は、ブローカーの介在などを指摘し「奴隷労働と同じ構造だ。実習制度にどう区切りをつけるのか、その議論を抜きにした受け入れ拡大はおかしい」と強調しました。
 
 そういう実態を放置したままで、政府は労働力不足を理由に今後5年間で最大34万人の外国人労働者受け入れようとしています。
 それではこの地獄を拡大させるだけのことで、そうなれば、日本人がそれこそ明治時代に開国して以来営々と築いてきた信用を一挙に崩し、世界から軽蔑されることになります。
 3つの記事を紹介します。
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外国人実習生が涙の訴え “失踪”に走らせる地獄の労働環境
日刊ゲンダイ 2018年11月13日
 安倍政権は今国会で入管法を改め、外国人労働者の拡大に前のめりだ。現行の外国人技能実習制度は、奴隷のような過酷労働が常態化。それを放置しての拡大は許されない。12日の野党合同ヒアリングで実習生たちが惨状を改めて訴えた。
 岐阜県の縫製工場で働いたカンボジア人女性(33)は残業は時給300円。午前2時まで働き、休みは月1日。病院にも行かせてもらえ」ず、「逃亡防止」の名目で、賃金の一部は強制的に貯金に回されていたということです
 
 製縫業で働いていた中国人女性は、来日翌日の「講習期間」から働かされた。
「来日して1カ月で時間給から作業の出来高払いになった。休日は全然なかった
 出来高払いは長時間労働をごまかすための常套手段だ。別の製縫業のカンボジア人女性は涙ながらにこう言った。
「病気になっても薬をもらえるだけで病院へは行かせてくれない。毎月、給料から4万円を強制的に貯金させられていた」 雇用主の強制貯金は、実習生が逃げないようにするためだ。それでも年間7000人が失踪している。愛知で実習生問題に取り組み、同席した大坂恭子弁護士は「いわゆる失踪する実習生は、『警察に捕まったら助けてくれるのではないか』と考える。それくらい耐えられない環境なのです」と語った。もはや失踪というより避難である。
 
 しかし、雇う側も血の通った人間だ。よくもそこまで過酷な労働を強いれるものだ。「外国人技能実習生問題弁護士連絡会」共同代表の指宿昭一弁護士は、「雇う側」について問われ、こう言った。
「実習生は権利を主張できない。(雇用主が)何をやっても言わない、言えないんです。だから雇用主はやり過ぎちゃう。もともと悪い人たちが、実習生を受け入れて違法行為をしているのではない。普通の中小企業のオヤジさんたちが、技能実習制度を使うことによって、悪い人になっていくのです」
 
 国会でも実習生の実態を把握し、徹底審議が必要だ。ところが、この日も法務省はデータや資料を出し渋った。
 山下貴司法相が5日に「近日中に示す」と答弁した「外国人材の受け入れ見込数」について、丸山秀治入管課長は「検討中」とトボけ、失踪した実習生2892人の聴取結果(17年度分)も「プライバシーに関わるので精査中」とにべもない。法案の可否を検討するための材料がないまま、審議だけが始まったのだ。
まずは、技能実習制度の廃止を決め、その上で、同様のことが起こらないよう徹底審議して欲しい」(指宿昭一弁護士)
 
 スピード審議で強行すれば、間違いなく日本は世界から軽蔑される。
 
 
入管法改正案、実習制度の不備置き去り
低賃金、相次ぐ失踪者 劣悪環境改善見えず
西日本新聞 2018年11月13日
 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案を巡り、現行の外国人技能実習制度の課題が置き去りになっていることへの異論が噴出している。実習生には低賃金で劣悪な労働環境を強いられるケースが少なくなく、失踪者も相次ぐ。新たな在留資格でも懸念されるこうした事態に歯止めをかけられるか、13日から始まる法案の国会審議でも焦点になりそうだ。
 
 「残業は時給300円。午前2時まで働き、休みは月1日。病院にも行かせてもらえなかった」。12日、野党6党派が開いた実習生へのヒアリングで、岐阜県の縫製工場にいたカンボジア人女性(33)は涙を流して訴えた。「逃亡防止」の名目で、賃金の一部は強制的に貯金に回されていたという。
 パワハラやいじめでうつ病になったり、何も知らされずに除染作業に駆り出されたり…。実習生を支援するNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事はヒアリングで、ブローカーの介在などを指摘し「奴隷労働と同じ構造だ。実習制度にどう区切りをつけるのか、その議論を抜きにした受け入れ拡大はおかしい」と強調した。
 
 外国人技能実習制度は1993年に創設された。今や国内で働く外国人の約2割に当たる28万人が実習生だ。日本で技術を習得し、母国に還元する目的だが、現実には「安価な労働力」として拡大し、労働実態が問題視されてきた。
 厚生労働省によると、2017年に残業代未払いなどで是正勧告した事業所は4226カ所に上った。失踪者は11年の1534人から17年は7089人にまで増加。今年は半年間で4279人が失踪し、過去最多のペースだ
 
 7日の参院予算委員会では、野党に制度の検証を求められた山下貴司法相が「技能実習の反省に立って新制度を作っている」と強調した。だが、政府は昨年11月に受け入れ先の監督強化などを盛り込んだ新法を施行したものの、その効果は検証していない。
 単純労働の担い手確保と途上国への技術移転-。「現実」と「建前」の乖離(かいり)が指摘されてきた技能実習制度だが、新制度では建前も揺らぐ。実習生として3年間在留すれば、母国にいったん帰国しなくても新在留資格「特定技能1号」に移行できるとしたためだ。
 「帰国しなければ母国に貢献できない」「国際貢献と人手不足の解消は目的が違う」。8日、立憲民主党の会合では法務省に批判が続出。同省担当者は「特定技能1号を経て帰国すれば趣旨に整合する」と苦しい答弁に終始した。
 
 技能実習制度に詳しい指宿昭一弁護士は警鐘を鳴らす。「建前もかなぐり捨てた矛盾だらけの法案だ。このままでは、ごまかしで始まった技能実習制度の誤りを繰り返すことになる
 
 
外国人労働者受け入れ 5年で最大34万人 入管法改正案 政府想定
東京新聞 2018年11月13日
 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案に絡み、政府が二〇一九年度から五年間で約百三十万~百三十五万人の労働者が不足し、約二十六万~三十四万人の受け入れを見込む想定を新たにまとめたことが十三日、政府関係者への取材で分かった。一九年度の一年間では六十万人以上の不足に対し、約三万三千~四万七千人の受け入れを見込むとしている。
 政府は制度の根幹である受け入れ対象業種や規模を正式に公表しておらず、野党が反発を強めている。山下貴司法相は同日午前の閣議後記者会見で「国民の皆さまの胸に落ちるよう、説明を尽くしたい」と述べた。
 政府はこれまで一九年度の一年間で約四万人、五年間で約二十五万人の受け入れを試算していた。
 
 山下氏はこれまでの国会答弁で「人手不足に対応するため、即戦力の受け入れが可能になる」と改正案の意義を強調、受け入れ環境整備に向けた総合的な対応策を年内にまとめると述べていた。外国人の社会保険について「悪質な保険料滞納者の在留を認めないことを検討している」とも言及した。
 改正案は衆参両院の予算委で既に議論を開始。政府は近く、受け入れ対象業種や規模などを公表する考えを示している。