2018年11月8日木曜日

自民党は 改憲に向けて必死の体制

 憲法改正を焦る安倍内閣は何よりもまず早期の衆院憲法審の開催を目指していますが、野党側はそういう雰囲気ではないとして早くても15日、乃至はそれ以降になる見通しです。憲法審は安倍改憲に対する第一の防波堤です。
 
 下村博文憲法改正推進本部長は、既に改憲機運を高めるための全国行脚をスタートしていますが、7日、党所属国会議員を対象に憲法改正をテーマにした外部の専門家らを講師とする講演会を、毎週1回、早ければ来週から開くと発表しました
 また山口泰明組織運動本部長の連名で、年内をめどに、全国に289ある選挙区支部ごとに「憲法改正推進本部」を設置するよう文書で要請しました
 
 自民党の萩生田光一幹事長代行「総理が黙ることで、憲法審査会が動くのであれば、そういうことも考えたい」28日のNHK日曜討論で述べ、下村氏も3日の北海道での記者会見で、「『安倍色』を払拭し、自民党全体でしっかりと対応していくことが必要だ」と言い出しています
 
 日刊ゲンダイが入手した内部文書によると、下村氏は各選挙区支部長に共鳴する民間団体と協力して改憲世論を喚起するよう要請しています。「共鳴する民間団体」が日本会議であるのは言うまでもありません。
 
 自民党は下村氏を中心に、改憲における「安倍隠し」を図る一方で、改憲の実現に向けてあらゆる方策を必死で考え出しています。
 関連する記事を紹介します。
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衆院憲法審、8日の開催見送り 自民苦慮、15日以降に
東京新聞 2018年11月7日
 2018年度補正予算の7日成立を受け、今国会初となる可能性があった衆院憲法審査会の8日開催が見送られた。自民党は意欲を示したが、野党側が調整に応じず苦慮。前日を通例とする幹事懇談会を7日に開けなかった。木曜が定例日の衆院憲法審の開催は早くて15日となる見通しだ。
 
 来月10日までの会期が延長されない場合、今国会は最多で4回の実施となる。自民党は、衆院で継続審議となった国民投票法改正案を成立させるとともに、9条への自衛隊明記など4項目の改憲案を提示したい意向。与野党協議が調わなければ日程に余裕はなくなる。(共同)
 
 
自民党 改憲講演会を毎週開催へ
毎日新聞 2018年11月7日
 自民党の下村博文憲法改正推進本部長は7日、党本部で記者団に対し、党所属国会議員を対象に憲法改正をテーマにした講演会を開くと発表した。外部の専門家らを講師とし、早ければ来週から毎週開催。各議員が地元で党改憲条文案を説明する際の参考にする。党のインターネット番組「カフェスタ」でも同本部役員が中心となり、毎週、憲法論議を行う。【浜中慎哉】 
 
 
内部文書を入手 姑息“安倍隠し”改憲は日本会議と二人三脚
日刊ゲンダイ 2018年11月6日
 また、小手先の目くらましで突破するつもりか。自民党の下村博文党憲法改正推進本部長が3日、北海道北斗市で開かれた党支部の研修会で講演。改憲論議について「安倍色を払拭して……」と言い出した。一方、日刊ゲンダイは下村名で各選挙区支部長に出された内部文書を入手。「共鳴する民間団体」と協力して改憲世論を喚起するよう要請するものだ。国民不在のまま、改憲に向けた地ならしが着々と進んでいる。
 
 総裁選後の党役員人事で憲法改正推進本部長に就任した下村は、改憲機運を高めるための全国行脚をスタート。3日の講演はその第1弾だ。
「いつも解釈改憲するのではなく、時代や環境の変化に応じて改正、修正すべきだ」
 こう言って改憲の必要性を訴え、国会での議論活性化に向けて野党側と水面下で接触していることを明かした。野党には「安倍首相の下での憲法改正には賛成できないとの拒否反応がある」というのだ。
 下村は講演後、記者団に対して、「安倍政権の下では議論したくないと思っている人が多い。自民党全体でしっかり対応しながら、『安倍色』を払拭していくことが必要だ」と話した。「安倍色」を隠せば、国民も野党も改憲論議に乗ってくると考えているようだ。
 
「野党を巻き込むために“安倍隠し”をもくろんでいるのでしょうが、そんな姑息な手は通用しませんよ。改憲推進本部長に側近の下村博文氏、総務会長に腹心の加藤勝信氏、衆院憲法審の筆頭幹事に安倍首相と思想信条が近い新藤義孝氏らを起用した布陣を見るだけでも、安倍カラーは隠しようがない。そもそも、9条に自衛隊の存在を明記するなどといった『改憲4項目』も、党の総務会で了承を得たものではないのです。安倍首相の“私案”とでも呼ぶほかなく、どこからどう見ても安倍色の改憲ゴリ押しです」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
 
■各支部長には連携を通達
 10月29日には、下村と山口泰明組織運動本部長の連名で、年内をめどに、全国に289ある選挙区支部ごとに「憲法改正推進本部」を設置するよう文書で要請
 この文書では、「我が党の憲法改正案に共鳴する民間団体の要請に応え」「国民投票に向けた世論喚起を推進する連絡会議の設立」にも協力するよう求めている。
 
「ここに書かれている民間団体とは、言うまでもなく日本会議系の団体のことです。安倍首相が昨年の5月3日、改憲の具体案や、2020年に新憲法施行というスケジュールを唐突にブチ上げたのも、日本会議が主導する改憲派の集会でした。首相の改憲案の“ネタ元”は日本会議だといわれている。国家の根幹をなす憲法を改正するという大事業が、一団体の意向に引きずられていいのか、という声は党内にもあります」(自民党関係者)
 
 行政府の長である安倍が改憲に前のめりになっていることには、連立を組む公明党からも批判が出ている。憲法上、改憲を発議するのは立法府であり、首相は無権限だからだ。公明党の山口代表も「政府は余計な口出しをしないでほしい」と苦言を呈している。
「世論調査の数字を見れば分かるように、国民は拙速な改憲を求めていない。歴史に名を残したいというようなヨコシマな思惑で無理にやろうとするから、あちこちに矛盾が生じるのです」(金子勝氏)
 日本会議と二人三脚で改憲を進めようとしたところで、「安倍色」も「安倍隠し」も、しょせんは無理筋な話なのだ。
 
 
主張自民党改憲策動 姑息な「安倍隠し」通用しない
 しんぶん赤旗 2018年11月7日
 今国会での自民党の改憲案の提示を目指す、同党改憲推進本部長の下村博文氏が、「『安倍色』を払拭(ふっしょく)し、自民党全体でしっかりと対応していくことが必要だ」などと言い出しています(3日、北海道函館市で記者団に)。同党の萩生田光一幹事長代行も「総理が黙ることで、憲法審査会が動くのであれば、そういうことも考えたい」(先月28日のNHK日曜討論で)と言っています。安倍晋三首相が改憲の旗を振ってきたことは周知の事実で、今頃になって「安倍隠し」を図っても通用しません。
 
首相発言で改憲に拍車
 下村氏の発言は、自民党が改憲の合意づくりのために始めた「全国行脚」の第1回として、北海道北斗市を訪れた際、函館空港で語ったものです。自民党は全国の小選挙区党支部に「改憲推進本部」の設置を求めており、下村氏の全国行脚はその一環です。
 首相側近の下村氏は、安倍氏が自民党総裁に3選された後の、党役員人事で改憲推進本部長に起用されました。同じく首相側近の萩生田氏や、党内を取りまとめる総務会長に起用された首相に近い加藤勝信前厚生労働相らとともに、安倍改憲を支える「改憲シフト(布陣)」の一人とみられています。
 
 下村氏や萩生田氏がにわかに「安倍隠し」を始めたのは、現職首相が改憲の旗振りをすることは、明々白々、憲法の「尊重擁護義務」(99条)に違反しており、国会や自衛隊にまで改憲を号令した首相の一連の発言が、三権分立の原則にも自衛隊の政治的中立にも反していると、厳しい批判を浴びているからです。
 しかし姑息(こそく)な「安倍隠し」を図っても、それは通りません。安保法制=戦争法の強行など、異常な憲法破壊を重ねてきた安倍首相が、自衛隊を憲法9条に明記する等の明文改憲をいきなり持ち出してきたのは、昨年の憲法記念日の「読売」インタビューや改憲派集会へのメッセージです。その後も安倍首相は改憲に固執し、9月の自民党総裁選以降は、今国会に同党の改憲案を提示すると主張し、異常な「改憲シフト」を敷いたのです。
 
 今国会の所信表明演説でも改憲発言を繰り返し、代表質問への答弁でも、首相の改憲発言は憲法の尊重擁護義務に反すると追及されると、「発言は禁止されていない」と開き直り、野党の追及に「お尋ねだから答える」とごまかして、とうとうと改憲発言を繰り返すありさまです。
 現職の首相が改憲をあおりたてるのは、どんなに改憲が持論の首相であっても、歴代政権では見られなかった異常事態です。自民党は安倍首相の改憲発言をやめさせ、改憲策動を中止すべきで、「安倍色」を払拭するから、国会の憲法審査会などでの議論を進めてほしいなどとは虫のいい主張です。
 
憲法の立憲主義に反する
 最新の共同通信の世論調査でも、改憲の自民党案を今国会に提示するとの首相の意向に「賛成」は35・3%で「反対」が54・0%を占めます(「東京」5日付など)。国民が支持しない改憲の強行はそれ自体、憲法の立憲主義に反します。
 憲法を守らず、改憲の旗を振る安倍首相に政権を担う資格はありません。安倍改憲を阻止する国民のたたかいが重要です。安倍政権を退陣させることこそ、憲法を守り生かす、最も確かな道です。