日本のコメや麦の種を守る「種子法」が今年の4月1日に廃止され、その廃止法と同時に成立した「農業競争力強化支援法」により、これまで県の農業試験場などが開発してきた「コメの種とその情報を民間企業に提供する」ことが義務付けられました。ここでいう民間企業は事実上グローバル種子企業のことで、これによって農産品を品種登録するためのデータが無償で得られることになりました。
政府は、次の段階で「種苗法」を改定し、今後はすべての種子を品種登録させるようにします。
するとグローバル企業が既成の品種をベースにしたものをいち早く登録して、農家が従来のように種苗を自家採取することが出来なくします。
これがグローバル種子企業が、他国の種子・種苗の市場を独占してきたストーリーですが、そんなことが実現しては大変です。
いくつかの自治体は種子法廃止を受け条例を制定することで政府に対抗する動きを見せています。兵庫、埼玉、新潟、山形は、すでに種子条例を制定し、北海道や長野、富山でも独自の種子条例が制定される見通しです。
種苗法を成立させないことは勿論ですが、売国政府が自国の農業を壊そうとしている中、各都府県の奮闘が期待されます。
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外資の餌食 日本の台所が危ない
国vs自治体の争い勃発…種子法廃止に抵抗する「条例」続々
日刊ゲンダイ 2018年11月14日
日本の食と農業を守ってきた種子法が廃止されたことに対し、農業の盛んな地域は抵抗している。
自治体は、長い年月と費用をかけて「種」を作ってきた。ところが、種子法廃止と同時に成立した「農業競争力強化支援法」の8条4項には、次のような恐ろしい文言が明記されている。
<独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること>
要するに、自治体が培ってきた種に関する知識を、民間や多国籍の種子企業に「渡せ!」ということだ。種の開発者からすれば、知的財産の保護を無視するような法律に怒って当然である。
そこで、いくつかの自治体は、種子法廃止を受け、条例を制定することで政府に対抗する動きを見せている。
例えば、兵庫、埼玉、新潟、山形は、すでに種子条例を制定した。北海道や長野、富山でも、独自の種子条例が制定される見通しだ。
こうした動きが農業を主要産業とする自治体で広がっているのは、種子法がロクな審議もされずに廃止されたからだ。
「国会議員も地方議員も何が何だか分からないまま、種子法は突然廃止されました。地方議会から国会に対し、公共の種を守るために種子法に代わる法律を制定すべきとの意見書が相次いでいます」(「日本の種子を守る会」事務局)
国会では、野党6党が先の通常国会に種子法廃止法の撤回法案を提出し、継続審議となっている。加えて、与党・自民党にも変化の兆しがある。
今月6日、「日本の種子を守る会」が、種子法に代わる新たな法律の制定を自民の竹下亘前総務会長に要請すると、竹下は「私自身も(種子法廃止の)中身が分からず(賛成に)起立した一人だ」と懺悔。「量だけでなく安全性も含めて、食糧の安全保障は、政権が絶対に維持しなければならない」と話したのだ。
条例制定は相次いでも、種子法そのものがなくなった懸念は拭えない。農業問題に詳しいジャーナリストの天笠啓祐氏がこう言う。
「心配なのは、公共の種を開発してきた技術者や研究者がいなくなってしまうことです。彼らには、地域ごとの風土に合わせた種を生産してきた実績があるので、多国籍の種子企業にとっては引き抜きたい人材なのです。実際、民間レベルで、多国籍企業が食品メーカーや化学メーカーの種子開発部門を丸ごと買収している。日本の研究者が多国籍企業に引き抜かれると、外資による種子支配が強まる恐れがあります」
政府は「競争力強化」の名の下に、民間や外資を優遇している。日本は自ら自国の農業を壊しているのだ。 =つづく
(取材=本紙・生田修平、高月太樹)