2019年8月15日木曜日

15- 河村市長・菅官房長官の「表現の自由」侵害行為に抗議する憲法研究者声明

 憲法研究者有志が、「『あいちトリエンナーレ2019』における河村市長・菅官房長官の「表現の自由」侵害行為に抗議する憲法研究者声明」を出しました。
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「あいちトリエンナーレ2019」における河村市長・菅官房長官の「表現の自由」侵害行為に抗議する憲法研究者声明
2019年8月11日
憲法研究者有志一同
 2019年8月1日、愛知県で国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由・その後」が開催されましたが、8月3日に中止に追い込まれました。中止に追い込まれた理由として、大村知事は愛知県に寄せられた、テロ予告や脅迫を挙げました。
 テロ予告や脅迫はそれ自体犯罪であり、そのような暴力的な方法で表現活動をやめさせようとすることは強く非難されるべきものです。さらに、今回とりわけ問題なのは、この展示会中止にむけての政治家の圧力です。8月2日に現地を視察した河村名古屋市長は「日本国民の心を踏みにじるもの」などと発言して企画展の中止を求めました。8月2日、菅官房長官もあいちトリエンナーレが文化庁の助成事業であることに言及したうえで、「補助金交付の決定にあたっては事実関係を確認、精査したうえで適切に対応していく」などと発言しました。
 
 わたしたちは、河村市長と菅官房長官の言動は民主主義国家における「表現の自由」の重要性について全く理解を欠いたものであると考えます。企画展の展示内容は、例えば、名誉毀損として処罰されるべきものでも、特定の人種や民族の人々をそうした属性を有するというだけで誹謗・中傷するものでもありません。今回の展示中止の要請は、きちんとした理由のあるものでなく、単に、権力者が自分の気に入らない言論を自分が気に入らないという理由だけで禁止し、抑制しようとするものです。しかし、自由な民主主義社会においては、こうしたことはあってはならないことです。このようなことが許されれば誰も権力者を批判することができなくなり、その結果、わたしたちは権力者を批判する表現を受け取ることが不可能になるでしょう。これはとても息苦しい社会です。
 
 憲法21条で保障された表現の自由は、様々な考えの人の存在を前提としている民主主義社会にとって不可欠なものです。自分が気に入らないという以外に特別な理由なく展示の撤回を求めた河村市長と菅官房長官の言動は、憲法21条に反するものであり、強く批判されるべきだと考えます。わたしたちは、河村市長と菅官房長官の言動に対して、断固抗議し、撤回を求めます。
 
【賛同者一覧】2019年8月13日段階91名詳細は紙面の関係で省略)
 
 
新たに9作家が展示辞退 計12組に 「不自由展」中止に抗議
東京新聞 2019年8月14日
 愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止となった問題で、トリエンナーレに参加している海外の作家九人が十四日までに、新たに自作の展示の中止を実行委員会に申し出た。トリエンナーレの国際現代美術展には国内外の作家六十六組が参加しているが、不自由展の中止に対する抗議としての出品辞退は、計十二組となった。
 
 申し出たのは米国を拠点にするウーゴ・ロンディノーネさんやメキシコのモニカ・メイヤーさんら。九人は既に辞退している韓国の作家二人、キュレーター(学芸員)のペドロ・レイエスさんと連名で英文の声明を発表、米国の美術雑誌「ARTnews」のウェブサイトに十三日付で掲載された。
 声明では、旧日本軍の慰安婦を象徴する少女像などを展示した不自由展について、会期末まで継続されるべきだったと主張。河村たかし名古屋市長の中止要請や、補助金見直しを示唆した菅義偉(すがよしひで)官房長官の発言、多数の匿名の電話によるスタッフへの嫌がらせ、脅迫のファクスといった四種の「表現の自由」に対する攻撃があったとした。一方で危機管理上の理由による中止に賛同できないとし、不自由展の再開まで自分たちの作品展示を中止するよう求めた。
 作品は十四日現在、まだ展示されている。実行委は展示継続を目指し、作家側と協議を続ける