2019年8月4日日曜日

障害者基本法と福祉国家の理念(世に倦む日々)

「世に倦む日々」氏が、臨時国会が開会され1日の参院選で当選した議員たちが初登庁する様子をテレビが報じるに当たって、れいわの重度障害者2名主役になったことを取り上げ、維新の会の松井一郎代表の発言は「冷酷な暴論として否定されていくだろうと述べました。
 そして「障害者基本法」に触れながら、日本がそこで説いている(筈の)福祉国家の理念を確認しています。私たちは50年前に制定されたこの法律を改めて身近に引き戻す必要があります。
(註 文中「ポリコレ」とあるのは「ポリティカル・コレクトネス政治的正しさ」の略語ですまた「プリファレンス(好感度)」の青字部分は当事務局が勝手に付けた日本語訳で文責は事務局にあります)
 
 日刊ゲンダイの記事「官邸周辺が警戒…これから始まる“れいわ・山本太郎つぶし”」を併せて紹介します。文中、「安倍応援団は、山本代表にまつわるネガティブ情報を必死になって探している」という記述がありますが、実際には「内調」や「官邸ポリス」がその中核をなす筈です。
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れいわ重度障害者議員の初登院 - 障害者基本法と福祉国家の理念 
世に倦む日々 2019-8-2
 1日、臨時国会が開会され、参院選で当選した議員たちが初登庁する様子をテレビが報じていた。その主役として注目されたのは、れいわの重度障害者2名の姿であり、特に報ステではトップで扱って積極に評価する報道で纏めていた。週末の番組でも大きく取り上げられるだろう。重度障害者2名が登場する絵柄は、最初は少し違和感を覚えた者たちも、繰り返し大型画面で接するうちに感覚が慣れてきて、また、テレビが障害者の社会参加と社会包摂の意義の一般論を説くのを聞くうち、自ずと印象が変わってくるだろう。テレビは公共のメディアだから、れいわの障害者議員とそれへの対応について、間違っても松井一郎のような非常識な言動を吐くことは許されず、逆に、松井一郎の発言を冷酷な暴論として否定し、叱責する立場で視聴者にコメントを伝えなければならない。テレビ論者が松井一郎を擁護したり、親近的な見方をした場合は、視聴者から批判が集中して放送倫理上のトラブルに発展するだろう。 
 
障害者基本法を確認しよう。その第1条に、「全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」と理念が謳われている。第3条には、「全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること」と規定されている。第4条には、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」とあり、第4条の2に、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」とある。こうした法の規定に則って、今回、参議院では議場の一部をバリアフリー化する工事が施され、れいわ議員の活動を支援する措置が決められた。多くのマスコミが言っているように、一歩前進であり、風穴が空いた瞬間である。
 
障害者が不遇に置かれることなく、基本的人権を平等に行使でき、人として尊重される社会が、豊かで先進的な社会だろう。他の欧米諸国と較べたとき、やはり日本は遅れている感を否めないし、その表れが松井一郎の下品で軽率で蒙昧な反応のように思えてならない。ドイツの財務相が車椅子の政治家だった。バリアフリーという言葉を耳にしたのは、もう25年以上前になる。ユニバーサル化という言葉も流行った。日本のバリアフリー化は、医療とか学校とか建築とか、そういう分野では確かに進歩し定着しているに違いないけれど、50年前に制定された障害者基本法の条文を読み、法の理念を前にしたとき、50年も経つのにこの程度かという心境になるのを抑えられない。理念の実現は遅々として停滞している。今度のれいわ新選組のチャレンジは、障害者や障害者を持つ親からすれば朗報であり、生きる勇気を与えてくれる出来事だろう。人は誰でも障害者になるのであり、障害者を支えられる社会作りを前進させなくてはならず、それは人類の普遍的な目標であり根源的な価値観だ。
 
れいわの重度障害者議員の登院は、各局のテレビで好意的に報道された。この山本太郎の奇抜に見えるプロジェクトに対して、玉川徹や小川彩佳は全面的に応援する姿勢で報じている。富川悠太と徳永有美も同調的で、フジの小倉智昭も好評を隠さなかった。キャスターの視線や口調は、それが「中立」の基準として視聴者に受け止められるから、世論への影響は小さくない。選挙後のテレビ報道はれいわのイメージアップに貢献している。キャスターが報道対象に示す好感の態度は、商品のテレビCMと同じであり、視聴者のプリファレンス好感度の向上にそのまま繋がる効果となる。マスコミが世論調査で報じる支持率は、まさに一般大衆のプリファレンスの測定値に他ならない。安倍内閣の支持率が高く出るのは、年がら年中、NHKを始めとするテレビが安倍晋三を主役にして忖度報道で埋めるからで、安倍晋三が敵視対抗する中国・韓国・北朝鮮を叩きまくるからである。テレビが安倍晋三に媚び諂い、政府べったりの大本営発表を続けるから、日本人全体が洗脳されて安倍支持者が溢れる倒錯状況になった
 
ワイドショーにせよ、夜のニュースにせよ、今は子どもが夏休みで家にいる季節で、親と一緒にテレビを見る機会が多いときだ。れいわの重度障害者議員の絵は、家族団欒の場に話題を提供するはずで、小さな子どもを持った親にとっては、重要な家庭教育の機会である。いわば、親の鼎の軽重が問われる場面であり、子どもの疑問に正しく応じ、正しい解説で子どもの理解を導かないといけない。どれほど今回の絵の裏に山本太郎の政治的思惑を嗅ぎ取り、また、共生社会主義の一般論にポリコレ的限界が胚胎する矛盾を承知していたとしても、小学生の子どもの前でそれを言い挙げることはできない。松井一郎に賛成だとは言えない。すなわちそこでは、共生社会の楽観像に素直に準じる親になり、れいわの行動の意義を認める良識ある親になる必要がある。社会の進歩とはこういうことで、未来の社会はこうだと理想を言わないといけない。もっと積極的な親の場合は、夏休みの自由研究に「障害者の社会参加」を選ぼうという話になるだろう。
 
パパが手伝ってあげるからこのテーマで研究してみようという具合に進めば、満点パパの教育と言える。子どもは喜ぶし、後々いい方向と結果になるのは確実で、家族の大事な思い出作りになるだろう。ちょうど、山本太郎は小学生の子どもを持つ親と同じ年齢だ。れいわの一挙は同世代の刺激になったに違いなく、富川悠太の表情がそれを物語っているように思われた。障害者基本法が制定された1970年は高度成長の時代で、日本が福祉国家への道を歩んでいた時代だ。革新自治体と田中角栄と公明党が福祉競争をしていた時代だ。つくづく、経済成長はしなくてはいけないと痛感する。経済社会がより豊かな方向に発展し、パイが拡大して誰もが分け前にあずかれる未来を想定できたから、個々の心理が安定し、他者や弱者にやさしくする心構えを持てたのである。理想に前向きな人格になれたのだ。その前提が失われ、心に余裕をなくしたから、松井一郎のような邪悪で卑しい悪意が人々の中に巣くい蔓延るってしまう。不安と強迫の中に置かれているから、福祉国家の基本精神を肯定できず、竹中平蔵の自己責任の思想の虜になるのである
 
日本経済が欧米並みに推移して、GDP1000兆円になっていれば、今、松井一郎のような、障害者を傷つける卑劣な嫌がらせを言う日本人はいなかっただろう。先に報ステの取材で登場した、子どもを持つことを断念した35歳の非正規の夫婦に言いたい。どうか子どもを持って欲しい。日本が変わることに賭けて、勇気を出してパパとママになる選択をしてもらいたい。一緒に政治を変えて経済成長しようではないか。福祉国家日本を再建しよう。
 
 
官邸周辺が警戒…これから始まる“れいわ・山本太郎つぶし”
日刊ゲンダイ 2019/08/03
 参院選が終わった後も、街頭演説に1000人の聴衆が殺到するなど、熱い支持を集めている「れいわ新選組」。山本太郎代表は、次の衆院選には「候補者100人を擁立する」と宣言している。この先、野党再編の中心になるのは間違いない。山本本人も、本気で政権を取りにいくつもりだ。だからだろう、警戒を強める安倍首相周辺は、さっそく“れいわつぶし”に動き始めている。
 
 重度障害があるれいわの参院議員2人が、議員活動中に必要な介助費用を参院が当面負担することについて、自民党の小野田紀美参院議員は〈これは議員特権になりませんか…?〉とイチャモンをつけている。維新代表の松井一郎大阪市長も「公的補助を受けずに電車通勤している全盲の職員もいた。危険だが、努力で克服していた」と介助の動きに水を差した。
 なんとか“れいわ旋風”を止められないか。安倍応援団は、山本代表にまつわるネガティブ情報を必死になって探しているという。
 
「官邸周辺は、2015年の静岡市長選で公職選挙法違反で逮捕された斎藤まさし氏がれいわの選挙ブレーンではないかと探っているようです。また、山本代表の離婚問題や巨大宗教との関係、大企業との関係にも注目している。俳優時代を含め山本代表を徹底的に洗い始めています。真偽は別にして、これからメディアは女性問題やカネについて次々に報じていくとみられています。ひとつでもスキャンダルが出たらダメージは大きいでしょう」(官邸担当記者)
 
 安倍応援団が山本氏をターゲットにしているのは、ここさえつぶしてしまえば、あとは怖いものはないからだ。政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「今、安倍政権が怖いのは、立憲民主党など既存の野党ではなく、れいわ新選組を引っ張る山本太郎代表でしょう。選挙期間中、ほとんどテレビで報道されなかったのに、草の根で228万票も獲得した。街頭演説には動員なしでも多くの人が集まる。次の衆院選で大化けするかもしれない。ネガティブ情報を必死で集めるのは、今のうちにイメージを悪くして山本太郎代表をつぶしておこうということなのでしょう。それだけ、脅威に感じているということでしょう」
 
 加計問題で官邸に盾突いた前川喜平元文科次官は、安倍官邸に「出会い系バー通い」を読売新聞にリークされたとみられている。この先、どんな“山本つぶし”が起きるのか。