2019年8月7日水曜日

安倍首相が広島“原爆の日”にまた冷酷対応

 広島市平和公園で午前8時から行われた平和記念式典における安倍首相のスピーチは、今年も上辺だけを取り繕った無内容なもので広島市長「平和宣言」や小学生のスピーチとは対照的でした。
 唯一の被爆国でありながらいまだに署名・批准していない核兵器禁止条約にふれることもしない態度は、アメリカへの迎合しか眼中にないという見慣れたものです。
 式典のあと広島市内のホテルで行われた安倍首相と7つの被爆者団体の代表らの会合でも、代表者を落胆・憤激させる対応しかできませんでした。
 LITERAが、核兵器禁止条約への参加をデタラメノな言い訳で避け続け、被爆者の思いに寄り添うことをしない安倍首相を批判しました。
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安倍首相が広島“原爆の日”にまた冷酷対応! 
広島市長の核兵器禁止条約参加の訴えを無視、原爆養護ホームも訪問せず
LITERA 2019.08.06
 どうしてこうも毎年、被爆者の思いを無視できるのか──。きょう、74回目の原爆の日を迎え、広島市の平和記念公園では「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」がおこなわれたが、やはり今年も、安倍首相のスピーチは上辺だけ取り繕った、無味乾燥なものだった。
 
 たとえば、きょう安倍首相がおこなったスピーチは、「令和の時代」だの「新しい時代」だのといったフレーズを組み込みつつも、話している内容はほとんど昨年の言葉を同じような表現で言い換えただけ。構成もほぼ同じで、昨年語った「賢人会議」の話題に、今年は「核兵器不拡散条約発効50周年」をプラスしたくらい。2014年には広島で前年とほぼ同一の文章を“朗読”して批判が殺到したにもかかわらず、長崎でもそれと同じコピペ演説をおこなうという事件を起こした安倍首相だが、その姿勢は本質的には何も変わっていない。
 無論、唯一の被爆国でありながらいまだに署名・批准していない核兵器禁止条約にふれることはなく、「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、双方の協力を得ながら対話を粘り強く促し、国際社会の取り組みを主導していく決意」などと述べた
 
 一方、そうした安倍首相の核廃絶へのやる気のなさ、被爆者の思いを軽視する姿勢に対し、はっきりとNOを叩きつけたのは、松井一實・広島市長だった。
 松井市長は平和宣言を、このような言葉からはじめた。
「いま世界では自国第一主義が台頭し、国家間の排他的、対立的な動きが緊張関係を高め、核兵器廃絶への動きも停滞しています。このような世界情勢を、みなさんはどう受け止めますか。2度の世界大戦を経験した私たちの先輩が、決して戦争を起こさない理想の世界を目指し、国際的な協調体制の構築を誓ったことを、私たちはいま一度思い出し、人類の存続に向け、理想の世界を目指す必要があるのではないでしょうか」
 
 例年、原爆が投下された日の話からはじまることが多い平和宣言だが、松井市長はまず世界的な核兵器廃絶の動きから話をはじめたのだ。そして、被爆者の声を伝え、「生き延びたものの心身に深刻な傷を負いつづける被爆者のこうした訴えが、みなさんに届いていますか」と問いかけ、「世界に目を向けると、一人の力は小さくても、多くの人の力が結集すれば願いが実現するという事例がたくさんあります」としてガンジーの「不寛容はそれ自体が暴力の一形態であり、真の民主的精神の成長を妨げるものです」という言葉を紹介した。
 この言葉は、核兵器廃絶の動きに逆行するトランプ大統領を意識したものだと思われるが、さらに松井市長は、安倍首相に向けて、こう突きつけたのだ。
日本政府には唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約への署名・批准を求める被爆者の思いをしっかりと受け止めていただきたい。その上で、日本国憲法の平和主義を体現するためにも、核兵器のない世界の実現にさらに一歩踏み込んでリーダーシップを発揮していただきたい
 
被爆者7団体との面会でも、核兵器禁止条約への参加拒否した安倍首相
 国連が核兵器禁止条約を採択した2017年以降、松井市長が平和宣言において、日本政府の核兵器禁止条約への署名・批准にここまで踏み込んだのははじめてのことだ。それだけ、安倍政権が核廃絶に背を向けつづけている現状に業を煮やし、危機感を持っているということだろう。
 さらに、松井市長の平和宣言だけではなく、きょうの式典では国連事務総長であるアントニオ・グテーレス氏のメッセージを国連の中満泉・軍縮担当上級代表が代読したが、それは「唯一の被爆国」の代表たる安倍首相こそが訴えるべき内容だった。
「私たちはいま一度、被爆者の方々が世界中に広めてきた重要なメッセージを思い出さなくてはなりません。それは、核兵器の使用を防ぐ唯一の確実な保証は核兵器の完全な廃絶であるということです」
 
 しかし、これらのメッセージが安倍首相に届いたとはけっして思えない。現に、この式典後におこなわれた被爆者7団体との「被爆者から要望を聞く会」では、核兵器禁止条約への署名・批准を求める声に対し、安倍首相は〈参加しない考えを示した〉(毎日新聞)という。“安倍様のNHK”は「被爆者団体と面会の安倍首相 核軍縮働きかけの考え改めて示す」などと伝えたが、実際は「核兵器禁止条約への署名・批准を拒否」がその中身だったのだ。
 それだけではない。安倍首相は、それまで慣例として広島・長崎でおこなわれてきた被爆した人たちの暮らす原爆養護ホームの訪問を2013年以来サボりつづけ、2014年には訪問をドタキャンした挙げ句、戻った東京では歯の治療と美容室で散髪をするという信じがたい行動に出ていた。昨年は久々に原爆養護ホームの訪問をおこなったが、これについて本サイトは「国連のグテーレス事務総長が長崎の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典への出席や被爆者との面会を予定しているため、自分が被爆者との面会をしないわけにはいかなくなってのことだろう」と言及したのだが、案の定、今年、安倍首相は原爆養護ホームの訪問もせず帰京。官邸に着くなり、御用メディア・産経新聞社の特別顧問で“メシ友”である清原武彦氏と面談をおこなっている。
 
 スピーチでは「被爆者の方々から伝えられた被爆体験を、しっかりと、若い世代へと語り継いでいく」などと述べながら、実際には被爆者を見舞うこともせずにメディア幹部との面談を優先させる──。しかし、これこそが安倍首相の正体なのだ。戦争の加害責任を認めようとせず歴史修正に血道を上げる安倍首相だが、過去に、核武装・保有を肯定する発言をしたことがあるように、この男には、原爆被害国としての使命感など微塵もない。
 日本が世界に核廃絶をアピールするためには、まず、この男を権力の座から引きずり下ろすしかないのだ。 (編集部)