2019年8月22日木曜日

22- 産業を根こそぎ破壊 韓国叩きの本質は経産省の亡国政策(金子勝教授)

 安倍1強と言われる安倍首相ですが、その振付師が経産省出身の今井尚哉首相秘書官であることは広く知られているところです
 
 安倍官邸・安倍政権が半年かけて練ってきた「韓国叩き」は嫌韓のネトウヨを喝采させ、官邸に同調しているテレビを賑わしていますが、それだけのことです。
 韓国が受けるダメージは短期的なもので、いずれは日本からの原材料の供給がなくても自立できるようになりますが、その販路を失った日本側の企業がそれを回復できる見込みはありません。
 韓国側の報復:日本品不買運動や日本旅行の自粛はこの先も当分続くことでしょう。当然日本側のダメージは大きく、官邸は半年間もかけて一体何を検討したのでしょうか。
 
 経済学者の金子勝教授が、日刊ゲンダイのシリーズ:金子勝の天下の逆襲」で、安倍政権が行っている韓国叩きは経産省の亡国政策で、いまも日本の産業を根こそぎ破壊しようとしているとする記事を出しました。
 日本早晩立ちいかなくなるとして、ここでも、日本のメディアそうした事実に目をつむり、口をつぐんでいることを非難しています
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金子勝の「天下の逆襲」
産業を根こそぎ破壊 韓国叩きの本質は経産省の亡国政策だ
日刊ゲンダイ 2019/08/21
 安倍政権とネトウヨが韓国叩きに夢中になっているが、問題の本質はこの国の産業を根こそぎ壊そうとする経産省の亡国政策にある。原子力ムラのボスの今井尚哉首相秘書官は原発セールス外交でことごとく失敗。加計問題をめぐる渦中の人物の柳瀬唯夫元首相秘書官は原発ルネサンス路線を敷き、東芝だけでなく日立製作所や三菱重工も危うい状況に追い込んだ。
 
 そして、首相側近の世耕経産相が元徴用工問題を理由に対韓輸出規制に走った。そもそも、元徴用工訴訟は日本企業に対する民事訴訟。それゆえ、韓国政府は国家賠償とは切り離した立場を取っている。現に、中国で三菱マテリアルは和解した。前例に従い、日韓も政治が介入せずに粘り強く着地点を模索するのが最善策だったにもかかわらず、安倍政権は通商問題と実質に絡めた。
 安倍首相はそれがWTOルール違反になりかねないと分かると、「安全保障上の輸出管理だ」と論点をすり替え、二枚舌を使い出した。やっていることは、サムスンなど韓国半導体メーカーへの嫌がらせ。希少性の高い高純度のフッ化水素をウランやサリン製造に使うわけがないし、EUVレジストやフッ化ポリイミドを軍用機やレーダーに回すこともあり得ない。証拠を示さずに規制対象をなし崩しに広げ、「ホワイト国」外しに動く。何もかもがデタラメなのだ
 
 しかも、この流れは日本の半導体素材メーカーの努力を無に帰す。JSR、東京応化工業、森田化学工業、三菱ケミカル、富士フイルムなどはサムスンやSKと水平分業を展開し、顧客を維持してきた。韓国企業は当面は困難に陥るが、1年や2年もすれば代替メーカーを確保するだろう。
 
 経産省は半導体素材だけでなく、液晶やディスプレーもぶっ壊している。官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)を通じて3500億円も出資したJDI(ジャパンディスプレイ)は債務超過。JDI主力の白山工場はスマホ向け液晶パネルが振るわずに追加損失を計上し、2019年4~6月期は連結純損益で833億円の赤字だ。次世代の有機ELパネルを手がける子会社JOLEDをINCJが引き受け、性懲りもなく奉加帳を回そうという魂胆である。血税はドブに捨てられ、台湾や香港企業に足元を見られ買い叩かれる始末だ。
 
 対韓輸出規制もディスプレー企業潰しも、経産省の失策こそが本質だ。このままでは、この国のあらゆる産業は破壊されてしまう。日本が早晩立ちいかなくなるのは明白だ。メディアはそうした事実に目をつむり、口をつぐむ。安倍政権と一緒になって韓国に拳を振り上げている場合ではない。
 
 金子勝 慶応義塾大学経済学部教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学大学院 博士課程単位取得修了。 法政大学経済学部教授を経て。2000年10月より現職。TBS「サンデーモーニング」、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。『資本主義の克服 「共有論」で社会を変える』集英社新書(2015年3月)など著書多数。新聞、雑誌にも多数寄稿している。