2019年8月28日水曜日

倫理の問題を感情の問題に矮小化/植民地支配への真摯な反省を土台にすべき

「世に倦む日々」氏が25日のサンデーモーニングにおける、司会の関口宏氏の韓国叩きの発言を取り上げました。
 関口氏は韓国のGSOMIA破棄の問題を取り上げるに当たって、出演者に文在寅叩きのコメントを催促するような導入の仕方をしたものの、出演者たちはリベラルを基調とする人たちだったので実際には影響はありませんでした。「世に倦む日々」氏によれば、「関口氏は貴重なリベラリストなのに韓国や中国の問題がテーマになると途端に理性や良識が吹っ飛んでしまう」、そこには韓国や中国を見下すという特別な差別感覚があるとして、それは「日本の過去の侵略と植民地支配に対する反省がなく、村山談話の思想が内面化されてないからだ」としています。
 そして韓国民を「感情的」と規定するのは「倫理の問題を感情の問題に矮小化する欺瞞」であると断罪するとともに、批判は立憲民主党の呆れるばかりの韓国政府叩きの声明に及び、それに何の批判もせず沈黙をしている顧問格山口二郎氏を卑劣だとしました。
 まことに明快です。
 
 それとは別に、共産党の志位委員長が26日の記者会見で、記者団の質問に答える形で、日韓関係の深刻な悪化について、「植民地支配への真摯な反省を土台にしてこそ解決の道は開かれる  」とする見解を発表しました。
 しんぶん赤旗の記事を併せて紹介します。
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倫理の問題を感情の問題に矮小化する欺瞞と工作 - 関口宏の韓国叩き 
世に倦む日々 2019-08-26
25日のサンデーモーニングで、GSOMIAの問題がどう扱われるか注目したが、関口宏の凄まじい韓国叩きに閉口させられた。文在寅に対して露骨に不信の感情を露わにし、スタジオの出演者に文在寅叩きのコメントを催促して煽る態度が目立った。まさに、25日の関口宏の司会進行こそが偏向した嫌韓の扇動というものだ。通常であれば、こうした排外的な右翼ショービニズム排外的愛国主義の沸騰に対して、それに憂慮を示し、バランス配慮の姿勢で臨むのが関口宏なのだが、この日は逆で、他の出演者が並べる慎重意見に不満を示し、文在寅を全否定する空気を番組の中で爆発させようと嗾けている。関口宏が最も過激であり、嫌韓右翼一色となった世論に迎合する仕切りを演じていた。以前に指摘したことだが、関口宏は国内のマスコミの中では唯一の生き残りと言ってもいいリベラリストなのだけれど、韓国や中国の問題がテーマになると、途端に理性や良識が吹っ飛んでしまい、他のマスコミ右翼と同じグロテスクな口調に尖ってしまう。 
 
今回も問答無用で切り捨てた。その理由について、おそらく、石原慎太郎の三国人発言と起源を同じくするものであり、同世代に埋め込まれた差別意識の為せる業だろうと分析したことがある。関口宏には、われわれの世代以下にはない特別な差別感覚があり、韓国や中国を見下す傾向が強い。韓国や中国を内在的に理解する思考的前提がない。韓国人や中国人は常に日本人より愚かだという固定観念が見える。それは、日本の過去の侵略と植民地支配に対する反省がなく、村山談話の思想が内面化されてないということだ。関口宏に期待と信頼を寄せている者たちにとっては、このことは非常に残念なことである。関口宏は76歳だけれど、今からでも学習に取り組んで弱点と限界を克服してもらいたい。4年ほど前までは、番組に河野洋平が出演して安倍晋三の東アジア外交を批判する場面もあった。関口宏は個人的に親しい関係があるだろうから、河野洋平が今回の件についてどういう感想と意見を持っているか尋ねてみるといい。
 
今回の文在寅と韓国社会の日本への反発と対抗について、日本側は「感情的」というレッテルで無価値化する言論を浴びせて反撃している。この手法は日本右翼の十八番の伝統芸だが、国内では非常に効果的で、安倍晋三の対韓挑発政治を正当化する世論工作において威力を発揮している。韓国は感情的だという決めつけで、韓国側の言い分を全否定してシャットアウトする。そこには、倫理の問題を感情の問題にスリカエるトリックがあり、巧妙な操作があるわけだけれど、多くの日本人はそれに気づかず、マスコミ論者が上から浴びせるシャワーで洗脳され、「韓国=感情的」という言説を無条件に納得して自己正当化してしまう。本来、そこで監視役にならなくてはいけない関口宏が、世代ゆえの民族差別のバイアス偏位・偏向に流され、誤った世論の奔流への抵抗力となることができない。植民地支配の歴史が問われ、倫理の問題が問われているのに、倫理を捨象する日本人は、感情という筋違いな言葉を被せ、問題を歪曲化して韓国を不当視する。
 
今回のGSOMIAの件について、立憲民主党は安倍政権の対応に右倣えして韓国政府叩きの声明を出した。「容認できるものではない」とか「再考を促す」とか傲慢に言っている。元徴用工の問題については一言も触れず、紛争の根本原因が歴史問題にあることの認識はどこにもない。「日本が戦争責任と向き合ってこなかったことが問題の根底だ」と、正論を述べている石破茂の姿勢と雲泥だ。立憲民主党の顧問格である山口二郎のTwは、21日から書き込みが止まっていて、GSOMIAの問題は何も発言していない。立憲民主党の公式コメントと齟齬がないように合わせていて、要するに韓国叩きの隊列に無言で加わっている。そうした山口二郎の卑劣な沈黙に対して、しばき隊左翼は忖度し、批判めいたことを一切言わない。口を開けば誰彼かまわず、侮辱と罵倒の機関銃を浴びせる生理習性のしばき隊のゴロが、「野党共闘」命の動機で口にチャックに徹し、同じく口にチャックの山口二郎を容認して見逃している。その山口二郎は、普段は安倍叩きを売文し、韓国読者を喜ばせてハンギョレから小銭をもらっているのだ。欺瞞と姑息にもほどがある。
 
私は、今回、(1)自民党が半導体材料の禁輸を報復措置として当初から計画し、テレビの番組で予告していた事実の暴露、(2)慰安婦問題のときは日韓請求協定など一言も持ち出さず、「国と国との約束」など寸毫も口に出さなかった過去の経過、(3)韓国にとっての日韓請求権協定は日本にとっての日米地位協定と同じ意味にあり、改正または止揚すべき不平等条約であるという歴史の真実、(4)日本側が感情の問題だと矮小化しているのは欺瞞であり、実は倫理の問題なのであって、二国の政府と国民が関係を組む上での基礎であるという真相と本質、などを並べてきた。さらに自慢を言わせてもらえれば、4年前の「慰安婦合意」についても発表直後に破綻を予想、倫理なき外交合意は必ず崩壊すると洞察を述べている。(3)と(4)は政治学的に特に重要な論点だろう。これらの諸点について、著名な大学教授や政治学者からの指摘は全く見ない。東大教授の肩書きで誰かが言えば、マスコミが着目し、世間の波紋を呼んで政治を動かす力になったと思われる。内田樹でも誰でも、誰かが言わなくてはいけないことで、テレビ報道で共通認識にならなくてはいけないことだ。
 
(3)と(4)を正しく説明する知識人がいない。それがないから、きっこなどの左翼論者までも「どっちもどっち」の見方に陥ってしまうのである。本来は対抗言論を起こすべき部分が、安倍晋三と同じ立場に寄り、韓国叩きに精を出し、国内の右傾化濃度をより強めるのである。この週末、テレビを横目で見ながら、Twに何も書く気が起こらなかった。森永卓郎が言うところの、平均的な健康寿命が終わるまで、約10年の時間が残されているけれど、それをどう使えばよいのかと迷い悩む。これまで15年以上やってきた同じ系統の営みを続けるべきなのか、それとも別の目標に置き換えるべきなのか思い悩む。最後に、文在寅政権の今後について、日本の左翼は楽観論が支配的だけれど、私はきわめて悲観的な方向に観測している。韓国内の反文在寅の策動は、米大使のハリス(CIA)が舵を執っている点に注意しないといけない。金正恩は、韓国内を揺さぶって文在寅政権を不安定化させることにしか興味がないようで、韓国を混乱させたい思惑だろう。親米保守政権に戻れば、ある意味で、38度線は安定的に再固定化し、野党勢力になった民主化運動の市民がまた活発に統一を求めて動く状況になる。
 
北朝鮮にとって、太陽政策の方向にマイグレート移行されることが、最も命取りで危険な道なのであり、そのことを金正恩は本能的に察知していて、北朝鮮国家の生き残りのために駆け引きをやっている。
 
 
植民地支配への真摯な反省を土台にしてこそ解決の道は開かれる
 日韓関係の深刻な悪化について 志位委員長が表明
 しんぶん赤旗 2019年8月27日
 日本共産党の志位和夫委員長は26日の記者会見で、記者団から「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の韓国による破棄など日韓関係ついてどう見ているか」との質問を受け、次のように表明しました。
 一、日韓関係の深刻な悪化を深く憂慮している。
 
 一、今日の日韓関係の深刻な悪化を招いた直接の原因は、安倍政権が、「徴用工」問題で被害者の名誉と尊厳を回復する責任を放棄したうえ、わが党の強い警告を無視して、この問題での政治的対立の「解決」の手段として対韓貿易規制の拡大――韓国の「ホワイト国」からの除外という、政経分離の原則に反する「禁じ手」を使ったことにある。
 しかも、安倍政権は、「ホワイト国」からの除外の理由を「安全保障のための輸出管理の見直し」と説明するという欺瞞(ぎまん)的態度をとった。
 この過程で、河野外務大臣が、駐日韓国大使を呼びつけ、メディアの前で居丈高に「無礼」と面罵したことをはじめ、およそ外交的礼儀を欠く態度が繰り返されたことも、恥ずべきことである。
 
 一、さらに日韓関係の深刻な悪化の根本的要因としては、安倍首相が、韓国の植民地化を進めた日露戦争を美化した2015年の「安倍談話」に象徴されるように、1995年の「村山談話」、1998年の小渕首相と金大中(キム・デジュン)大統領の「日韓パートナーシップ宣言」で明記された「植民地支配への反省」の立場を投げ捨てる態度をとり続けていることを、あげなければならない。
 日本軍「慰安婦」問題にせよ、「徴用工」問題にせよ、過去の植民地支配への真摯(しんし)な反省の立場を土台にしてこそ解決の道が開かれることを強調しなくてはならない。
 
 一、歴史を偽造し、他国を侮辱し、排外主義をあおることによって、自らの延命をはかることは、政権をあずかるものの態度として決して許されるものではない。それは北東アジアでの平和構築にとってもきわめて有害である。こうした態度を根本からあらためることを強く求める。
 
 一、(GSOMIA〔軍事情報包括保護協定〕の破棄そのものをどう見ているか)わが党は、もともとまず日米間で、続いて日韓間で締結されたGSOMIAそのものに反対してきた。
 
 2007年に米国の強い要求で締結した日米GSOMIAは、日米が軍事情報でも一体化を加速させ共同で戦争をする仕掛けづくりであるとともに、「軍事情報保護」の名で国民の知る権利を侵害し、13年の秘密保護法の強行へとつながっていった。
 
 2016年に締結された日韓GSOMIAは、米国主導の「ミサイル防衛」体制に日韓両国を組み込み、中国や北朝鮮を念頭に軍事的圧力を強めようというものであり、これにも私たちは反対を表明してきた。
 軍事的挑発に対して、軍事的圧力の強化で構えるというやり方では、軍事対軍事の悪循環になる。そういうやり方ではなく、いかに対話による解決の局面へと転換するのかが重要だと主張してきた。GSOMIAが解消されることで、北東アジア地域の平和と安定が危険にさらされるとは考えていない。