2019年8月10日土曜日

長崎平和祈念式典が行われました

 9日、長崎市平和公園で行われた平和祈念式典には、被爆者や遺族、それに66か国の代表を含むおよそ5900人が参列し、この1年間に亡くなった被爆者など3402人の名前が書き加えられた18万2601人の原爆死没者名簿が納められました。
 
 田上富久市長は平和宣言で、米露の中距離核戦力全廃条約失効などに触れ「核兵器が使われる可能性が高まっている」と危機感を表明したうえで、「日本政府核兵器禁止条約背を向けている」として、「唯一の戦争被爆国の責任として、一刻も早く核兵器禁止条約に批准・署名し、『戦争をしない』という平和の理念を世界に広げるリーダーシップを発揮するべきだ」と訴えました
 また何よりも『戦争をしない』という決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持と、それを世界に広げるリーダーシップを発揮することを求めると、政府に対して「9条の堅持」を訴えました、
 
 安倍首相のスピーチは、広島でのスピーチわずかに構成を入れ替えたものを読み上げただけで、広島のときと同様、唯一の戦争被爆国でありながらいまだに署名・批准していない核兵器禁止条約にふれることはありませんでした。
 
 毎日新聞とLITERAの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原爆投下から74年 長崎で平和祈念式典 
首相、今年も核兵器禁止条約に触れず
毎日新聞 2019年8月9日
 長崎は9日、米国による原爆の投下から74年となる「原爆の日」を迎え、長崎市の平和公園で平和祈念式典があった。田上(たうえ)富久市長は平和宣言で、米露の中距離核戦力(INF)全廃条約失効などに触れ「核兵器が使われる可能性が高まっている」と危機感を表明。核廃絶を訴えてきた市民社会の役割を強調して連帯を呼びかけ、日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を迫った。一方、安倍晋三首相は3年連続、あいさつで条約に言及しなかった。 
 
 式典は午前10時45分に始まり、被爆者や遺族ら約5900人が参列。原爆投下時刻の午前11時2分には黙とうをささげ、原爆犠牲者の冥福を祈った。 
 平和宣言に立った田上市長は「核兵器は役に立つと公言する風潮が再びはびこり始めている」などとし、米露による新たな核兵器開発の動きや、2日に失効したINF全廃条約後の核軍縮の行方に危機感を表明。そのうえで、来年、発効50年を迎える核拡散防止条約(NPT)を踏まえ、核廃絶に向けた核軍縮の着実な履行を核保有国に求めた。 
 
 2017年に国連で採択された核兵器禁止条約は、いまだ発効していない。田上市長は、条約に批准していない日本政府の姿勢を「条約に背を向けている」と批判。早期の署名・批准を求めるとともに、唯一の戦争被爆国として世界におけるリーダーシップを発揮するよう政府に促した。 
 宣言の冒頭では、17歳で被爆し家族を失った山口カズ子さん(91)=長崎県長与(ながよ)町=の詩を引いて被爆の惨状と非核の願いを表現。「人の手」によって「人の上」に落とされる核兵器は「人の意志」で無くすことができるとし「私たちは、無力ではない」と市民社会に連帯を呼びかけた。 
 安倍首相はあいさつで、核軍縮について「核兵器国と非核兵器国との橋渡しに努め、国際社会の取り組みを主導する」と述べたが、条約には言及しなかった。 
 
 被爆者代表として「平和への誓い」を読み上げた山脇佳朗(よしろう)さん(85)は、全ての核保有国に核廃絶を働きかけるよう安倍首相に求め「それが、原爆で失われた命、後遺症に苦しむ被爆者に報いる道」だと訴えた。 
 
 式典には、核兵器保有国の8カ国のうちインド、パキスタンを除く6カ国を含めた66カ国の代表も参列。この日奉安された原爆死没者名簿には、この1年間で死亡が確認された3402人の名前が記され、総数は18万2601人になった。【今野悠貴】
 
 
「原爆の記憶」が破壊される! 安倍首相は長崎式典でまたコピペ、
佐世保市は「核廃絶は政治的中立侵す」と原爆写真展を拒否
LITERA 2019.08.09
 本日、長崎市でおこなわれた長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典。安倍首相は広島でおこなわれた式典で昨年とほとんど変わらない“心ない”スピーチをおこなったが、きょうの長崎でのスピーチは、その広島でのスピーチからわずかに構成を入れ替えた“ほぼコピペ”文章をただ読み上げただけ。無論、広島のときと同様、唯一の戦争被爆国でありながらいまだに署名・批准していない核兵器禁止条約にふれることはなかった
 
 だが、そんな安倍首相に対し、長崎市の田上富久市長が直球を投げた。田上市長は平和宣言で、安倍首相にこう訴えたのだ。
「日本政府に訴えます。日本はいま、核兵器禁止条約に背を向けています。唯一の戦争被爆国の責任として、一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准してください
 一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准して──。昨年の平和宣言で田上市長は「日本政府には、唯一の戦争被爆国として、核兵器禁止条約に賛同し、世界を非核化に導く道義的責任を果たすことを求めます」と述べたが、今年は「一刻も早く署名・批准を」と真正面から強く要求したのだ。
 
 しかも、その後も田上市長はかなり踏み込んだ。
「何よりも『戦争をしない』という決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持と、それを世界に広げるリーダーシップを発揮することを求めます
 これは事実上、9条に自衛隊を明記する改憲案を進めようとしている安倍首相に対する牽制だ。
 じつは、平和宣言の内容を議論する起草委員会では、今年、〈憲法9条を守るよう政府に訴えていくべきだとの意見が出ていた〉(朝日新聞7月29日付)という。平和宣言で9条に直接言及することは見送られたが、その思いが「『戦争をしない』という決意を込めた日本国憲法の平和の理念の堅持」というメッセージとなったというわけだ。
「核兵器禁止条約への署名、批准」はもちろんのこと、多大な戦争犠牲者を生んだ長崎からなされた事実上の「9条堅持」という要求は、あまりに当然のものだ。しかし、この平和宣言を突きつけられているあいだも、安倍首相はむっつりとした表情を浮かべていただけだった。
 
 核兵器廃絶と平和憲法の堅持の訴えから背を向け、むしろ「戦争ができる国」へと舵を切る安倍政権──。そして、こうした政権の姿勢は、確実にこの国を蝕みつづけている。
 実際、それを象徴するような出来事が起こっている。8月4日、長崎佐世保市では「原爆写真展」が開催されたのだが、その後援を市教育委員会が断ったのだ。
 そして、その断った理由が驚愕のものだった。この写真展では「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(ヒバクシャ国際署名)の活動も実施されたのだが、市教育委員会はそれが「政治的中立を侵す恐れがある」として問題視したのである。
「ヒバクシャ国際署名」は「後世の人びとが生き地獄を体験しないように、生きているうちに何としても核兵器のない世界を実現したい」という思いから、2016年4月に広島と長崎の被爆者たちがはじめた署名活動で、すべての国が核兵器を禁止し廃絶する条約を結ぶことを求めている。どう考えても、被爆者や市民が「核兵器のない世界を」「核兵器禁止条約に署名を」と求めることは当然の訴えだが、その活動を「政治的中立を侵す恐れがある」と言うのである。しかも、被爆地である長崎県の市教育委員会が、だ。
 
安倍政権になって「9条護憲」も政治的中立侵す、と公共施設から締め出し
 じつは佐世保市と市教育委員会は、2017年にもこの写真展の後援を依頼されたのだが、このときも署名活動と、写真展のチラシにあった「歓迎! 核兵器禁止条約」という表現に対し「政治的または宗教的中立性を侵すおそれがあるものに該当する」として後援を拒否していた(毎日新聞8月4日付)。「政治的または宗教的中立性を侵す」とは、さっぱり意味がわからないだろう。一体、核廃絶を訴えることの、どこが政治的だと言うのか。
 核廃絶を訴えることに対して、被爆地の教育委員会が「政治的中立性を侵す」と主張する異常──。だが、これこそがいま、この国を覆い尽くそうとしている考え方なのだ。
 
 実際、第二次安倍政権になって以降、9条護憲にかんする集会が公共施設の使用を拒否されたり、使用許可が取り消されたりするケースが相次いでいる。それどころか、さいたま市では「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」と詠んだ女性の俳句が秀句に選ばれたのに公民館だよりに掲載されなかったという問題まで発生。公民館側は「『九条守れ』というフレーズは、公民館の考えであると誤解を招く可能性がある」「公平中立であるべきとの観点から、掲載は好ましくないと判断した」などと主張した。この問題は裁判となり、一審・二審とも「句が掲載されると期待した女性の権利を侵害した」「人格的利益の侵害にあたる」とし、女性への慰謝料を認めている。
 
 行政側は「政治的中立性」「公平中立」などというが、公務員には憲法遵守が憲法によって義務づけられているというのに、それはまるで無視され、「憲法守れ」「平和を守れ」という主張は「政治的」だと判断されているのだ。
 それだけではない。ラジオDJなどの活動で知られるピーター・バラカン氏は、9条関連のTシャツを着て街を歩いていただけで警察官に職務質問されたといい、一方、自民党はホームページで「子どもたちを戦争に送るな」という教員らを「偏向教育」として密告させるフォームを設置したことも大問題になった。
 つまり、安倍政権は9条と憲法の平和主義を“危険”扱いして排除する流れをつくり出し、行政もそれに右に倣えで従うというかたちができあがってしまった。そして、その流れは「核廃絶」というメッセージにまで波及しているのである。
 
 そんな恐ろしい空気が流れる社会のなかで、安倍首相を前に、はっきりと「核兵器禁止条約への署名、批准」「平和憲法の堅持」を訴えた田上市長。この言葉を安倍首相が受け止めるとは思えないが、しかし、平和を訴えることをタブーにしようとする流れに、市民が「おかしい」と声をあげつづけていくしかないだろう。(編集部)