2023年9月7日木曜日

07- 集中企画・マイナ狂騒 (44)~(46)

 日刊ゲンダイの連載記事「集中企画・マイナ狂騒 (44)~(46)」を紹介します。
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集中企画・マイナ狂騒(44)
保険証廃止でコスト削減の“大甘試算”また発覚! 厚労省は利用登録者「減少」を想定せず
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 マイナ保険証の存在理由が揺らいでいる。相次ぐトラブルで信用ガタ落ちな上、マイナカードとは別に「資格情報のお知らせ」の携行も必要になり、使い勝手の悪さを露呈。残る「コスト削減」効果も厚労省の“楽観シナリオ”が崩れれば、成り立たなくなる。
 岸田首相は今月4日の会見で「今まではすべての加入者に保険証を発行してきたが、今後はマイナ保険証を持たない人に資格確認書を発行するので従来の健康保険証に比べ、発行コストや保険者の事務負担は減少する」とメリットを強調した。
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 厚労省は健康保険証廃止に伴うコスト削減について「ごく粗い試算」を実施。①マイナ保険証の利用登録率が65~70%と現状より進めば、100億~108億円削減 ②現状の52%のままなら76億~82億円の削減──としている。マイナ保険証が普及すればするほど、削減額が大きくなるということだ。
 ここで疑問が湧く。利用登録解除により、利用登録者が減る“悲観シナリオ”は存在しないのか
 厚労省は8日にマイナンバー情報総点検本部で〈一度登録した後も、マイナ保険証の利用登録の解除を可能とし、資格確認書を交付〉との方針を示した。厚労省は日刊ゲンダイに「もともとマイナ保険証の利用登録は任意である以上、登録を外したい方は解除できるようにすべきと考えました」(医療介護連携政策課・保険データ企画室)と説明している(14日付)。
「利用登録を解除しても、当面は資格確認書が送られてくるため、申請する手間もかからないし、解除後に再登録もできる。マイナ保険証の安全性や利便性など、利用登録するメリットが見えてくるまで、多くの人がいったん、登録を解除して様子をみようと考えてもおかしくありません」(埼玉県保険医協会の担当者)

いかにも日本的な組織の欠陥
 厚労省によると、解除にはシステム改修が必要だ。健康保険証は来年12月8日までに廃止される予定だが、「資格確認書の送付の準備もあるため、遅くとも来秋には解除できるようにする必要がある」(医療関係者)という。
 デジタル庁の公表データによると、今月20日時点でマイナ保険証の利用登録は6600万人に上るが、解除が可能になれば、3000万人、2000万人へと激減する可能性がある。その場合、コスト削減額も大幅に少なくなるはずだ。
 厚労省は登録者の減少シナリオを想定せず、岸田氏の「コストや事務負担は減少する」という会見の言葉に沿ってのみ試算したのだろう。まるで森友問題で官僚が安倍元首相の国会答弁に合わせ公文書を改ざんした姿を彷彿とさせる。無謀な開戦から変わらない日本的組織の欠陥だ。
 厚労省に利用登録率が下がるケースで試算がされていない理由を聞いたが「対応できる担当者が不在で答えられない」(国民健康保険課)とのことだった。
厚労省は利用登録が減少するシナリオについてもすみやかに試算を示し、フェアな議論をすべきです」(埼玉県保険医協会の担当者)
 都合の悪い数字は出さない──。そんな態度を続ければ、マイナ不信が募るだけ。利用登録率はみるみる急降下だ。


集中企画・マイナ狂騒(45)
マイナ保険証の削減コスト消失…それどころか5億円増!岸田首相“お手盛り説明”いよいよ怪しく
                          日刊ゲンダイ 2023/09/02
「従来の健康保険証に比べ、発行コストあるいは保険者の事務負担は減少する」「これは当然のことだと思っています」
 マイナ保険証のメリットについて、8月4日の総理会見でそう断言していた岸田首相。コスト削減をうたった強気発言の雲行きが怪しくなってきた。
 問題は、来秋に予定されている健康保険証の廃止に伴い、厚労省がマイナ保険証の所有者に送付するとしている「資格情報のお知らせ」だ。「お知らせ」はマイナ非対応の医療機関での保険診療に必要で、今のところ紙ベースでの送付が想定されている。
 厚労省は「お知らせ」を1枚10円と仮定して保険証廃止に伴う削減コストを試算。マイナ保険証の利用登録率が現状の52%のままで推移した場合、最大82億円のコスト削減効果があると結論付けた。24日の社会保障審議会医療保険部会で示した。
 これに対し、立憲民主党は31日の国対ヒアリングで独自試算を公表。「お知らせ」の形式について、厚労省が「マイナ保険証と一体で携帯すること」を想定しているため、「お知らせ」が紙ではなく、プラスチック製の健康保険証と同じようなカードで配られると仮定した。
 その分、立憲試算によると利用登録率が52%でも、約87.6億円のコスト増が見込まれる。厚労省試算がはじき出した「コスト削減効果」は消失、むしろ差し引き約5億円増だ

「カード2枚持ち」の可能性も浮上
 ヒアリングで山井和則衆院議員が「(お知らせは)10円の紙なのか、携帯するためにカードにする可能性があるのか」と問うと、厚労省の担当者は「携帯しやすいということであれば、利便性も(検討の)要素に入る」と、カード形式を否定しなかった。
 山井氏が改めてこう言う。
携帯するならカードが理にかなっていますし、カードなら紙より高くつくでしょう。岸田総理は保険証廃止に伴い『コスト減は当然』と説明しましたが、本当にそうなのでしょうか。当該発言があった4日の総理会見の後、『お知らせ』がマイナ保険証の保有者に配られる方針が明らかになりました。総理は会見の時、『お知らせ』の存在を知らなかったのかもしれませんが、今になってマイナ保険証と『お知らせ』の“2枚持ち”が浮上しています。総理は国民にカード2枚持ちになる可能性を説明し、『コスト減』の発言について修正すべきだと思います」
 コスト削減効果はなく、カードが2枚に増える──。保険証廃止を撤回すれば、こんなバカげた問題も万事解決である。


集中企画・マイナ狂騒(46)
デジタル庁予算は究極のムダ遣いに…マイナ広報費1.7億円増額要求、改修経費も“青天井”画策
                          日刊ゲンダイ 2023/09/05
 来年度予算の各省庁からの概算要求は8月31日に締め切られ、過去最大となる総額114兆円規模となる見通しだ。驚きなのがデジタル庁のマイナンバー関連の要求だ。
 デジタル庁は過去最大となる5819億円を要求。マイナンバー制度への不安の拡大を受け、安全性や利便性についての広報関連費用は、今年度の当初予算より1.7億円も増額し、6.8億円とした。
 河野デジタル相が昨年10月、来年秋の健康保険証廃止を突如打ち出すなど、マイナトラブルの元凶はデジタル庁だ。自らが不安を広げておいて、その払拭のためのPR費用を1.7億円も増やせと要求するのは、ほとんどマッチポンプだ。デジタル庁の取材を続けるジャーナリストの横田一氏が言う。
「広報費を使ってテレビなどで政府広報を流すのでしょう。しかし、テレビで『また、マイナトラブル発覚』というニュースを見た直後に、CMで『マイナカードは便利で安心・安全』と流れてきても、全く説得力はありません。むしろ、国民の神経を逆なですることになるでしょう。すべてのトラブルについて真の原因を突き止め、納得できる再発防止策を示すことが、唯一の“不安払拭策”です。それができない中、広報費に7億円近くも投入するのは究極の無駄遣いに他なりません」

システム改修などの経費は金額記載のない「事項要求」
 もう一つ、無駄遣いにつながりそうな項目がある。現在進められているマイナンバー情報総点検の結果、システム改修などに生じる経費については、金額記載のない「事項要求」としている
「総点検の途中とはいえ、ざっくり想定の上、要求額を示せそうですが、デジタル庁は事項要求とした。問題が深刻で新たな経費がどれくらい膨れ上がるか分からないということでしょう。また、マイナンバーの信頼性・利便性向上をうたえば、青天井に予算を獲得できるという官僚の“下心”があるかも知れません。いずれにせよ、マイナ関連に巨額の税金が投入される道筋がつくられたのは間違いありません」(霞が関関係者)
 それにしてもマイナンバーはカネ食い虫だ。
「マイナ保険証については、現行の健康保険証を存続させる方針を示せば、国民は引き続き、保険医療を受けられると安心するでしょう。不安を払拭するための広報費も不要になるし、巨額の費用をかけ、システムを改修する必要性も薄らぎます。保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する方針に固執することが、巨額の血税を浪費することにつながっている。マイナンバー関連のすべての政策について、一度、立ち止まって費用対効果を検証すべきです」(横田一氏)
 これ以上、マイナ浪費を続けさせてはならない。