2023年9月4日月曜日

大企業内部留保過去最高511兆円/「30年代半ばまでに最賃1500円」と首相

 財務省が1日に発表した法人企業統計によると、22年度の大企業の内部留保は511兆円と過去最高を更新しました。大企業の諸指標について、第2次安倍政権が発足した12年度と比較すると、賃金は9・1%増にとどまる一方、役員報酬は31・5%増、内部留保は53・3%増でした。配当金は2倍以上に増えています。大企業には賃上げの余力が十分にあります。
 ところで岸田首相31新しい資本主義実現会議で最低賃金を30年代半ばまでに全国加重平均1500円とする目標を示しました。これは余りにも悠長で、現在の最賃引き上げペースを減速する目標です。
 不要で有害な軍備拡張のためにはこの5年間で43兆円を注ぐと目の色を変える一方で、インフレに直撃されて食事にも事欠く庶民に対しては、何故そんな悠長なことが言えるのでしょうか。しんぶん赤旗の2つの記事を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大企業内部留保 過去最高511兆円 賃上げの余力十分 法人企業統計
                        しんぶん赤旗 2023年9月2日



 財務省が1日に発表した法人企業統計によると、2022年度の大企業(資本金10億円以上、金融・保険業含む)の内部留保は511・4兆円と年度調査としては過去最高を更新しました。前年度の484・3兆円から27・1兆円(5・6%)の増加でした。一方、大企業における労働者1人あたりの賃金は611・3万円で前年度に比べ3・5%の増加でした。ただ、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は3・8%上昇しているため、実質賃金は減少しました。

 大企業の諸指標について、第2次安倍晋三政権が発足した12年度と比較した増減をみると、賃金は9・1%増にとどまりました。一方、役員報酬は31・5%増、内部留保は53・3%増でした
 配当金は12年度の13・5兆円から22年度は29・7兆円へと2倍以上に増えています。また、現金・預金も12年度の46・3兆円から22年度は81・5兆円へと76%もの増加です。物価高騰で国民生活が苦しくなるもと、大企業には賃上げの余力が十分にあることになります。


首相「30年代半ばまでに最賃1500円」 遅すぎる目標 格差も放置
                        しんぶん赤旗 2023年9月2日
 岸田文雄首相が、8月31日の新しい資本主義実現会議で、最低賃金を2030年代半ばまでに全国加重平均1500円とする目標を示しました。現在の最賃引き上げペースを減速する遅すぎる目標です。地域間格差を放置し、必要とされる中小企業支援策もありません。
国際水準に遠く
 1500円の目標達成が2035年だとすれば、12年も先送りです。引き上げ率は年3・4%となり、来年の引き上げ額は34円程度。今年の最賃改定43円増(4・5%)を大きく下回ります。
 現状の最賃引き上げでも、物価高騰に追い付いていません。全労連の最低生計費調査で、最低限必要とされる1500円の実現まで12年もかけるのは遅すぎます。
 先進諸国の最賃は、物価高騰に対応する引き上げや円安の影響で、1500円を超え、2000円に迫りつつあります。岸田首相の目標では、いつまでも国際水準に追い付きません。
 岸田首相には地域間格差を是正する政策がないことも重大です。「全国加重平均」では、1500円になっても、実際に到達するのは7~8都府県にとどまります。
 最賃の地域間格差は人口流出の要因となっており、自治体や知事からも不満の声が相次いでいます。佐賀県は、人材を地元に残すための改定議論を地方最賃審議会に求め、目安に8円上積みし、最賃額最下位脱出を図りました。
 茨城県知事は、2円上積みした最賃改定でも不満だと表明し、「近隣他県との格差是正に配慮されたものとは考えられません」と談話を発表しています。
中小の要求に背
 中央最賃審議会は今年、赤字法人でも賃上げできる施策を政府に求めました。これは、現行の業務改善助成金が、パソコン導入など設備投資を賃上げとセットで行うことを助成の要件としており、多くの赤字中小企業で利用できないからです。
 ところが、岸田首相が打ち出した中小企業支援は、投資促進策です。従来と代わり映えしません。
 中小企業が求めているのは、社会保険の事業主負担の軽減措置です。社会保険は、赤字で法人税を支払わない中小企業でも負担するからです。地方最賃審議会からも、社会保険負担軽減の政府要望が増えています。
 岸田首相は、最賃近傍の労働者や地方、中小企業の声を聞き流すだけです。
 全労連は、全国一律制度への法改正と、5年以内に1500円以上を実現する積極策を求めています。
 地域間格差の是正とセットにした緊急の大幅引き上げ、そのための実効ある中小企業支援が必要です。   (田代正則)