日刊ゲンダイのシリーズ「集中企画・マイナ狂騒(47)~(49)」を紹介します。
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集中企画・マイナ狂騒(47)
河野デジタル相どの口が?「デジタル化は温かく優しい社会をつくるため」の笑止
日刊ゲンダイ 2023/09/06
「デジタル化は温かく優しい社会をつくるためのひとつの手段」──。
3日に鹿児島市内で行われた講演で、そう説明した河野太郎デジタル相。マイナ保険証を念頭に「安心して(マイナ)カードを持って、日頃から使ってもらえるとありがたい」と呼びかけた。南日本新聞朝刊(4日付)が報じた。
どの口が言うのか。河野大臣がゴリ押しする「デジタル化」は、温かくもなければ優しくもない。むしろ、高齢者や障害者などの社会的弱者に冷たい。マイナ保険証への移行、そして来秋に予定されている健康保険証の廃止が、どれほど混乱を来していることか。
そもそも、マイナ保険証は、有効期限前に保険組合などから送られてくる従来の保険証と異なり、5年に1回更新手続きをしなければならない。高齢者だろうが、障害者だろうが、更新時には原則、役所窓口に出向かなければならない。
厚労省は、介護保険や障害福祉のサービスを受けているマイナ保険証の保有者を「要配慮者」として、資格確認書との「2枚持ち」を認めている。ただし、要配慮者の全員が資格確認書を交付される想定かといえば、そうでもない。
高齢者や障害者に負担を強いる社会は温かく優しいか
厚労省が先月24日の「社会保障審議会医療保険部会」で示した保険証廃止に伴うコスト削減効果の試算によれば、要配慮者のうち「半数」に資格確認書が交付されることが前提になっている。残り半数について資格確認書の交付は想定されていないが、立憲民主党の国対ヒアリングで厚労省は「試算と制度設計は分けて考える必要がある」と強弁していた。
国対ヒアリングに参加している山井和則衆院議員がこう言う。
「問題なのは、高齢者も障害者も、マイナ保険証と資格確認書はいずれも申請が原則という点です。身体の不自由な人にとって『原則申請』が強いられる社会は、『温かく優しい』と言えるでしょうか。そもそも、マイナ保険証と資格確認書の『2枚持ち』の可能性があること自体、デジタル化の趣旨からすれば、おかしな話です」
要配慮者がマイナ保険証の登録を解除して資格確認書を申請したとしても、更新時に申請なしで手元に届く「職権交付」がいつまで適用されるのかは不明だ。
「厚労省は『当分の間』は『職権交付』を続けるとしていますが、具体的な期間はハッキリしていません」(山井議員)
高齢者や障害者に負担を強いて、何が「温かく優しい社会」だ。
集中企画・マイナ狂騒(48)
マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前、今後どこまで下がるのか
日刊ゲンダイ 2023/09/12
これほど嫌われるカードはいまだかつてあったのだろうか──。相次ぐトラブルで不信や不安が広がるマイナ保険証。医療機関や薬局でほとんど利用されていない実態が判明した。
マイナカード保有者がマイナ保険証の利用登録を申し込めば、7500円分のマイナポイントがもらえる。その付与期限が今月末に迫り、利用登録件数は直近1カ月で約120万件増えた。
ところが、マイナ保険証の利用率はジリ貧だ。厚労省の発表データによると、全国の利用率はオンライン資格確認が義務化された4月に3月の2.3%から6.3%へと跳ね上がった後、5月6.0%、6月5.6%、7月5.0%と3カ月連続で下落している。
いったん、マイナ保険証での受け付けを始めてみたものの、あまりに使い勝手が悪く、利用を避ける医療機関が続出しているということだ。
オンライン資格確認「業務が増えた」92%
埼玉県保険医協会が8月1日から31日にかけて開業医会員に調査(回答292件)を行ったところ、マイナ保険証により受け付け業務が増えたのはナント92%に上った。
〈とにかく手間がかかる〉〈エラー時とてもたいへん。レセプト会社に電話がつながらない〉〈紙カルテに手書きで保険証情報をうつすようになり業務量が増えた〉など切実な声が寄せられた。
「健康保険証を存続すべき」と回答した開業医は、5月調査の85%から96%へと増え、100%に迫っている。埼玉県保険医協会の担当者が言う。
「6月以降、マイナ保険証を巡るトラブルが次々と発覚し、連日、報じられました。5月調査より、一気に医療機関のマイナ離れが進んだ印象です。利用率は支持率のようなもの。利用率5%割れが目前でも、来年秋の保険証廃止を見直さず、マイナ保険証を推進するつもりなのでしょうか」
この先、利用率はさらに下落する可能性もある。
「ポイント付与期間が終われば、マイナ保険証の利用登録は伸びなくなるでしょう。それどころか、今後、利用登録の解除が可能になるため、利用登録数はむしろ減るのではないか。利用率が4%、3%へと低下してもおかしくありません」(医療関係者)
■厚労省も危機感
7日の立憲民主党のヒアリングで厚労省の担当者は、利用率の低下に危機感を示しつつも、来年秋までの利用率の目標は「設定していない」と答えた。
内閣支持率が5%なら、首相は退陣を余儀なくされるはずだ。利用率5%割れでも、マイナ保険証は居座るつもりなのか。
集中企画・マイナ狂騒(49)
マイナ保険証が突き付ける「弱者切り捨て」の残酷…認知症患者に提示と本人確認は“鬼門”
日刊ゲンダイDIGITAL 2023/9/16
「認知症の方が尊厳、希望を持って暮らすことができる社会をつくることが喫緊の課題」─。内閣改造後の会見で、こう強調した岸田首相。聞こえがいい言葉を並べたが、来秋に予定されている健康保険証の廃止やマイナ保険証の普及をめぐり、認知症患者や家族から不安の声が上がっている。
14日開かれた立憲民主党の国対ヒアリングに、認知症の啓発活動などを行う公益社団法人「認知症の人と家族の会」から鎌田松代代表理事と芦野正憲理事が出席。マイナ保険証の申請や更新の手続きによって認知症患者だけでなく、その家族や介護施設が大きな負担を強いられると訴えた。
新しい制度やサービスなどに慣れることが難しい認知症患者にとって、診療のたびに提示と本人確認が求められるマイナ保険証は“鬼門”だ。
ヒアリングでは「社会ではバリアフリーの取り組みが進んでいるが、(マイナ保険証が)新しいバリアになっていると感じている」(芦野理事)、「なぜ(マイナ保険証に)変えていかなければいけないのか、きちんと説明して欲しい」(鎌田代表理事)との指摘が相次いだ。改めて鎌田代表理事に聞いた。
せめて選択制を
「マイナ保険証によって被保険者の医療情報が一元化されるのはメリットだと思いますが、特別養護老人ホームなどでの看護や介護経験に照らせば、そもそも認知症の方にマイナ保険証を持たせることは困難です。写真を撮ったり、申請書類を用意したりすること自体、極めて大変。手伝う家族にも、遠距離介護や働いている人がおり、大きな負担がかかります。岸田首相が『認知症の方が尊厳、希望を持って暮らすことができる社会をつくる』とおっしゃったことはうれしいですが、言っていることとやっていることが逆だと感じます。『尊厳』と言うのであれば、マイナ保険証の普及を急ぐのではなく、紙の保険証を残して選択制にして欲しい」
マイナ保険証に不安を覚えているのは、障害者も同じ。障害者支援団体もヒアリングで「通院ひとつとっても、(障害者本人が)できるようになるまで時間がかかる」「紙の保険証をぜひ残して欲しい」と訴えていた。
社会的弱者の声に聞く耳ナシの岸田首相に、「あすはきょうより良くなる、誰もがそう思える国づくり」なんて無理だ。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。