2023年9月3日日曜日

03- 関東大震災100年 朝鮮人犠牲者追悼式典 過ち繰り返さず歴史の直視を

 100年前の関東大震災時のデマにより虐殺された朝鮮人犠牲者らを追悼する式典が1日、東京都墨田区の横網町公園で行われました。炎天の下、会場いっぱいの人が集まり、政府による真相究明と謝罪を求めました。
 小池百合子都知事は1日の記者会見で、朝鮮人犠牲者を追悼する式典に追悼を今年も送付なかったことを問われのに対し、(同日の)慰霊大法要において先の関東大震災および大戦で犠牲となったすべての方々への哀悼の意を表している」と例年通りの説明をしました。しかし、災害で亡くなった人の死と、虐殺された人の死を一つにくくって「追悼」するなどあり得ないことで理解のしようもありません。しんぶん赤旗が伝えました。
 併せて朝鮮新報の記事「〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉追悼事業実行委らが会見」を紹介します。
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関東大震災100年 朝鮮人犠牲者追悼式典 過ち繰り返さず歴史の直視を
                        しんぶん赤旗 2023年9月2日
 100年前の関東大震災時のデマにより虐殺された朝鮮人犠牲者らを追悼する式典が1日、東京都墨田区の横網町公園で行われました。「悲劇を繰り返さないために、歴史の直視を」。炎天の下、会場いっぱいの人が集まり、政府による真相究明と謝罪を求めました。同式典実行委員会の主催です。



(写真)関東大震災100周年の朝鮮人犠牲者追悼式典で献花する人たち=1日、東京都墨田区


 1923年の震災後、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などの流言が広まり、軍隊や民衆などによって朝鮮人や中国人、日本人社会主義者らが虐殺されました。朝鮮人の犠牲者は6000人超と言われます
 式典で、実行委員長で日朝協会東京都連合会の宮川泰彦会長は「過ちを繰り返さないため、語り継ぐことが私たちの責務です」とあいさつしました。
関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会」の田中正敬事務局長は、日本政府が事実を認めず、小池百合子都知事が同式典への追悼文を拒んでいることを批判。排外主義が広がりつつあることに危機感を示し、「過去を直視し、責任を問い続けたい」と訴えました。
 在日本朝鮮人総連合会東京都本部の康景翔(カン・ギョンイク)国際統一局長は、日本政府の姿勢は犠牲者を「二度、三度とあやめているに等しい」「清算されなかった罪はくり返される」。「真の未来志向で平和をきり開き、負の連鎖を断ち切ろう」とのべました。

 舞踊家の金順子(キム・スンジャ)さんが鎮魂の舞を披露しました。

 作家の中沢けいさんは「次の100年、民族と民族とがお互いに尊重される時代となるように」と願いを語り、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんは「加害の歴史に目を背ける権力者の姿勢は、奪われた命への冒とくであり、今を生きる命をも軽視している」と話しました。小説家の中島京子さんがメッセージを寄せました。
 日本共産党の里吉ゆみ、原純子、原田あきらの各都議も参加し、里吉都議があいさつしました。


朝鮮人虐殺の史実に触れず 関東大震災 小池都知事が会見
                        しんぶん赤旗 2023年9月2日
 小池百合子東京都知事は1日の記者会見で、193年の関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典に追悼の辞を今年も送付なかったことを問われのに対し、虐殺の史実に触れませんでした。
 式典は、震災の混乱の中で「朝鮮人が襲ってくる」などのデマが流され、軍隊、官憲、武装した市民によって虐殺された多数の朝鮮人ら犠牲者を追悼するため、実行委員会が墨田区横網町公園で毎年開いているもの
 追悼式典には74年以降、就任1年目の小池知事を含む歴代の知事が毎年追悼文を送付してきました。小池知事は2017年以降、一方的に送付を取りやめました
 小池知事は、会見で追悼式典と虐殺の歴史について問われたのに対し「(同日の)慰霊大法要において先の関東大震災および大戦で犠牲となったすべての方々への哀悼の意を表している」と具体的に語りませんでした。
 実行委員会は8月19日に災害で亡くなった人の死と、殺された人の死を一つにくくって『追悼』することはできない」と声明を発表。日本共産党都議団は22の知事あての申し入れで、知事の姿勢は関東大震災における朝鮮人虐殺を明白な史実と認めず、歴史修正主義にくみするものだと批判しました。


〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉追悼事業実行委らが会見
                         朝鮮新報 2023年09月02日
迫害の歴史に終止符を
8月30日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で、関東大震災朝鮮人虐殺と関連し会見が行われた。この日の会見は、関東大震災100年朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の行動実行委員会(以下、責任追及と行動実行委)、関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年追悼大会実行委員会(以下、追悼大会実行委)の共催で行われた。
責任追及と行動実行委の金哲秀さん(朝鮮人強制連行真相調査団事務局次長)藤本泰成さん(フォーラム平和・人権・環境共同代表)追悼大会実行委の林伯耀さん、田中宏さんがそれぞれ参加。9月1日に震災時の大虐殺から100年を迎え、代表らは「日本政府が虐殺の事実を認め、謝罪および真相究明を行うことが、迫害の歴史に終止符をうつことになる」などと訴えた。

この日の会見に臨んだ藤本泰成さんは、「防災の日として広く知られる9月1日は、多くの朝鮮人が軍隊、警察、民間人によって虐殺された日」だと発言。同氏は、2008年に内閣府中央防災会議が発表した報告書で「これほどの規模で人為的な殺傷行為を誘発した例は日本災害史上確認できない」とした点に言及したうえで、大震災当時、日本が植民地支配への朝鮮民衆の抵抗に直面していたことなど、「植民地支配から引き出されるさまざまな要因が絡み見合って引き起こされた大虐殺である」と強調した。

また金哲秀さんは、発言冒頭、「虐殺は決して震災の混乱の中で偶発的に起こった事件ではない」と指摘。その背景には、「日本が19世紀後半から朝鮮で行った植民地征服戦争とそこで繰り返されてきた朝鮮人虐殺がある」と日本政府の加害性を改めて糾弾しながら、こう続けた。
「それらの指揮をとった者たちが震災時に政府や軍隊、警察の要職につき、朝鮮人が暴動を起こしたという予断を持って戒厳令を発布した。また朝鮮での虐殺、迫害経験のある軍隊、軍人たちが戒厳令下で虐殺をおこなった。その過程で朝鮮人が『暴徒』『不逞』だとの認識が広まり、日本民衆が虐殺を行った。官民一体の虐殺は、朝鮮侵略と植民地支配がもたらしたものだ」(金さん)
金さんはまた、生存者や遺族が苦しみの中で生き、在日朝鮮人社会にも深いトラウマを残す関東大震災時の朝鮮人虐殺から100年を迎えた日本社会の現状を問いながら、朝鮮への制裁を背景にした朝鮮学校への迫害、在日朝鮮人を標的としたヘイトスピーチ、ウトロ放火事件、総聯中央銃撃事件など直接的な暴力が後を絶たないことに触れた。そのうえで、「日本政府や自治体は100年間隠ぺいしてきた虐殺の事実を認め、謝罪することで、重大な過ちを再発させないという強い決意を内外に示すべきだ。これが真の追悼になり、在日朝鮮人への差別、迫害の歴史に終止符をうつきっかけになる」と声を大にして訴えた。

一方、追悼大会実行委を代表し参加した、林伯耀さんは「100年前の大震災下、日本の軍隊、警察、自警団、民衆によって朝朝人兄弟と中国人同胞が虐殺された。これは過去のことではなく、そのような状況がまた現実になろうとしている」と語る。
100年前の虐殺を主導した日本政府は言い逃れできない法的、政治的、歴史的、道義的な罪と責任がある。真相究明し、事実を認め、国家としての責任があることを証明し犠牲者と遺族に謝罪し賠償しなければならない」(林さん)

また田中宏さんは、100年前、当時日本に留学していた朝鮮人学生がつづった文章を紹介した。同文章には「日本の教育は人間となる前に国民になれと教えている。朝鮮人を殺すことをもって、日本国家に対する大いなる功績を行っているようにみえる。1919年の独立運動、水原事件、間島事件、関東大震災虐殺の一連のものは、同様の事件に映る」などの記述があったという。
同氏は、これらを踏まえると、「(虐殺は)一過性の事件ではなく、長い歴史的な重なりがあるもの」だと改めて強調。また1924年5月、中国人について賠償金の支払いを決定した政府の記録に言及したうえで、「これは国家としての責任を認めていたことを意味する」として、植民地支配されていた朝鮮人を含む犠牲者らの賠償が実行されるべきだと話した。

この日、海外の記者からは、日本政府が虐殺の記録がないと言い逃れていることや、それへの対応策はないのかなどと、辛辣な質問が相次いだ