2023年9月2日土曜日

共産党大阪府委員会が 大阪・関西万博中止を求める声明

 共産党大阪府委員会は30日に記者会見し、25年4月開催予定の大阪・関西万博について、「今、事業を止めないと、命と安全が守られず、多大な負担を国民に押しつけることになる」として、万博中止を求める声明を発表しました。
 カジノ・万博問題プロジェクトチーム責任者のたつみコータロー氏は、参加国のパビリオン建設が遅れる中、万博協会が「24年からの建設労働者の残業規制の除外」を政府に要請したと報じられるなど、政府や府・市の進め方は破綻していると批判し、「現行法を守れば建設を進められないということだ。遅れを取り戻すために労働者の命と安全を犠牲にする危険があり、万博のテーマにもふさわしくない」と強調し、万博を口実に夢洲開発をカジノと一体で推進してきた維新、自民、公明と財界・大企業の責任は重大だと批判ました。
 声明の全文を含めてしんぶん赤旗が報じました。
 関連して日刊ゲンダイが「維新・馬場代表『大阪の責任ではない』の他人事感 国会で万博誘致を求めたのをお忘れ?」という記事を出していますので併せて紹介します。
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大阪・関西万博中止を 労働者の命脅かす 膨れる費用 共産党府委員会が声明
                       しんぶん赤旗 2023年8月31日
たつみ衆院予定候補ら会見
 日本共産党大阪府委員会は30日、大阪市内で記者会見し、2025年4月開催予定の大阪・関西万博について、「今、事業を止めないと、命と安全が守られず、多大な負担を国民に押しつけることになる」として、万博中止を求める声明を発表しました。たつみコータロー元参院議員・衆院近畿比例予定候補、柳利昭党府委員長が出席。渡部結党府副委員長が司会を務めました。

 党府委員会カジノ・万博問題プロジェクトチーム責任者の、たつみ氏が声明内容を説明。参加国のパビリオン建設が遅れる中、日本国際博覧会協会(万博協会)が「24年からの建設労働者の残業規制の除外」を政府に要請したと報じられるなど、政府や府・市の進め方は破綻していると批判。「現行法を守れば建設を進められないということだ。遅れを取り戻すために労働者の命と安全を犠牲にする危険があり、万博のテーマにもふさわしくない」と強調しました。
 物価高が国民の生活を圧迫する一方、資材費高騰、人手不足などで大幅に膨れ上がる会場建設費・インフラ整備費等の増加負担を国民に強いる問題や、土壌汚染・地盤沈下、災害時の避難経路の問題など万博会場の夢洲(ゆめしま)の危険性や計画の無謀さについても指摘しました。
 万博を口実に夢洲開発をカジノと一体で推進してきた維新、自民、公明と財界・大企業の責任は重大だと批判。大阪経済の底上げには、大型開発や一時の「イベント」ではなく、中小企業予算を抜本的に増やし、賃上げで府民所得を向上させることが必要だと訴えました。
 大阪・関西万博 計画では2025年4月13日から10月13日まで、大阪市此花(このはな)区の人工島・夢洲(ゆめしま)で開催。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。維新の大阪府・大阪市政が財界と一体になってカジノを中核とする統合型リゾート(IR)誘致とセットで推進。万博会場をIR予定地の夢洲にし、当初はIRの先行開業や万博開催と同時開業をめざすなど常に「カジノ先にありき」の夢洲開発計画となってきました


大阪・関西万博の中止を求める声明
                       しんぶん赤旗 2023年8月31日
 日本共産党大阪府委員会が30日発表した「2025年大阪・関西万博の中止を求める声明」の全文は次の通りです。

2025年大阪・関西万博の中止を求める声明
                             2023年8月30日
                            日本共産党大阪府委員会
 私たちは2025年4月開催予定の大阪・関西万博について、開催地である人工島・夢洲(ゆめしま)に含まれる汚染物質の問題、万博を口実に進める夢洲開発による国民負担増などの重大な問題を指摘し、「夢洲開催」の中止を含む抜本的な見直しを求めてきました
 ところが国、大阪府・市はこうした指摘には一切耳を傾けず、事業を推し進めてきました。今、参加国のパビリオン建設の遅れ、会場建設費やインフラ整備費等の大幅な上振れによる国民負担増、土壌汚染が広がり地盤沈下が起こる危険性など、問題は解決されるどころか深刻さを増しています。
 日本共産党大阪府委員会は、命と安全が守られず多大な負担を国民に押し付ける、大阪・関西万博の中止を求めるものです。

命と安全をないがしろにした開催は認められない
 万博開催が迫るなか、パビリオンを独自でデザインし建設する「タイプA」約50カ国のうち、基本計画書が提出されたのは数カ国のみです。通常なら危機的な状況であり開催不能です。
 そんななか、政府や大阪府は通常ではないやり方で強行しようとしています。日本国際博覧会協会(万博協会)は、2024年4月から始まる建設業界への時間外労働の上限規制を、万博建設には適用しないよう政府に求めたと報じられました。しかし当規制は労働者の命と安全を守る目的で導入されるものであり、万博開催を口実に適用除外することなど絶対に許されません。
 経済産業省は、政府が全額出資する「日本貿易保険」を活用し、参加国からパビリオンの建設費が支払われない場合、通常の3分の1程度の保険料で代金の90%から100%を建設業者に補償する「優遇」制度を創設しました。不払いがあれば国民に負担させるものであり異常です。大阪府・市もパビリオンの建築基準法に基づく許可手続きなどを大幅に簡素化しようとしています。現行法を守れば建設を進められず、代金支払いが不確定でも建設を始めざるを得ない。このような事業は破綻しています。
 工期が迫るなかこのまま万博を強行すれば、労働時間の上限規制が適用されたとしても、建設の遅れを取り戻すために違法な「サービス残業」や長時間労働を労働者に強いる危険性があります。2021年の東京オリンピック・パラリンピックでは、新国立競技場建設に携わった現場監督が過労自殺しました。また工期を前倒しにした新名神の工事でも死亡事故が相次いでいます。このままでは「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマにもっともふさわしくない万博となります。労働者の命と安全を犠牲にして突き進む、そんな国、大阪であることを世界にアピールするわけにはいきません。

膨れ上がる建設費
 国、大阪府・市、経済界が同等で負担する万博会場の建設費は、当初の1・5倍の1850億円に膨張しました。資材費高騰、人手不足、計画の大幅な遅れが建設費を膨らませています。政府の「日本館」は応札がなく、随意契約で当初の予定価格を上回る契約となりました。
 大阪メトロ中央線延伸部の整備費も軟弱地盤対策で約100億円の追加支出です。淀川左岸線2期工事など、万博開催に合わせたインフラ等の工事費も軒並み膨れ上がり、4000億円以上も上振れして総額7500億円となっており、これらとめどない支出の増加はすべて国民の負担となります。「想定が甘かった」で済まされる問題ではありません。府民が物価高で日々の生活にあえぐなか、このような公金の使い方には合意も道理もありません。今、事業を止めないとさらなる負担を国民が強いられることになります。

危険な夢洲で開催
 そもそも夢洲に大規模集客施設を建設すること自体が無謀であり、事業そのものが立ち行かない大きな要因です。
 夢洲の土壌にはダイオキシンやヒ素、PCBなどが含まれ、地震などの際には汚染物質が染み出すおそれがあります。災害時、夢洲へのルートである夢舞大橋と夢咲トンネルが閉鎖されれば、1日の来場者数とされる20万人から30万人が避難できない危険性もあります。夢洲では2018年の台風21号でコンテナが強風で飛ばされるなど甚大な被害が出ました。短期間の万博においてパビリオン等建造物への被害が危惧されます。
 カジノ予定地には軟弱地盤の対策費用として大阪市が788億円もの支出を決めています。同様に万博後の敷地でも同額程度の費用が必要です。今後地盤沈下がおこれば、雪だるま式に市民の負担が増えていくのは目に見えています。
 維新の会は「夢洲は負の遺産」といいますが、建設残土や廃棄物も受け入れる貴重な最終処分場です。ここで大型開発を進めることこそ、際限ない負担を市民に押し付けることになります。

カジノと一体で財界と維新、自民、公明が推進
 万博開催地を夢洲とした背景にはカジノ建設の推進がありました。当初万博の予定地としては上がっていなかった夢洲を、松井一郎知事(当時)がトップダウンで予定地と決め、カジノ誘致とともに推し進めました。「国策」として進める万博を口実にインフラ整備などを進めさせ、万博客をカジノに呼び込むことを狙ったのです。万博誘致委員会のオフィシャルパートナーになった米国のカジノ事業者が万博開催決定の際、「IRを世界に紹介するプラットフォームになる」と歓迎声明を出したほどでした。
 また財界、大企業は「関西経済の起爆剤」といいながら、「大阪・関西万博の開催に向けた協力」などの項目を含む包括連携協定を大阪府・市と締結し、維新政治とともに夢洲開発にのめり込んでいます大手新聞社も同協定を結び、「公平・中立」な報道が保たれない異常な状態です。大阪府議会、大阪市議会においては維新の会だけではなく、自民党や公明党も夢洲開発を推進。膨れ上がる万博予算にもことごとく賛成してきた責任は重大です。

大阪経済の底上げのカギは府民のふところと中小企業の応援
 経済、景気が良くなると万博に期待する人もいます。しかし日本経済の最大の弱点は実質賃金が下がり続けていることです。経済の好循環のためには大企業にたまり続けている内部留保を賃上げなどで経済に還流させることが重要です。
 大阪では維新政治のもと、実質賃金は44万6千円減少し、全国より7万5千円も多く減りました。府のものづくり予算は4分の1に減らされ、商店街支援(小売商業関連)予算は25分の1まで減額されました。
 一方で大企業は莫大(ばくだい)な利益を得ています。全大阪労働組合総連合によると2021年度、在阪大企業の内部留保は46兆7337億円に達しました。わずか1・88%の取り崩しで月額3万円の賃上げが可能であり、経済効果は4857億円、雇用創出は2万8936人です。
 また気候危機対策「グリーン革命」を本気で進めることで、くらしと経済を向上させることができます。大阪商工団体連合会によると大阪府下の中小業者を対象に、省エネ機械・設備の導入や断熱住宅への改修に対する補助制度を進めれば、設備投資が促進されることと、光熱費の削減分が消費に回ることで、2050年の経済波及効果は1兆円超、雇用は約10万人増となります。
「箱もの」「インバウンド頼み」の行政では大阪経済を底上げすることはできません。大阪経済の持続的な発展に必要なのは大型開発や一時の「イベント」ではなく、削減された中小企業予算を抜本的に増やし、賃上げで全国よりも落ち込んだ府民所得の向上を実現することです。

万博の理念にも背く
 直近の世論調査では6割以上が万博に「関心がない」と答えており、「何のための万博か」という声も府民から上がっています。万博の理念は地球環境保全や持続可能な開発目標(SDGs)の達成とも深く結びついています。夢洲を拠点に巨大開発をすすめる大阪・関西万博はその理念にも背を向けるものであり、中止しかありません。


維新・馬場代表「大阪の責任ではない」の他人事感 国会で万博誘致を求めたのをお忘れ?
                          日刊ゲンダイ 2023/08/31
 パビリオン建設の遅れなどが問題視されている2025年大阪・関西万博をめぐり、日本維新の会の馬場伸幸代表(58)が30日の党会合で「大阪の責任とかそういうことではない」などと発言したとして、SNS上で《無責任だ》《大阪で誘致したくせに》などと批判の声が出ている。
 発言を報じた朝日新聞によると、馬場氏は大阪・関西万博について、「かなり危ないんじゃないか、やれないんじゃないかというような報道もあった。私の経験では、1970年の大阪万博では開会直後に会場に行ったらまだいろんなパビリオンが工事中という状態だった」「その国と日本の建設業などのルールが違うこともあって、準備に時間がかかっていることも影響しているのではないか。万博というのは国の行事、国のイベントなので、(遅れが)大阪の責任とかそういうことではなしに、国を挙げてやっている」などと語ったという。
 大阪・関西万博の正式名称は「2025年日本国際博覧会」。このため、馬場氏は「国の行事」「国のイベント」と発言したのだろう。だが、過去の国会議事録をみると、もともと万博の誘致を強く求めていたのは他ならぬ維新だ。

■党を挙げて「全力で取り組んでいく」
 例えば2016年1月27日の衆院本会議で、馬場氏はこう発言していた。
「おおさか維新の会の馬場伸幸です。2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック大会に加えて、2025年に予定されている国際博覧会、いわゆる万博を大阪に誘致すべきではありませんか。総理の御見解をお伺いします」
 これに対し、当時の安倍首相はこう答弁。
「現在、大阪府が2025年の万博の誘致に取り組んでいると承知しております。昨年大阪府が開催した検討会においては、地元の機運の醸成やコンセプトづくり等が課題として挙げられています。(略)政府としては、今後、大阪府の検討状況をよくお伺いしながら、計画の実現性を見きわめていきたいと考えています」
 やはり、もともと万博開催を望んでいたのは大阪府や維新であり、政府=国はあくまで地元の意向を踏まえて、というスタンスだったわけだ。そして、馬場氏は昨年1月20日の衆院本会議ではこうも言っていた。
「日本維新の会は、地元自治体や経済界などと手を携え、大阪・関西万博の成功に向けて全力で取り組んでいくことをお誓いし、質問を終わります」
 万博の成功に向け、党を挙げて「全力で取り組んでいく」ことを国会で誓いながら、今さら他人事のように「国の行事」「国のイベント」「大阪に責任はない」と言い放つのだから、ネット上で怒りの声が出るのも無理はない。
《万博誘致に成功したのは維新のおかげみたいな話をしていなかったっけ》
《万博は「大阪経済の起爆剤」、次のカジノは目玉政策と維新議員は言いふらしていたよ》
《うまくいけば自分の手柄、うまくいかないと他人の責任。維新の体質だね》

 馬場氏は万博誘致を国に求めた7年半前の発言、気持ちを思い出し、自ら先頭に立って全力で成功に向けて取り組んでほしい。