2023年9月30日土曜日

30- 米政府がウクライナ軍に強制した「反転攻勢」は失敗

 米国とNATOが計画したウクライナにおける6月からの反転攻勢は、9月だけでウクライナ兵が1万7千人戦死し、6月からでは7万5500人に達するということです。
 それは、米国NATOウクライナ軍に「バンザイ突撃」を繰り返させ、ウクライナ人全体に「総玉砕」を命じている結果と言われています
 西側は「悪いのはロシアで、ウクライナは正義の戦いをしている」という見方なのですが、それは兎も角として、開戦以来ウクライナ軍の死者数が50万人に上ることを米国も認めているということです。

 ウクライナのトップであるゼレンスキーは米国の主張に異を唱えませんが、一方は日々自国民の膨大な尊い命を失っているのに対して、他方はひたすら武器を供給して督戦するのみなのにです。
 おかしくはないでしょうか。なぜ誰も「停戦」を提案しないのでしょうか。
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米政府がウクライナ軍に強制した「反転攻勢」は失敗、露軍は大攻勢を準備の噂
                          櫻井ジャーナル 2023.09.30
 すでにウクライナ軍は武器弾薬も兵士も不足、ロシア軍に勝てないことを西側の有力メディアも認めている。そうした中、ウクライナ軍はアメリカ軍のP-8ポセイドンと連携、セバストポリを「スカルプ(イギリス版の名称はストーム・シャドウ)」とS-200でロシア黒海艦隊の「司令部」を攻撃したのだが、本ブログでも繰り返し書いているように、そこには保守要員と警備員しかいない。指揮、統制、通信、コンピュータに関する部門は全てZKP(予備司令部)の地下にあり、その場所を特定するのも攻撃するのも難しいとされている。
 ところが、ウクライナ軍の特殊部隊は9月25日、ロシア黒海艦隊のビクトル・ソコロフ司令官と33名の将校を殺害したと発表した。そのソコロフ司令官は発表の翌日、ロシア軍のリモート会議に登場し、ウクライナ側の情報が間違っていることを示した。その情報は西側の情報機関が提供していたはずで、その西側情報機関も赤っ恥をかいた形だ。

 その会議でロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、9月だけで戦死したウクライナ兵は1万7000人に達すると発表した。6月4日にウクライナ軍がアメリカ/NATOの命令で始めた「反転攻勢」は破滅的な失敗に終わり、ロシア政府の推計によると、ウクライナ軍の戦死者数は7万5500人に達する。アメリカ側の推計でも、昨年2月24日にロシア軍がウクライナに対するミサイル攻撃を始めてから約50万人のウクライナ兵が戦死したという。ちなみに、ロシア側の戦死者はその1割、つまり5万人程度だと考えられている。
 これだけの犠牲を払っているにもかかわらず、ウクライナ軍は前に進めていない。ロシアが構築した「スロビキン防衛線」を突破できていないのだ。
 すでにアメリカ/NATOの兵器庫は空で、生産力はロシアの半分だとも言われている。アメリカやイギリスがウクライナへ劣化ウラン弾やクラスター爆弾といった問題のある兵器を供給した理由のひとつはそこにあるともいう。
 アメリカ/NATOはウクライナ軍に「バンザイ突撃」を繰り返させ、ウクライナ人全体に「総玉砕」を命じている。そこで必死に兵員を集めているのだが、必要な人数の約半数しか集められず、訓練もできていないという。ウクライナ国内で訓練できないため複数の国に分けられているという問題もある。強引に兵士を集めても社会が機能しなくなる。
 ここにきてロシア政府は旧ソ連圏諸国を除く国々にガソリンやディーゼルを輸出することを禁止、注目されている。国内で不足しているとされているのだが、元CIA分析官のラリー・ジョンソンはロシア軍が大規模な軍事作戦を計画、その準備を進めている可能性があるとしている。


ウクライナでの代理戦争の中、厳しい現実に目覚めるワシントン
              マスコミに載らない海外記事 2023年9月28日
                ブライアン・バーレティック 2023年9月25日
                       New Eastern Outlook
 今年6月掲載された記事で元イギリス陸軍大佐ハミッシュ・デ・ブレットン・ゴードンが主張したように、NATO訓練を受け、装備したウクライナ軍が「プーチンの徴兵を一掃」できる可能性を告げる欧米見出しの時代は、とうの昔に過ぎ去った
 ウクライナの攻撃部隊がザポリージャからハリコフまでの戦線に沿った強力なロシア防衛を突破した時、ワシントン、ロンドン、ブリュッセルが、ロシア連邦を、経済的、政治的、外交的に、そして最も重要なことに軍事的、産業的に過小評価しているという認識が定着し始めた。

ロシアの軍事生産は成長し、欧米の備蓄は枯渇する
 今日、様々な見出しが欧米諸国のメディア中に現れている。ニューヨーク・タイムズ紙は最近「ミサイル生産を拡大するためロシアは制裁を克服したと当局者」という題名の記事で、ロシアの弾薬生産は欧米諸国の少なくとも7倍だと報じた
 同じ記事は、ロシアが戦車生産を2倍に増やし、年間200万発の砲弾を生産していると認めており、これは2025年から2027年のアメリカと欧州連合の砲弾生産計画合計より多い数だ。ロシアは欧米を出し抜いているだけでなく、欧米の武器や軍需品の数分の一のコストで武器や弾薬を生産している
 ロシアの軍事工業生産が拡大し、ウクライナで進行中の特別軍事作戦のため、より多くの戦車、大砲、巡航ミサイル、弾薬を生産するにつれ、ウクライナ軍は武器と弾薬の供給源が枯渇しているのに気づいている。
 最近の記事で「穀物論争の中、もはやポーランドはウクライナに武器を供給していない」とBBCは報じている

 ウクライナに最も忠実な同盟国の一つポーランドは、キーウの穀物輸出をめぐる外交紛争の中、もはや隣国には武器を供給しないと述べた。
 ポーランドの焦点は、むしろ近代的兵器で自国を守ることにあるとマテウシュ・モラヴィエツキ首相は述べた。

 ポーランドとBBC両方が、ポーランドとウクライナの間の緊張の高まりに動機付けられた決定を描こうとしているが、現実にはポーランドはウクライナに送れる武器と弾薬の量が限られており在庫を使い果たしている。これにより、ポーランドが自国防衛のために得たより近代的兵器が遙かに少なくなる。ポーランドも外国の武器供給国も、戦場でウクライナ軍を維持するのに必要な量の武器や弾薬を生産していないため、ポーランドがこの時点からウクライナに供給を続ければ最終的に「武装解除」されてしまう
 他の国々も待望される兵器システムを提供できていない。これにはウクライナが何ヶ月もアメリカに要求しているATACMS弾道ミサイルが含まれ、到着が差し迫っているという主張にもかかわらず、最近の記事で、ロイターは国防総省の次の支援パッケージに先立ち、それらを再び除外した。
 ドイツの空中発射巡航ミサイル「トーラス」も追加支援パッケージに入っていない。ブルームバーグ記事「ドイツはウクライナへの軍事援助で更に4億2800万ドルを計画」でベルリンは最終的に送る前に「多数の政治的、法的、軍事的、技術的側面」を依然検討中だと指摘した。
 どちらのミサイルも他の様々ないわゆる「驚異の兵器」同様ウクライナの戦況を変える可能性がないのに注意が必要だ。これらミサイルが納入されればキーウの戦術的勝利はもたらすだろうが、戦略的には、戦闘にはほとんど、または全く影響を与えるまい
 ウクライナに対する欧米軍事援助で残っているのは、不十分な量の弾薬、レオパルト1主力戦車のような冷戦の遺物を含む古い、および/または益々不適切な装甲車両、および圧縮日程で実施された「訓練」で、戦場に到着して数日以内に死ぬのがほぼ確実なウクライナ兵だ。
 ウクライナにおけるアメリカ主導の対ロシア代理戦争は持続不可能で、欧米諸国全ての権力の殿堂にいる多くの連中がそれを把握し始めているようだ。

持続する妄想
 ところが欧米マスコミはウクライナの失敗を認めているにもかかわらず、他の場所では、明らかに「長期戦争」に変わりつつあるものに勝つため、ウクライナ軍事戦略の「再考」が役に立つと信じる記事で、依然深い妄想を反映している。
 たとえばエコノミスト誌記事は「ウクライナは長い戦争に直面している。もちろん変化が必要だ」と長い間期待されていた反攻が「機能していない」のを認めているが、追加の防空システムや「信頼できる大砲供給」を含む、ウクライナへのより多くの攻撃と防御能力を要求し続けている。
 記事の中で、ヨーロッパは「防衛産業を強化しつつある」とエコノミストは主張しているが、そうするための所要期間が年単位なことには明らかに気づいていない。
 すぐにも連中に有利に戦争を終わらせる計画が失敗していることに、欧米諸国は明らかに気づいてはいるが、今連中を待っていると分かっている「長い戦争」が代理や他の方法でも連中が戦う能力を超えることには気づいていないようだ。「ロシアに力の限り頑張らせる」のを目的とした代理戦争は、今やロシアを軍事的、産業的に強くしている。同時に、紛争と欧米がロシアに課した経済制裁は、最終的に欧米が同様方法で自分たちを標的にするのではないかと恐れて、他の国々がアメリカ主導の一極世界から離れて、代わりに多極の代替案に向かうきっかけになっている。
 欧米諸国がウクライナを交渉の席でより優位な立場に置こうとすればするほど、ウクライナと欧米スポンサーが弱くなるのは明らかだ。この紛争が長引けば長引くほど、ウクライナとそのスポンサーにとって事態は悪化するだろう。欧米諸国にとって、代理戦争に勝つのは軍事的にも産業的にも不可能だが、欧米諸国指導者にとって、同様にこの現実を受け入れるのは心理的に不可能に見える。

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、作家。オンライン誌New Eastern Outlook寄稿者。
記事原文のurl:https://journal-neo.su/2023/09/25/washington-wakes-up-to-harsh-reality-amid-ukraine-proxy-war/