2023年9月15日金曜日

ジャニーズ事務所に見る失敗の本質(植草一秀氏)

 7日に行われたジャニー事務所の藤島ジュリー景子前社長、東山紀之新社長らの謝罪会見は、ジュリー景子前社長が株式を100%保有したまま代表取締役として社に残留し、ジャニー喜多川氏と長期間、極めて親密な関係を維持してきた東山紀之氏新社長に就き、社名はジャニーズ事務所を継続するなど極めて不徹底なものでした。植草一秀氏が8日、厳しく指摘した通りです。
 果たして会見の直後から、ジャニーズ事務所所属のタレントをCMに起用していた企業が相次いで契約打ち切りの方針を表明しました。これは同事務所が予想していなかったことで13日に、急遽、今後1年間、所属タレントが広告や番組出演の際に受け取る出演料をすべて本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬は受け取らないと発表しましたがそんなことで収まるものではありません。
 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。植草氏は、太平洋戦争の日本軍の判断を検証した名著『失敗の本質』に照らして、ジャニーズ事務所は典型的な戦略失敗の悪路を転げ落ちているとして、「解体的出直し」をするためには、
 ・ジャニー喜多川氏一族が100%株式を保有し、企業を支配する構造を断切る。
 ・芸能事務所としての社名変更する
 ・新社長にはジャニー喜多川氏と関係を持たない第三者を起用する
 ・被害救済のための企業を存続させ、実態の全容解明、被害者のケア、被害者に対する
 必要十分な補償実行を確実に実行する
ことが必要であると述べました。
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ジャニーズ事務所に見る失敗の本質
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年9月14日
ジャニーズ事務所が9月13日、今後1年間、所属タレントが広告や番組出演の際に受け取る出演料をすべて本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬は受け取らないと発表した。企業が相次いでCM契約打ち切りの方針を表明したことを受けての措置
期間を1年としているところにジャニーズ事務所の「魂胆」が浮き彫りになる。
企業収益が奈落に転落することを防ぐことが最優先目的になっている。

「タレントには罪がない」との反論が説得力を持たないのは企業が支払うスポンサー料が芸能事務所に入金され、当該芸能事務所を支えることになるから。
この点だけに着目して芸能プロダクションとして報酬を受け取らないとしたのだと推察されるが、企業が契約を断ち切る根本の理由は、当該事務所が人権侵害に関わっているとの認識があるからだ。
この部分の問題を解決せずに、「1年間だけ」報酬を受け取らないとしても問題の解決になるわけがない。

ジャニーズ事務所は典型的な戦略失敗の悪路を転げ落ちている。
太平洋戦争の日本軍の判断を検証した書籍『失敗の本質』(中公文庫) https://x.gd/IpEzr 
は失敗や敗退の本質に迫る名著として名高い。
その日本軍の「失敗の本質」をそのまま引き継いでいるのがジャニーズ事務所である。
ジャニー喜多川氏は戦後、在日駐留米軍の軍事顧問団勤務から経歴をスタートさせている。

本来は日本軍ではなく米軍の戦略に準拠してもよいのではないかとも思われるが、現在のジャニーズ事務所に引き継がれた行動は日本軍の行動そのもの。
『失敗の本質』が提示する「失敗の原因」を列挙する。
 ・あいまいな作戦目的
 ・過度の精神主義
 ・不測の事態が発生した際の瞬時の有効かつ適切な反応の欠落
 ・戦略的合理性を欠く作戦
 ・人間関係を過度に重視する情緒主義
 ・統一指揮の不在

ジャニー喜多川氏の多年にわたる青少年に対する性暴力の実態が明らかにされた。
長期間、問題が存在し、問題の存在が認識されながら、隠ぺいされ続けてきた。
裁判で事実認定がされたにもかかわらず、メディアは事実を報じてこなかった。
本年3月にBBCが事実を告発する番組を放送。
国連までが真相解明に動き始め、やっと事態に変化が生じた。

ジャニーズ事務所が設置した調査特別チームが「解体的出直し」を提言した。
この提言を受けてのジャニーズ事務所会見だったが、「解体的出直し」とはかけ離れた決定が示された。
ジャニー喜多川氏一族が100%株式を保有し、企業を支配する構造を断ち切らなければならない。当然、芸能事務所としての社名は変更される必要がある。
新たな芸能事務所経営最高幹部にはジャニー喜多川氏と関係を持たない第三者を起用する必要がある
同時に、被害救済のための企業を存続させ、実態の全容解明、被害者のケア、被害者に対する必要十分な補償実行を確実に実行する必要がある

やるべき行動は明白だ。しかし、ジャニーズ事務所はこの行動を取ることが出来なかった。
藤島ジュリー社長が株式を100%保有したまま、代表取締役として社に残留する。
社名を変更しない。
新社長にジャニー喜多川氏と長期間、極めて親密な関係を維持してきた東山紀之氏を起用する。
これがジャニーズ事務所が示した決定内容。しかも、新社長の東山紀之氏の過去の性暴力疑惑について、東山氏は明確な回答を示せず、事実を認めたと受け取られる発言を示した。

このような対応を示した企業に対して、コンプライアンスを重視する大企業がどのような対応を示すのかは明白である。
もっとも対応が遅れているのがテレビメディア。
しかし、テレビメディアの経営は大資本のスポンサー料、放送受信契約者の放送受信料に支えられている。
大資本と放送受信契約者が人権侵害企業とテレビ局の関係維持に反対することは明白だ。
テレビメディアのジャニーズ事務所との契約解消は時間の問題。
テレビメディアの対応の遅れが今後の批判の対象になると予測される。
戦力の逐次投入に突き進むジャニーズ事務所が陥落する時期は目前に迫っている。

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