2023年9月6日水曜日

シリーズ 戦争と人権 (3)(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗の連載記事(不定期)「シリーズ 戦争と人権(3)」を紹介します。
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シリーズ 戦争と人権 (3) 植民地なき植民地支配 韓国などいまだに残る
      立命館大学教授(歴史社会学・スポーツ政策論) 権学俊さんに聞く
                        しんぶん赤旗 2023年9月4日
 大日本帝国が行った植民地支配の爪痕は、今なお消えることなく残り続けています。大日本帝国による植民地支配や在日韓国・朝鮮人に向けられている排外主義について研究している立命館大学の権学俊(クオン・ハクジュン)教授に聞きました。
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 私が強調したいのは、「植民地なき植民地支配」が、韓国などでいまだに残っているということです。

国家が体力管理
 大日本帝国の植民地支配下にあった朝鮮や台湾では、植民地主義に基づく政策が実行されていました。そのつが、「皇国臣民体操」など、体育と結びついた体力・健康管理です。
 日本でも、「国防競技」など国家による体力管理は行われていましたが、戦後、GHなによる占領政策による非軍事化、民主化によってなくされました。一方、大日本帝国から解放された朝鮮では、軍事クーデターによって独裁政権を敷いた朴正煕(パク・チョンヒ)氏によって「満州国を維持・管理するためにとられていた政策」が引き継がれました。
 朴氏は、満州国の陸軍士官学校を卒業し、将校を務めた人物です。彼は「体力は国力である」とし、満州国でも行われていた身体管理政策、「教練」(軍事訓練)や「体力章検定」を韓国で実施しました。つまり、1945年の太平洋戦争敗戦によって、日本による朝鮮の植民地支配は終わりましたが、植民地支配のためのイデオロギーや政策としての「植民地主義」ぱ韓国にそのまま残ったわけです。これが、「植民地なき植民地支配」の内実です。
 実際、私自身、高校生であった80年代に、高校の中で軍服を着て「教練」の授業を受けました。また、「体力章検定」は大学入試にも用いられ、点数化されていました。国民の健康・体力が国家によって提示されていたこと自体、植民地支配の残滓(ざんし)と言えます。
 現在、教練は廃止されていますが、こういった植民地支配の影響は根強く残っています。日本帝国が築き上げた植民地支配は、今なお、韓国の人々の暮らし、人生を大きく左右し続けています

対話こそ今必要
 今、アメリカの安全保障戦略に巻き込まれる形で、日米、米韓の軍事同盟が強化されています。「中国の独裁政権」に対抗するという形で、「新冷戦構造」が築かれようとしています。日本では、安倍政権から引き継がれた平和憲法9条の改正、軍事大国化がエスカレートし、戦争に向かっているわけですが、重要なことは「正義の戦争」はないということです。
 人の命よりも大事なものはありません。私は、日本が持つ憲法9条は素晴らしいものだと恵っています。今、東アジアに必要なのは軍事化ではありません。必要なことは、アジアの国々が対話し、平和をつくり上げることです。
 最後に、軍拡の問題に引き付けて考えると、朝鮮人は「日本軍」に徴兵された過去があります。徴兵制は、今も韓国で行われています。しかし、徴兵制とは、合法的な奴隷制に他なりません。事実、韓国では良心的な兵役拒否が認められていません。軍の中では、上司からのパワハラやゲイ、トランスジェンダーの兵士が性的な嫌がらせを受けている実態があります。自殺者も出ており、徴兵制は人々の生命をも奪っています。人権侵害である徴兵制は廃止すべきです。  (聞き手島田勇登)