斎藤元彦知事のパワハラや過剰な贈り物の取得などを解明する兵庫県議会の百条委員会の状況を見ると、知事は、弁は立つものの叡智に欠け、自らの非を認めるという謙虚さを持たない。物欲への執着は目に余るのにそれを愧じることがない。レクチュアを受けたことを思い出せないと、それを隠そうとして「瞬間湯沸かし器」となる。自分を殿様のように扱わないことが許せないという気性の持ち主…という具合です。
こんな人間が組織のトップに立てば当然満足に機能しません。これまで外見的にそうならずに済んで来たのは 親方日の丸の組織だからです。当人がここに至っても辞職しないというのは何とも不思議ですが、辞職すれば再起を果たせないことを知っているからでしょう。ここまで「我欲」に徹せるのは、ある意味見事とも言えます。
その口実として「県政を前に進めることが最重要」を決まり文句にしていますが、まさに自分こそが最大の「ガン」であることを分かっていないのは滑稽なハナシです。
日刊ゲンダイに古谷経衡氏による掲題の記事が出ましたので紹介します。
同氏は「ふつう青春時代に他者からの『承認欲求』が満たされた人間は、後年、穏やかな人格を形成し、逆にその充実を他者に還元したいと考える場合が多い。ところが青春時代にこれが不足していると、怨念を抱えるようになり、出世したときにその欠落が自己顕示欲として爆発する」と述べています。説得力があります。
斎藤氏は一浪後 東大の経済学部に入りました。勿論立派な学歴ですが、将来官僚や政治家を目指すのであれば「法学部」に入るのが普通のコースとされているので、その世界? では「引け目」になっていたかも知れません。
併せて同紙の記事:「兵庫パワハラ知事は百条委でも居直り…~ 維新に『二重の罪』」を紹介します。
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(古谷経衡 猫と保守と憂国)
兵庫県知事から石丸伸二と同じ危うさを感じる
古谷経衡 日刊ゲンダイ 2024/09/04
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
兵庫県の斎藤元彦知事(46)のパワハラ問題は、ついに百条委員会での尋問にまで発展した。パワハラというより、もはや刑事事件に近い印象である。なにが知事をそうさせたのか。
地元で製造業を営む豊かな家に生まれ、東大卒後、総務省に入省。経歴だけを見れば立派なエリートである。学生時代の写真も公開されているが、なかなかの好青年で容姿にも恵まれていたほうだろう。順風満帆の人生だと思うが、私はそこに危うい心の歪みを感じる。
ふつう、青春時代に他者から承認され、チヤホヤされた人間は、後年、穏やかな人格を形成する。承認欲求が満たされたのちは、逆にその充実を他者に還元したいと考え、利他的な行動をする場合が多い。ところが青春時代にこれが不足していると、ルサンチマン(怨念)を抱えるようになり、出世したとき、その欠落が自己顕示欲として爆発する。この人格構造の詳細は、拙著「『意識高い系』の研究」(文芸春秋)を読まれよ。
しかし、知事を見るにこれは当てはまらないのではないか、と思う読者もいよう。輝かしい経歴のどこに怨念を抱える余地があるのか。だが人間とは業の生き物だ。自分よりさらに優れて、チヤホヤされている人間に対する嫉妬は、第三者からは測れない部分がある。
秀才は「自分が認められているのは、血のにじむ努力の結果だ」と思い込んでいる。一方、世の中には、努力をほとんどしなくても、生まれ持った才能や容姿により、青春時代がバラ色だった人間が確かに存在する。これを一般にリア充(⇒現実世界が充実していること)と呼ぶが、秀才から見るとそれは「努力なき成功」となり、漆黒の嫉妬心につながっていく。
知事を見てみよ。購入すると自分の音声が流れる自販機を県立高校に設置したり、いい年をして加工した自撮り写真をSNSに投稿する。「どう? 俺ってカッコイイでしょ? もっと俺を見て。もっとチヤホヤして」。そう言っている。究極のナルシストだが、本当にチヤホヤされ、モテてきた人間はこんなことは絶対にしない。真の強者であればあるほど、自己アピールは控えめになる。なぜなら、その必要がないほど強者だからである。あえてそれをしなければならないのは、劣等感であり、コンプレックスの裏返しに他ならない。
ここまで書くと、知事の人格は石丸伸二にうり二つではないか。目的は利他や公益ではなく、ひたすら自己の承認欲の充足。歪んだ人格が、権力者や有名人になったとたん、パワハラや無礼な態度を正当化させる。知事は私の5つ年上だが、石丸は私と同い年の41歳。40代の、満たされなかった男性に典型的なこの人格は、もはや社会問題である。
古谷経衡 作家
1982年生まれ。立命館大学文学部史学科卒。令和政治社会問題研究所所長。「左翼も右翼もウソばかり」「日本を蝕む『極論』の正体」「毒親と絶縁する」「敗軍の名将」「シニア右翼」など著書多数。
兵庫パワハラ知事は百条委でも居直り…今さら不信任視野で退勢挽回狙う維新に「二重の罪」
日刊ゲンダイ 2024/09/01
「不快に思った人がいれば心からおわびしたい」と語る顔つきは、ちっとも謝っていなかった。パワハラやおねだりなどの疑惑を突きつけられた兵庫県の斎藤元彦知事が30日、県議会百条委員会に初めて出頭したが、相変わらず開き直った態度。後ろ盾だった日本維新の会は今さら、見切りをつけようとしているが、まず「二重の罪」を償うのが先だ。
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出張先で公用車を降り、20メートル歩かされただけで怒鳴り散らし、業務チャットには休日・深夜を問わず指示を出す──。斎藤は県職員アンケートに記されたパワハラ内容を問われたが、「記憶にない」「ひとつひとつ覚えていない」を連発。「仕事は厳しくが私のスタイル」と居直り、2時間半に及んだ証人尋問は結局、ゼロ回答に終わった。
斎藤は終了後「私が知事として仕事をさせていただく」と語り、重ねて辞職を否定。知事の座からテコでも動かないつもりだが、これまで静観してきた維新が「斎藤おろし」にうごめき出した。27日に共同代表の吉村・大阪府知事が辞職要求の可能性について「当然ありうる」と一転させ、維新兵庫県議団の不信任決議案提出を示唆した。
批判噴出の大阪・関西万博がたたり、維新は首長選などで敗北続き。斎藤の存在が追い打ちをかけ、25日投開票の大阪・箕面市長選では公認の現職が初めて敗れた。しかも、ほぼダブルスコアの完敗だった。
党勢衰退が可視化された直後の方針転換とは虫がいい。維新は自民に次ぐ兵庫県議会の第2会派。不信任案を出せば可決の公算は大だが、斎藤おろしは「二重の罪」にケジメをつけてからだ。
1つ目の罪状はパワハラ知事の製造責任だ。維新は3年前の知事選で斎藤を推薦し、吉村と当時の松井一郎代表(前大阪市長)は共に街頭で「全力応援」。斎藤当選に寄与し、大阪府以外で初の維新系知事誕生に胸を張ったものだ。
■告発元局長のプライバシー漏洩の疑い
2つ目は「組織的パワハラ」の疑い。発端は今年3月、元県民局長が斎藤のパワハラなどの疑惑を告発したこと。斎藤が「嘘八百」と批判すると、県の人事課は元局長の公用パソコンを押収。人事当局トップら斎藤側近の幹部を通じ、告発とは無関係の元局長の私的な情報が一部県議に漏洩した疑いが強まっている。
元局長は7月に証人出頭が決まった百条委に対し「プライバシー権侵害」への配慮を求める文書を提出。要請の直後に自ら命を絶ち、スマホに「死をもって抗議する」とのメッセージを残した。維新県議がプライバシー情報の開示を執拗に求めたり、百条委で「元局長をつるし上げてやる」と発言していたとの証言を、既に複数の週刊誌が報じている。きのうの百条委を取材したジャーナリストの横田一氏は言う。
「仮に知事側近の県幹部、維新の県議らがプライバシーをネタに告発者を揺さぶり、死に追いやったとしたら、その罪は重い。パワハラ知事はかばうに値しないとの判断は結構ですが、不信任案の提出で斎藤氏にクビを迫る前に、維新の県議たちも共犯関係を認め、職を辞すべきです」
維新の無反省で身勝手な「厄介払い」は許されない。