2024年9月30日月曜日

30- イランに罠を仕掛けたワシントン イランは餌に食いつくだろうか?

 米国は表向き中東の平和と安定を求めるふりをしていますが、レバノンシリアイラン3国は中東地域における米国優位に対する障害となっているので、取り分け中東最大国のイランと戦争を画策してます。
 米国は「この目的のために長年にわたり、武器や弾薬の継続的供給など年 数十億ドルの援助をイスラエルに行っています(イスラエルは、これなしにはガザへの蛮行などの様々な侵略戦争遂行できません)。
 イランとの戦争においては、まずイスラエルの軍事攻撃を許すか、奨励する形でイランを攻撃させ、次に米国が参戦するに当たっては、自らに責任を負わせないための具体的方策を既に入念に練り上げているということです。それは当然イランも承知しています。
 こうした挑発に反撃するのではなくそれを克服することで、いずれ米国一極主義からより良い多極主義の世界へと世界の勢力バランスが転換するのですが、それが実現するまでは米国が多極主義化を葬り去ろうと戦争を引き起こすための罠を各国は慎重に避けなければならない、と述べています。
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イランに罠を仕掛けたワシントン イランは餌に食いつくだろうか?
                マスコミに載らない海外記事 2024年9月29日
                ブライアン・バーレティック 2024年9月24日
                     New Eastern Outlook
 ウクライナ紛争が続き、アジア太平洋地域で緊張が高まる中、ワシントンは中東で、代理勢力イスラエルと増え続ける近隣諸国や組織との間での同様に危険な地域戦争に動いている。
 イランに罠を仕掛けたワシントン イランは餌に食いつくだろうか?
 これには、レバノンとレバノンを拠点とする軍事・政治組織のヒズボラや、シリア・アラブ共和国や、イランやイラク全土のシーア派民兵や欧米メディアが「フーシ派」と呼ぶイエメンを拠点とするアンサル・アッラーが含まれる。
 この地域に広がるこの大規模な国家や組織の集団には共通点がある。つまり、それらは全て、この地域におけるアメリカ優位に対する障害となっており、第二次世界大戦終結以来、それぞれに対してアメリカ自身も直接的およびまたは間接的に戦争を仕掛けてきた
 東ヨーロッパでロシアとの代理戦争を仕掛けるため、アメリカがウクライナを取り込み、アジア太平洋地域で台湾を政治的に掌握して中国に対して利用しているのと同様、アメリカはイスラエルを何十年にもわたって政治的、軍事的に注意深く育て、暗殺やテロ攻撃や軍事攻撃、更にはアメリカ自身がもっともらしい否認を求める戦争を誘発するための代理として利用してきた

 代理であろうとなかろうと、ワシントンは遅かれ早かれイランとの戦争を望んでいる。 この目的のため、武器や弾薬の継続的供給も含まれる毎年数十億ドルの援助をアメリカはイスラエルに行っているこれなしに、イスラエルの様々な侵略戦争は遂行できない。表向き、ワシントンは中東の平和と安定を求めるふりをしているが、イスラエルへの継続的支援は、この地域を蝕む永続的紛争と不安定さを助長している。
 最近、イスラエルに対し、ガザへの軍事作戦の自制を促しているとアメリカは繰り返し主張している。しかし今年6月、実際は、イスラエル空爆に使用される数千発の爆弾を含む軍需品をアメリカは継続的に送付して、ガザの大規模破壊を可能にしているとロイター通信が報じた
 アメリカとその代理イスラエルは、イスラエルの行動は自衛のためだと主張しているが、暴力は一方的で、ガザはほぼ平らげられ、何万人もの人々が死亡や負傷や避難を余儀なくされている。ガザでの作戦と並行して、イスラエルはレバノンシリアイラン攻撃も行っているが、イスラエル軍自身によれば、これらの国々はいずれも昨年10月のハマスによる攻撃に関与していないという。
 これら三国はイスラエルの挑発行為に対する報復に繰り返し抵抗してきた。

イスラエル:ウクライナ式破城槌の元祖
 イスラエルの好戦的性格は明白で、中東全域でより広範な戦争を誘発し、アメリカが介入を正当化するための十分に文書証拠があるアメリカ政策の一環だ。そして、アメリカと代理勢力イスラエルは、核兵器を含む、正当化が困難または不可能な兵器や戦術を使用する際、その戦争を引用できる。
 2009年、ブルッキングス研究所は「ペルシャへの道はいずれか? イランに対するアメリカの新たな戦略の選択肢」と題する170ページの論文で、イランとの戦争遂行を含む、イラン政府を強制し、封じ込め、最終的に打倒するための様々な手段を詳述した。
 この論文は、アメリカ自身がイランに対し軍事攻撃を開始するのが、いかに困難かを認め、次のように述べている。

…いかなる対イラン軍事作戦も世界中で非常に不評を買う可能性が高く、作戦に必要な兵站支援を確保し、その反動を最小限に抑えるため適切な国際的文脈が必要となるだろう。

 また、次のようにも述べている。

…アメリカが空爆を開始する前に、イランの挑発を理由にして空爆を正当化できれば、遙かに望ましい。明らかに、イランの行動がより非道で、致命的で、いわれのないものであればあるほど、アメリカにとって有利になる。もちろん、世界に気付かせずに、そのようにイランを挑発し、弱体化するようアメリカがこの駆け引きを推進するのは非常に困難だろう。

 イスラエルを利用して最初のイラン攻撃を遂行し、その責任からアメリカが距離を置くことに一章丸々充てられている。「ビビに任せろ:イスラエルの軍事攻撃を許すか、奨励する」と題されたこの報告書は、はっきり次のように述べている。
…この政策選択肢の狙いは、イランの主要核施設を破壊し、それによりイランの国産核兵器能力の獲得を大幅に遅らせることだ。しかしながら、この場合、国際社会による批判とイランの報復両方が、アメリカを逸れ、イスラエルに向けられるのを期待して、イスラエル自身による攻撃をアメリカが奨励したり、場合によっては、支援したりしかねない。
 イスラエルの攻撃は 「自らがイランに対して起こす侵略戦争の前にアメリカ必要な口実を与えることになる、アメリカや他の国々を巻き込む可能性があるイスラエルとイラン間のより広範な紛争を引き起こしかねない」とこの報告書は指摘している。
 この政策を念頭に置くと、イランと同盟諸国に対し、イスラエルが着実に挑発的攻撃を強化している理由が理解しやすくなる。イスラエルの挑発行為を通じて、アメリカは自らも参戦できる、より大規模な戦争を誘発し、中東で新たな侵略戦争を始めるのではなく、同盟国を支援しているように見せかけようとしているのだ。
 究極的に、この罠が成功するためには、こうした数多くの挑発行為の一つにイランが報復し、不釣り合い、あるいは「いわれない」とさえ言えるような形でアメリカと同盟諸国が報復しなければならない。
 これまでのところ、イランの対応は極めて慎重だ。

短期的復讐と長期的勝利
 イスラエルによる暗殺やテロ攻撃や、更には一方的軍事攻撃が、レバノンとシリア両国に対し長年行われてきたが、両国の存続が深刻に脅かされることはなかった。
 実際、アメリカが仕掛けたシリアの生存を脅かしていた代理戦争は、シリア国内でのシリア軍とロシアとイランの安全保障協力により打倒された。
 同様に、長年にわたり、テロや政治干渉や暗殺など直接的、間接的攻撃にイランは耐えてきたが、これら敵対行為が国民国家としてのイランの存続を深刻に脅かすことはなかった。イランを弱体化させ不安定化させることを狙ったアメリカ制裁と政治干渉は、アメリカや代理勢力への報復ではなく、今年初めBRICSに加盟して以来、イランが台頭しつつある多極世界との緊密な協力と参加を通じて、これまで慎重に管理され克服されてきた。
 より広い意味では、多極化した世界が規模と複雑さを増し、アメリカ主導の国際秩序が衰退するにつれ、中東を含む世界のどこででも優位を主張するワシントンの能力が衰えている。このため、世界の勢力均衡が更に不利になる前に、経済力と軍事力の残りの優位性を利用して敵を排除しようとして、ワシントンは時間との戦いを繰り広げている

 代理戦争であろうとなかろうと、遅かれ早かれ、ワシントンはイランとの戦争を望んでいる。益々必死な挑発行為に対するイランや同盟諸国の短期的復讐心を感情的に満たすための報復は地域全体を破壊しかねない、より広範で、より多大な犠牲を伴う戦争を引き起こしたいワシントンの願望を助長するに過ぎない。
 むしろ、安全保障を強化すべきなのだ。イランと同盟諸国は、国内や地域全体で経済力と政治力を強化するのと同様、軍事力強化を継続する必要がある。レバノンで最近起きた爆発物を仕掛けた電子機器を国内にばらまくテロ攻撃などのイスラエルが実行した挑発の多くは完全に予測可能で予防可能だ
 アメリカと代理勢力が中東を不安定化させようとするあらゆる試みに対し、中東地域とそのパートナーは安定の維持に一層力を入れ、紛争拡大を回避しなければならない。将来の挑発行為が効果を弱め、実行困難になるようにするには、安全保障と外交の努力を継続的に組み合わせる必要がある。
 こうした挑発に反撃するのではなく、それを克服することで、アメリカ主導の一極主義から、より良い多極主義の世界へと世界の勢力バランスを根本的に転換し続けるために必要な時間が他の国々とともに中東は得られる。しかし、それが実現するまではワシントンが多極主義を葬り去ろうと破壊的戦争を引き起こすことを意図した罠を各国は避けなければならない

 ブライアン・バーレティックはバンコクを拠点とする地政学研究者、ライター。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2024/09/24/washington-sets-trap-for-iran-will-iran-take-the-bait/