櫻井ジャーナルが掲題の記事を出しました。
かつて「ジャパン アズ NO.1」(1979年刊)と称された時期がありました。しかしそんなことを許せない米国は日本に対し、強圧的な定期の「日米包括経済協議」や「日米構造協議」を持ち掛け、最終的に日本をNO.1の地位から転落させることに成功しました。
それまでは日本は国家財政的にも優等生でしたが、それ以後 赤字国家に転落しました。
米国には、何故か他国が自国を上回ることを絶対に許さないというケチなプライドがあるようで、いまはそうした「敵意」は挙げて中国に向かっています。具体的には「台湾有事」であり、それこそは「日本を中国の矢面に立たせる」ための絶好の口実になるので、自らは殆ど被害を受けることなく「中国叩き」が実現できる道程で、そこに何のためらいもなく侵入したのが岸田首相でした。
「台湾有事」は岸田氏などが宣伝してきたので周知はされていますが。余りにも子供じみていて大方の日本人はまさかそれが実現するなどとは思っていません。
世に倦む日々氏は最近下記の記事を出してその甘さを指摘しています。
「台湾有事など起きない」と言う田岡俊次と内田樹 - 9条左派を眠らす権威の安心理論
(世に倦む日々 8月24日)(⇒https://note.com/yoniumuhibi/n/n5e00892c48d3)
要するに米国はその構想を簡単に諦めるような国ではないということです。
併せて「耕助のブログ」の記事「新しい多極化時代に平和を実現する」を紹介します。
いわば中国は侵略戦争国家の米国とは、基本的に対極の位置にいるという内容です。
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米国は中国に対する先制攻撃の準備を日本でも着々と進めている
櫻井ジャーナル 2024.09.11
昨年11月、アメリカは23億5000万ドルでブロックIVタイプ200発とブロックVタイプ200発、2種類のトマホークを売却することを承認、今年1月にトマホーク購入の契約が成立した。
ここにきて注目されているのはタイフォン・ミサイル・ランチャー。陸上配備の多目的SM-6ミサイルと巡航ミサイルのトマホークを発射できる。今年4月にタイフォンがフィリピンに作戦配備され、9月4日にはアメリカが日本側へ「タイフォン」ミサイルシステムの配備を通知したとクリスティーン・ウォーマス米陸軍長官は述べた。
アメリカでは1992年2月、ネオコンが国防総省のDPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。その時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。このウォルフォウィッツが中心になってDPG草案は書き上げられたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。
その中でドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、新たなライバルの出現を防ぐと謳われている。日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれたのは1995年だ。
明治維新以降、第2次世界大戦も前も後も、日本はイギリスやアメリカの傭兵として活動してきた。アル・カイダやネオ・ナチと似たような役回りだ。そうしたことを口にした総理大臣もいた。
イスラエルは米英が中東に作り上げた「不沈空母」だとするならば、日本は彼らが東アジアに作り上げた「不沈空母」であり、米英にとってウクライナがロシアを制圧する拠点だとするならば、日本は中国やロシアを破壊する拠点だ。
1982年11月に内閣総理大臣となった中曽根康弘は翌年の1月にアメリカを訪問、ワシントン・ポスト紙の編集者や記者たちと朝食をとるが、その際に彼はソ連のバックファイア爆撃機の侵入を防ぐため、日本は「不沈空母」になるべきだと言ったと報道された。
中曽根はそれをすぐに否定するが、発言が録音されていたことが判明すると、「不沈空母」ではなく、ロシア機を阻止する「大きな空母」だと主張を変える。このふたつの表現に本質的な差はなく、日本列島がアメリカ軍がロシア軍を攻撃するための軍事拠点だと中曽根は認めたのである。
ニューヨーク・タイムズ紙は今年2月25日、CIAが2022年までの10年間にウクライナのロシアとの国境沿いに12の秘密「前方作戦基地」を設置したと書いているが、中国で共産党政権が成立する直前、OPC(後にCIAの破壊工作部門の中核になる)の拠点が日本に設置されている。1950年代には沖縄全域を軍事基地化し、中国やソ連に対する先制核攻撃の準備を整えている。
現在、ロシアと中国は共同で極東地域の開発を進めている。ロシアの極東開発と中国東北部の活性化だが、そこへ朝鮮、モンゴル、ASEAN(東南アジア諸国連合)を巻き込もうとしている。現政権はアメリカに従属しているものの、韓国、台湾、フィリピンの国民はこの経済圏へ加わることに魅力を感じているようだ。そうした中、日本は自らが破滅することを厭わずアメリカへ従属しようとしている。
日本の「エリート」はアメリカ信仰の持ち主で、アメリカに従っていれば自分たちも傍若無人な振る舞いが許されると思っているようだが、所詮は手先にすぎいない。「日米同盟」などは戯言。そうした「エリート」は日本の国土と国民を米英の私的権力へ叩き売ることで自分たちの富と地位を手にし、維持しているのだ。
しかし、日本の「エリート」が信奉しているアメリカの私的権力、つまり支配者は衰退している。軍事力だけでなく知的水準も低下、プロパガンダ機関によって描く幻影で人びとをコントロールしているが、その手法も限界がきている。言論統制を強化しているのはそのためだが、そうした行為は支配システムをさらに揺るがすことになる。
こうした状況にあるにもかかわらず、アメリカの支配層は世界を自分たちの所有物だと今でも信じている。彼らの暴力装置である国防総省は準中距離、あるいは中距離弾道ミサイルをロシア、中国、朝鮮の周辺に配備、先制攻撃能力を高め、そうした国々を追い込もうとしている。アメリカがヨーロッパで行っていることと同じだ。
国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」は2022年4月、GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲する計画を発表した。専守防衛の建前と憲法第9条の制約がある日本の場合、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたというが、その後、そうした日本の憲法に対する配慮はなくなった。
RANDが計画を発表する前から準備は進んでいた。2016年には与那国島でミサイル発射施設が建設され、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも自衛隊の軍事施設が完成している。今後、南西諸島周辺へアメリカ軍とその装備を移動させる可能性があるという。
その間、韓国へも2017年4月にTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムの機器が強引に持ち込まれている。2013年2月から韓国の大統領を務めた朴槿恵は中国との関係を重要視、THAADの配備に難色を示していたが、朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなっていた時期に搬入された。その後、朴槿恵は失脚している。
2022年10月に「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。
トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルという。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点への先制攻撃が可能。「専守防衛」は日本の国内に向けた宣伝文句にすぎず、アメリカは先制攻撃を想定している。
そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。
そしてトマホーク購入の契約成立。アメリカは2010年代に作成した中露に対する攻撃計画を状況が大きく変化した現在も変えずに実行しようとしている。
新しい多極化時代に平和を実現する
耕助のブログNo. 2264 2024年9月9日
Achieving peace in the new multipolar age by Jeffrey D Sachs
1991年のソビエト連邦の崩壊により、米国は無敵の覇権国として世界を支配すると思い込んだ。しかし米国の「一極」時代は短命に終わった。米国の地政学的な優位性は、中国の台頭、ソビエト崩壊後のロシアの回復、そしてインドの急速な発展によって終焉を迎えた。私たちは新たな多極化時代に突入したのである。
米国は依然として世界の覇権を維持しようと戦っているが、それは妄想であり、失敗に終わるだろう。たとえ世界が望んでいたとしても、それはありえないことだが、米国は世界を導く立場にはない。世界の生産高に占める米国の割合(国際価格)は16%で減少傾向にある。1950年には約27%、1980年には21%であった。中国の割合は19%である。中国の製造業生産高は米国のおよそ2倍であり、最先端技術においても米国に肩を並べている。
米国は軍事的にも拡大しすぎており、80カ国に750もの海外軍事基地を持っている。米国はイエメン、イスラエル・パレスチナ、ウクライナ、シリア、リビアなどにおいて長期にわたる戦争を続けている。米国の戦争と覇権追求は、中国などのライバル国への負債を含む借金によって賄われている。
さらに米国の予算編成は麻痺している。政治運動に資金提供している富裕層は減税を望み、貧困層は社会支出の増額を望む。その結果、慢性の財政赤字(現在GDPの5%以上)という膠着状態に陥っている。公的債務は2000年のGDPの約35%から、現在ではGDPの100%に膨れ上がっている。
米国は人工知能やマイクロチップ設計などの分野で技術的なダイナミズムを維持しているが、米国のブレークスルーは、中国得意のノウハウの普及や進歩によりすぐに中国に追いつかれる。先進的なソーラーモジュール、風力タービン、原子力発電所、バッテリー、チップ、電気自動車、5Gシステム、長距離送電網など、世界のグリーンおよびデジタルハードウェアのほとんどはアジアで製造されており、その大半は中国または中国が主導するサプライチェーンが占めている。
財政赤字を理由に米国はグローバルなリーダーシップの財政的負担を回避している。米国はNATO同盟国に対して自国の軍事防衛費を負担するよう要求しているが、一方で気候変動や開発資金のための国連システムへの貢献はますます出し惜しみしている。
つまり、米国が自国を世界の覇権国であると錯覚している一方で、私たちはすでに多極化された世界に生きているのだ。では、この新たな多極化が何を意味するのかという疑問が生じる。
可能性は3つある。
1つ目は、現在の趨勢は、米国と中国、ロシア、その他の国々との間で、主要国間の優位性を巡る争いが続くというものである。米国の外交政策研究の第一人者であるジョン・ミアシャイマー教授は、「攻撃的リアリズム」理論を提唱している。それによれば、大国は必然的に優位性を巡って争うことになるが、その結果は悲惨な戦争という形で現れる可能性がある。私たちの課題は、このような悲劇的な結末を避けることであってそれを宿命として受け入れることではない。
2つ目の可能性は、大国間の勢力均衡による不安定な平和で、「防御的リアリズム」と呼ばれるものである。米国は中国やロシアを打ち負かすことはできないし、その逆もまた然りであるため、大国は直接的な衝突を回避することで平和を維持すべきである。米国は、ロシアの強い反対を押し切ってNATOをウクライナに介入させようとしたり、中国の強い反対を押し切って台湾に武器を供与したりすべきではない。
つまり、大国は互いのレッドラインを避け、慎重に行動するべきである。これは確かに良い助言ではあるが、十分ではない。パワーバランスは不均衡へと転じ、平和を脅かす。19世紀のヨーロッパにおける主要国間のパワーバランス、すなわちヨーロッパ協調体制は最終的には19世紀末のパワーバランスの変化に屈して第一次世界大戦へとつながった。
過去30年間、米国の指導者たちにはばかにされてきたが、私たちの最大の希望である3つ目の可能性は、大国間の真の平和である。この平和は世界的な覇権国は存在し得ないという認識を共有し、共通善のために大国間の積極的な協力が必要だという認識に基づく。このアプローチには、理想主義(倫理に基づく世界)や制度主義(国際法や多国間機構に基づく世界)など、いくつかの基盤がある。
持続的な平和は可能である。19世紀に西洋列強が到来する以前の東アジアに長く続いた平和から、私たちは多くを学ぶことができる。哲学者Shuchen Xiangは著書『中国のコスモポリタニズム』(2023年)の中で、歴史学者David Kangの言葉を引用している。Kangは「明王朝の建国からアヘン戦争までの期間、つまり1368年から1841年までの間、中国、韓国、ベトナム、日本間の戦争はわずか2回だけだった。それは中国のベトナム侵攻(1407年~1428年)と日本の朝鮮侵攻(1592年~1598年)である」。東アジアの長きにわたる平和は1839年~1842年のアヘン戦争における英国の中国攻撃と、それに続く東西(およびのちの日中)の対立によって崩壊した。
Xiang教授はヨーロッパの政治の特徴であった覇権争いとは対照的に、中国、韓国、日本、ベトナムの政治を支えていた儒教の調和の規範が、東アジアの半世紀にわたる平和をもたらしたと主張している。この長い期間、中国は地域における紛れもない覇権国であったが、その圧倒的な力を用いて韓国、ベトナム、日本を脅したり傷つけたりすることはなかった。
中国の外交政策立案の専門家であるJean Dong博士も、著書『変化する世界における中国の外交政策:永続する伝統とダイナミックな制約の解明』{1}の中で、中国とヨーロッパの外交政策の違いについて同様の指摘をしている。
私は最近、「21世紀における恒久平和のための10原則」{2}を提案した。これは中国の平和的共存の5原則に、5つの実践的な追加ステップを加えた、儒教の倫理と制度主義の混合である。私の考えは、協力の倫理と国際法および国連憲章の実質的利益の活用にある。
9月に国連サミットが開催されるが、そこでの重要なメッセージはこれだ。覇権国は必要ない。パワーバランスは容易にパワーの不均衡へと転じる。私たちが必要としているのは、倫理観、共通の利益、国際法と国際機関に基づく永続的な平和である。
Links:
{1}https://www.amazon.com/Chinese-Statecraft-Changing-World-Demystifying-ebook/dp/B0CGTT6J46/ref=sr_1_1?
{2} https://www.commondreams.org/opinion/10-principles-peace-21st-century
https://mailchi.mp/ad6083ccceba/jeffrey-sachs-achieving-peace-in-the-new-multipolar-age
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。