2024年9月23日月曜日

9月11日から10月7日まで 偽りの「テロとの戦い」が崩壊(賀茂川耕助氏)

 「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。

 米国は2000年に「対テロ戦争」を主要な戦略にすることに転じました。そのために必要になる「テロリスト」グループは当然養成済みでした。
 翌年にお誂え向きの「9・11」が起き 幸先の良いスタートを切りましたが、それは入念に準備された謀略事件でした。
 対テロ戦争は「テログループ対連合軍」の形態で行われますが、テロリスト勢力を殲滅することは目指さず、密かに当日の爆撃先を事前に知らせておくなどの配慮が払われます。
 従って途中からロシアが連合軍に参戦したケースでは、たちまち連合軍側が大優勢に転じるなどの不自然さも生じました。対テロ戦争は必然的に市街地の爆撃が主戦術になるので、それによって生み出される何百万人もの難民こそが哀れな犠牲者でした。こうした「偽りの対テロ戦争」が永続していい筈がありません。
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9月11日から10月7日まで: 偽りの「テロとの戦い」が崩壊
                 耕助のブログNo. 2277   2024年9月22日
 From 11 September to 7 October: The fake ‘War on Terror’ collapses
長年、米国は「テロとの戦い」を正当化するために正体不明のテロリストを口実にイスラエルの地域不安定化政策を実行してきた。しかし、2023年10月7日、ワシントンの終わりのない戦争計画は、スイッチを切り替えるだけで、米国の敵がイスラエルに対する「長い戦争」を開始したことで終焉を迎えた。       by Pepe Escobar

    植民地化は、古い歴史を持つ裕福な国が関与する事業の中で最も優れたものである。文明国と野蛮人の間では、国際道徳の同じルールは適用されない。
         ― ジョン・スチュワート・ミル,「Eileen Sullivan著「リベラリズムと帝国主義
     JSミルの大英帝国擁護論」『思想史ジャーナル』第44巻、1983年より引用。
2001年9月11日の出来事は、21世紀の若者たちに新しい例外主義のパラダイムを押し付け、定着させることを意図したものだった。しかし、歴史は違った方向へ転換した。
米国本土への攻撃とされた2001年9月11日の事件は、すぐにグローバルな対テロ戦争(GWOT)となり、それは同日午後11時に開始された。当初は国防総省が「長い戦争」と名付けたが、後にバラク・オバマ政権が「海外有事作戦(Overseas Contingency Operation)」と改称した。
米国がでっち上げた「テロとの戦い」は、正体不明の敵を倒すために追跡不可能な8兆ドルもの費用を費やし、50万人以上の人々(その大半はイスラム教徒)を殺害し{1}、イスラム教徒が多数派を占める7カ国に対する違法な戦争にまで拡大した。これらすべては「人道上の理由」から容赦なく正当化され、「国際社会」によって支持されていると主張された。この当時「国際社会」と呼ばれていたものは、「ルールに基づく国際秩序」と名称変更された。
一体誰のため? (誰が利益を得るのか)という問いは、2001年9月11日にまつわるあらゆる問題において最も重要な問いである。ジョージ・W・ブッシュの父親の政権で国防長官を務めたディック・チェイニー副大統領が、国防および国家安全保障機関に戦略的に配置したイスラエル第一主義の強硬派ネオコン{2}の緊密なネットワークが動き出し、新アメリカ世紀計画(PNAC)が長年計画してきたアジェンダ{3}を実行に移した。この広範囲にわたるアジェンダは、政権交代作戦や西アジアやその他のイスラム諸国における一連の戦争を正当化するための正しいきっかけ(新真珠湾攻撃)を待っていた。
ウェスリー・クラーク米陸軍大将が暴露した、チェイニー政権による悪名高い秘密計画によると、イラク、シリア、リビアからイランに至るまでのイスラム主要7カ国を5年以内に破壊するという計画がすでに立てられていたことが明らかになっている。{4} これら標的とされた国の共通点は、占領国(イスラエル)に断固として反対し、パレスチナ人の権利を断固として支持する、というものだった。
テルアビブの観点から見て「好条件の取引」というのは、テロとの戦いという名目で、米国とその西側同盟諸国が「文明」のために「野蛮人」に対して、イスラエルが利益を得る一連の戦争を戦うことだった。イスラエルはこの流れにこれ以上ないほど満足し、得意になっていた。
2023年10月7日が2001年9月11日と同じであるのは不思議ではない。イスラエル自身、これをイスラエルの「9月11日」だと宣伝した。類似点はいくつもあるが、イスラエル第一主義者やテルアビブを率いる過激派の徒党が期待していたような類似点ではない。

シリア:転換点
西側覇権国はナラティブ⇒物語)を作り上げることに長けているが、現在、自らが作り出したロシア嫌い、イラン嫌い、中国嫌いの沼地に足を取られている。9月11日に関するような、公式で不変のナラティブを否定することは、依然として究極のタブーである。
しかし、虚偽のナラティブを作り上げることは永遠に続かない。3年前、{5} ツインタワー崩壊と対テロ戦争開始から20周年の記念日に、私たちは中央アジアと南アジアの交差点で大きな崩壊を目撃した。タリバンが再び権力を握り、混乱した永遠の戦争で米国に勝ったことを祝っていたのだ。
この時点で、「5年以内に7カ国」という強迫観念、つまり「新中東」の形成を目指すという考えはあらゆる面で頓挫しつつあった。シリアは転換点であったが、2000年にレバノンの抵抗勢力がイスラエルを打ち負かし、2006年にも再び打ち負かした時点で、すでに運命は決まっていたという意見もあるだろう。
しかし独立したシリアを打ち負かすことは、米国の、そしてイスラエルのかなわぬ夢である、イランの政権交代への道筋をつけることになっただろう。
米国の占領軍は「テロとの戦い」を口実に2014年後半にシリアに侵攻した。これがオバマのOCOの実行であった。しかし実際には、ワシントンは2つの主要なテロ組織、すなわち「ダーイシュ」(別名ISIL、ISIS)と「アルカイダ」(別名「ジャバート・アルヌスラ」、「ハヤト・タフリール・アル・シャーム」)を利用して、ダマスカスを破壊しようとした。
これは、2012年に機密解除された米国国防情報局(DIA)の文書によって証明されており、後にこの評価が書かれた当時のDIA⇒国防情報局)長官マイケル・フリン将軍によっても、「テロと戦うのではなく、テロを支援することに関してはオバマ政権による意図的な決定だったと思う」と確認されている。
ISISは、イラク軍とシリア軍の両方と戦うために創設された。このテロ集団は、イラクのアルカイダ(AQI)からイラクのイスラム国(ISI)となり、さらにISILと名称を変え、2012年にシリア国境を越えた後にISISとなった。
重要な点は、ISISとヌスラ戦線(後にハヤト・タハリール・アル=シャーム)の両方が、筋金入りのサラフィー・ジハード主義のアルカイダの分派であったということだ。
2015年9月にロシアがダマスカスの要請を受けてシリアに介入したことで状況は一変した。ロシアのプーチン大統領は、テロがロシア連邦の国境に到達する前に、シリア領内で実際にテロとの戦いに参加することを決断した。これは当時モスクワで使われていた標準的な表現で言い表されている。「アレッポからグロズヌイまでの距離はわずか900キロメートルしかない」。
結局ロシアは、1990年代にチェチェンで同じ種類のテロと手口をすでに経験していた。その後、多くのチェチェン人ジハードは逃げ出し、最終的にはサウジアラビアが資金提供するシリアの怪しげな組織に加わった。
後に、レバノンの偉大なアナリストの故アニス・ナッカシュは、プーチン大統領に直接シリアの戦場に介入しテロの打倒を支援するよう説得したのは、伝説的なイランのクドス部隊司令官、カセム・ソレイマニであったことを認めた。この戦略的マスタープランは、明らかに西アジアにおける米国を致命的に弱体化させることを目的としたものであった。
もちろん米国の安全保障機関は自分たちの都合の良いジハードの歩兵部隊を打ち負かしたプーチン、特にソレイマニを絶対に許さない。ドナルド・トランプ大統領の命令で反ISISのソレイマニ将軍は、2020年1月にバグダッドで暗殺された。イラクのISISを打ち負かすために結集した幅広いイラク人戦闘員の集団であるイラク人民動員部隊(PMU)の副司令官、アブ・マフディ・アル=ムハンデスとともに

9月11日のレガシーを葬る
ソレイマニの戦略的偉業は、イスラエルと米国に対する抵抗の軸を構築し、調整することであり、それは何年もかけて準備されてきた。例えばイラクでは、米国の訓練を受け、米国の支配下にあるイラク軍がISISと戦うことができなかったため、PMUが抵抗の最前線に駆り出された。
ISISがイラクで暴れ始めた2014年6月、イスラム教シーア派の最高指導者であるシスタニ師が「イラク国民全員」に「国と国民、国民の名誉、聖地を守る」よう呼びかけたことを受け、PMUが結成された。
いくつかのPMUはソレイマニ率いるクドス部隊の支援を受けていた。皮肉なことに、そのためにソレイマニは10年間、常にワシントンから「テロリストの親玉」という烙印を押された。それと並行して、決定的なことに、イラク政府はバグダッドにロシア主導の反ISIS情報センターを設置した。
イラクにおけるISIS撃退の功績は主にPMUに帰するものであり、シリア・アラブ軍へのPMU部隊の統合を通じてダマスカスへの支援も行われた。それが真のテロとの戦いであり、「テロとの戦い」と呼ばれるような米国が作り出した誤った概念ではなかった。
何よりも、西アジアのテロに対する自発的な対応は宗派を超えたものであり、今もそうである。テヘランは世俗的で多元主義的なシリアとスンニ派のパレスチナを支援し、レバノンではヒズボラとキリスト教徒の同盟が、イラクのPMUではスンニ派、シーア派、キリスト教徒の同盟が存在している。分割統治は、自国発の対テロ戦略には当てはまらないのだ。
そして、2023年10月7日に起こった出来事は、この地域の抵抗勢力の精神を新たなレベルへと押し上げた
素早いひと振りでイスラエル軍の無敵神話と、賞賛されていた監視および情報収集能力の優位性が打ち砕かれた。ガザ地区で恐ろしい大量虐殺が止むことなく続いている中(『ランセット』誌によると、民間人の死者は20万人に上る可能性もある{6})、イスラエル経済は疲弊している{7}。
イエメンがイスラエル関連の船舶やイスラエル行きの船舶に対して、バブ・エル・マンデブ海峡と紅海を戦略的に封鎖していることは、効率的かつシンプルな名案である。この封鎖はすでにイスラエルの戦略的要港であるエイラト港を破綻に追い込んでいるだけでなく、おまけとして海洋覇権国に対する米国の見事な屈辱をもたらしている。イエメン人は事実上、米海軍を打ち負かしているのだ。
抵抗の枢軸国の協調戦略は、1年足らずで偽りの「テロとの戦い」とその数十兆ドル規模の利益を実質的に葬り去った
9月11日の後の出来事からイスラエルが利益を得たように、10月7日以降のテルアビブの行動はその崩壊を急速に加速させた。今日、ガザ地区でのイスラエルの大量虐殺に対するグローバル・マジョリティーの非難が世界中に広がる中、占領国(イスラエル)は同盟国を汚し、日々米国の偽善を露わにし、世界的なのけ者となっている

米国にとってはさらに憂慮すべき事態となっている。「ユーラシア大陸を支配し、米国に挑戦する能力を持つユーラシアの挑戦者が現れることがあってはならない」という、1997年に「グランド・チェスボード」の著者であるズビグニュー・ブレジンスキーが発した警告を思い出してほしい。
結局、9月11日の同時多発テロ、テロとの戦い、長い戦争、20年間にわたるさまざまな作戦など、すべての音と怒りが、まさにブレジンスキーが恐れていた通りのものへと転移したのだ。単なる「挑戦者」が出現しただけでなく、ユーラシアに新たな基調を打ち立てる、本格的なロシアと中国の戦略的パートナーシップが出現したのである。
突如として、ワシントンはテロリズムのことはすべて忘れてしまった。これが真の「敵」で、今や米国の「戦略的脅威」のトップ2に挙げられている。アルカイダやその多くの変種ではない。それらはCIAの想像力の産物であり、シリアの神話上の「穏健な反体制派」として過去10年間に再生され、受け入れやすくされたものだ。
さらに不気味なのは、9月11日の直後にネオコンが作り出した、概念的に無意味な「対テロ戦争」が、今や「テロ戦争」へと変貌しつつあり、ウクライナで「ロシアの侵略に対峙する」というCIAとMI6の絶望的な「最後の神だのみ」になっていることだ。
そして、それは中国嫌いの沼に転移していくだろう。なぜなら同じ西側諜報機関は、中国の台頭を21世紀における「最大の地政学的かつ諜報上の課題」と見なしているからだ。
テロとの戦いはすでに否定され、もはや終わった。しかし、ナラティブ⇒物語)、海、そして陸を所有することに慣れていない米国による連続テロ戦争に備えなければいけない。
Links:
{1}https://www.aljazeera.com/news/2018/11/wars-terror-killed-million-people-study-181109080620011.html 
{2} https://www.haaretz.com/1.4764706 
{3}https://en.wikipedia.org/wiki/Project_for_the_New_American_Century#Signatories_to_Statement_of_Principles 
{4}https://www.globalresearch.ca/we-re-going-to-take-out-7-countries-in-5-years-iraq-syria-lebanon-libya-somalia-sudan-iran/5166 
{5} https://asiatimes.com/2021/09/9-9-and-9-11-20-years-later/ 
{6} https://thecradle.co/articles/gaza-death-toll-could-reach-half-a-million-lancet 
{7}https://thecradle.co/articles/israeli-economy-on-the-brink-as-it-awaits-retaliation-from-resistance-axis 

https://thecradle.co/articles/from-11-september-to-7-october-the-fake-war-on-terror-collapses