2024年9月14日土曜日

米大統領選テレビ討論と情報操作(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 目下行われている次期米国大統領選において、主要なメディアがハリスへの応援に傾いているのは彼女の方が体制側の意向に従順だからに他なりません。トランプは必ずしも体制側に従わないという無鉄砲さを持っています。
 ところで今日 米国を正義の国と見做す人はさすがにいなくなったと思われます。米国の行動基準が「ごく一握りのエリートらの『物質的利益』と直接結びついている」ために、もはや国際的に「正義の国」を演出できる余地はなくなっています。
 米国における至上の命題は「常に戦争を継続する」ということでしょう。
 植草氏は、ウクライナ戦争の背景を知る者は ロシア=悪、ウクライナ=正義 の図式を否定するとして、それはウクライナ戦争を欲し、ウクライナ戦争の拡大・長期化を主導したのが米国軍産複合体であると認識しているからだと述べています。

 そして、ウクライナ問題を理解する上で貴重な著作が公刊されたとして、成澤宗男氏による新著『米国を戦争に導く 二人の魔女』(かなり高価)を紹介しました。
 二人の魔女とは、ミシェル・フロノイ(オバマ政権元国防次官)とヴィクトリア・ヌーランド(バイデン政権前国務次官)のことで、後者は14年2月のウクライナのクーデターの直前にクーデター勢力と協議し、指導した人物として知られています。
 植草氏は、本書は近年の米国軍事外交政策を理解する上で最高の著作であり。正確で綿密な事実関係に基づいて、冷戦終結後、米国が中国とロシアを「最も差し迫った戦略的課題」として敵対的脅威と見なすようになった現在までの時代の歩み、その軍事外交政策とその軌跡を二人の女性を通じて詳細に描いていると述べています。
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米大統領選テレビ討論と情報操作
               植草一秀の「知られざる真実」 2024年9月11日
11事件から23年の時間が経過した。
その前日にあたる9月10日にトランプVSハリスの大統領選テレビ討論が実施された。
メディアはハリス支援の報道を展開するが討論は概ね想定通りのものだった。
トランプが指摘したが、討論を取り仕切ったABCがハリス寄りであったことは明白。
ハリスの戦略は女性、黒人、米国マイノリティー、若者の得票を増やすこと。

大統領選結果を決するのは激戦7州。
ネバダ、アリゾナ、ジョージア、ノースカロライナ、ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの勝敗がカギを握る。
“Real Clear Politics”集計では9月10日現在、
アリゾナ(11)、ジョージア(16)、ノースカロライナ(16)でトランプがリード、
ネバダ(6)、ウィスコンシン(10)、ミシガン(15)でハリスがリード、
ペンシルベニア(19)で同スコア となっている(カッコ内は選挙人数)。
7州での獲得選挙人数は現状ではトランプ43に対してハリス31。
ペンシルベニア19が白紙の状態。

しかし、情勢は揺れ動いており、投票日まで接戦が継続すると予想される。
米国大統領選は一部の例外を除き、州ごとに勝敗を決め、勝者が人口比で州に割り当てられた選挙人を総取りする。獲得した選挙人数が多い候補者が大統領に選出される。

現時点で完全に互角の情勢。どちらが勝利してもおかしくない。
9月10日テレビ討論ではトランプがハリス攻撃に終始したのに対し、ハリスはののしり合いではなく政策論争を戦わせるべきだと提案した点がポイントだった。
この点で視聴者の好感度はハリス側に大きく傾いた。
次の焦点は10月1日の副大統領候補討論会。

トランプ陣営は敵対者攻撃でなく浮動票を引き付ける戦術を採用する必要がある。
テレビ討論ではウクライナ問題も取り上げられた。
トランプは自分が大統領であったならウクライナ戦争を回避できたと主張。
対するハリスはNATOに属する米国の姿勢を強調。
トランプをプーチン、金正恩総書記になぞらえる印象操作に注力した。

ウクライナ戦争についてはその背景についての知識有無で評価が真逆になる。
背景を知る者はロシア=悪、ウクライナ=正義の図式を否定する。
ウクライナ戦争を欲し、ウクライナ戦争の拡大・長期化を主導したのが米国軍産複合体であると認識している。
この立場に立つ者にとってトランプの主張は奇異なものでない。

ウクライナ問題を理解する上で貴重な著作が公刊された。

成澤宗男氏による新著 米国を戦争に導く 二人の魔女』(緑風出版)




https://x.gd/9DbeM 
二人の魔女とはミシェル・フロノイ(オバマ政権元国防次官)とヴィクトリア・ヌーランド(バイデン政権前国務次官)のこと。
本書は、冷戦終結後、米国が中国とロシアを「最も差し迫った戦略的課題」として敵対的脅威と見なすようになった現在までの時代の歩み、その軍事外交政策とその軌跡を二人の女性を通じて詳細に描くもの。
もっと早くに本ブログ、メルマガで紹介したかったが、著作が精密な記述を積み上げており、拙速な紹介を控えたため、本日の紹介になった。
近年の米国軍事外交政策を理解する上で最高の著作であると言って過言でない。
著者の成澤氏は膨大な海外文献、資料を精査して本書の執筆を行っている。
正確で綿密な事実関係に基づいて本書の課題を浮き彫りにしている。
単なる仮説の提示を忌避し、事実のデータ、資料に基づく精密な論理構成が施されている。
巷間伝えられている多くの仮説に対して安易にそれを肯定しない。

著者の立場からは首肯しやすいと考えられる見解についても憶測による断定を慎重に回避している。この意味で米国軍事外交政策を正確に理解する上での極めて重要な資料、論説の提示になっている。
本書を通じて明らかになることは、米国の軍事外交政策が米国に存在する巨大資本の影響を極めて強く受けている実態である。
米国政府部門内で軍事外交政策に極めて重要な影響力を行使し得る立場にあった者ですら、これら巨大資本との利害関係、金銭的関係を濃厚に有している。

同時に軍事外交における特定の主義主張=イデオロギーが米国の軍事外交政策決定に極めて重要な影響を与えている。
成澤氏が取り上げた二人の女性は米国軍事外交政策の根幹を定めるに当たり、極めて重要な地位に就き、基本政策の策定の中心をなした人物である。
ウクライナ問題をはじめとする米国軍事外交政策を正確に理解する上での最善の教科書が公刊されたと言える。
ぜひとも精読をお勧めしたい。
9.11事件を理解する上でも本書が極めて有用な示唆を与えることになると確信する。

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