2024年9月18日水曜日

竹中持論 解雇自由化の公約化/1年で実現公約なら実績で信を問え(植草一秀氏)

 自民党総裁選で各候補の推薦人に「裏金議員」が計21人もいました。また旧統一協会(現・世界平和統一家庭連合)と接点があった「壺議員」が58人も名を連ねていて、改めて自民党の金塗れぶりと「統一協会」に浸食されている実態が浮き彫りになりました。
 所詮はコップの中の争いながら、各候補はそれなりに個性の違いを見せてはいますが、全員が「改憲・軍拡一辺倒」であることは疑う余地がありません。庶民生活を破壊する資本主義の行き着くところとして、軍拡に何の疑問も持っていないということなのでしょうか。

軍事オタク」として知られている石破氏は、軍事以外の分野では比較的真っ当な発言をしているように思われたのですが、遂に「アジア版NATO」構想に言及したということです。隣国の中国を敵視する軍事同盟を作り、中国と決定的に対立するというものです。
 そんな風に中国と絶交した後、日本の経済がどうなるのか考えたことがあるのでしょうか。何よりも憲法9条との整合性をどう考えているのでしょうか。
 米国は喜ぶでしょう余りにも稚拙な構想です。

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 小泉氏は立候補を表明するや、直ちに「解雇規制の緩和」を打ち出し1年以内に実現させると豪語しました。それこそは大企業が大歓迎するものであり、それを小泉氏に吹き込んだのは竹中平蔵氏だろうといわれています。
 しかし「解雇」には、最高裁「判例」に基づく「解雇規制4要件(人員削減の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、 解雇手続の妥当性)」をクリアする必要があり、事前のリスキリングを実施する程度のことでは到底認められません。まさに政治家らしからぬ発言であり、到底「公約」にはなり得ない「しろもの」です。
 その他「日米地位協定改正の否定」は米国の意向を尊重するもの、「消費税減税の否定」は財務省の絶対条件に沿うものであって、それを国民に訴えること自体は「正直なこと」とはいえますが、決して国民を幸福にするものではなく、逆にそれに反するものです。

 併せて同氏の記事「1年で実現公約なら実績で信を問え」を紹介します。

追記)小泉氏は威勢よくスタートしましたが、その後は候補者討論会を経るごとに考えの甘さが明らかになる一方で、当初の勢いはなくなりました。
 現時点では支持率で2位につけているようですが、支持を失いつつある方向なので最終的に2位以内に留まれるかは不明です。
     自民総裁選得票率予測 上位3位(カッコ内は%)

メディア

1位

2位

3位

 

TV東京

石破(26)

小泉(20)

高市(16)

 

東京商工リサーチ

高市(24)

石破(17)

小泉(8)

 

毎日新聞

高市

小泉

石破

 

産経新聞

石破(26)

小泉(22)

高市(13)

 

           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
竹中持論 解雇自由化の公約化
               植草一秀の「知られざる真実」 2024年9月18日
小泉進次郎氏が自民党党首選出馬会見で明らかにした公約のうち、重要なものが四つある。
評価できるものが一つ。評価できないものが三つ。
評価できるのは政策活動費の廃止。具体的には政治資金規正法第21条の2の2項削除。
この条項を条文に潜り込ませた狙いは同法の骨抜きだ。

同法は政治家個人への寄附を禁止している(21条の2)。
ところが、21条の3の第2項に次の条文が付加された。
2 前項の規定は、政党がする寄附については、適用しない。
政党による政治家個人への寄附を例外として除外した。
この規定に基づき、自民党では幹事長に年間10億円もの資金が寄附され、その使途が一切明らかにされていない。これが「政策活動費」と呼ばれるもの。

21条の2の2項を抜け穴として活用してきたのは自民党だけでない。
維新と国民民主も巨額の資金を政策活動費等の名目で議員個人に寄附してきた。
維新の元衆議院議員が「政策活動費アジャース」と表現してきたのがこの問題。
政策活動費ありがとうございまーす」を「政策活動費アジャース」と表現したものだ。
政策活動費で党幹部が贅沢三昧していることを告発したもの。

自民党の党首選でこれを公約に掲げるなら、先の通常国会での審議中に自民党内で声を挙げるべきだった。
自民党は公明、維新と連携して、完全なザル法改定を強行した。
それを自民党党首選で突然示されても正面からは受け止められない。
進次郎言われても信じられないというのが主権者の反応だ。
公約に掲げ、1年以内に実現すると公言した以上、仮に首相に就任したら必ず実行しなければならない。

評価できない三つの公約は以下のもの。
1.解雇の自由化
2.日米地位協定改正の否定
3.消費税減税の否定

解雇の自由化は竹中平蔵氏が叫んでいたもの。最高裁判例で企業は雇用者を簡単に解雇できない。
このことを竹中氏は繰り返し批判してきた。小泉進次郎氏の背後に竹中氏の影が見え隠れする。小泉進次郎氏は菅義偉氏の傀儡。菅義偉氏は維新ともつながっている。
竹中、菅、維新が連携している姿が浮かび上がるが、その裏側で糸を引いているのが米国だ。これらの勢力がグローバル巨大資本の支配下に組み込まれている

党首選の公約に「解雇の自由化」を提示するのは、小泉氏が日本の経済問題をまったく理解していないことの表れだと見られる。
強い批判が沸騰したために、小泉氏があわてて発言を撤回しつつあるが、解雇の自由化は小泉氏が党首選公約として意気揚々と提示した第一の政策だ。
その政策を、批判を受けると直ちに撤回する。
自分の頭で十分に検討、吟味した結果として提示した公約ではないことが分かる。

リスキリングなどを強調しているが、企業に解雇の自由を付与すれば、労働者の身分が不安定化することは自明。
小泉氏は労働力のミスマッチを指摘したが、要するに、解雇自由化で生じることは、所得の高い正規労働者が解雇され、賃金の低い労働力不足業種の非正規雇用に転換されることが生じるだけだ。
小泉氏は格差解消を主張するが、高い賃金の労働者を減らし、低い賃金で足並みを揃えさせる格差解消を求める労働者はいない。

過去27年間、日本の労働者実質賃金は減少し続けてきた。
日本経済がまったく成長できなかったことも一因だが、この経済低迷のなかで大企業利益だけは史上空前の水準に拡大している。
株価も史上最高値を更新したが、株価上昇を一般市民が喜ぶわけにはいかない。
経済活動が生み出す果実の「分配」において、労働者の取り分が減り、資本の取り分が拡大したから、企業利益が拡大し、株価が上昇した
労働者を踏み台にして資本の利益だけが拡大したのである。

解雇の自由化はこの流れを一気に加速させる効果を発揮する。
地位協定改正否定、消費税減税否定もまったく評価できない。
まずは、小泉氏の党首選公約是非を冷静に評価することが必要だ。

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1年で実現公約なら実績で信を問え
               植草一秀の「知られざる真実」 2024年9月16日
9月27日に投開票日を迎える自民党の党首選は、新たに選出された党首がそのまま首相に就任することになる意味で、単なる自民党の党首選びと言えない側面を有する。
首相は行政権の長であり絶大な権限を有する。主権者国民が重い関心を注がねばならない。

岸田首相が辞任に追い込まれた大きな理由が二つある。
ひとつは自民党と統一協会の癒着に対する主権者の批判が強まったこと。
いまひとつは政治とカネをめぐり、自民党の巨大な組織犯罪が発覚したこと。
政府は統一協会に対する解散命令を裁判所に請求した。
政府が統一協会に対する解散命令を請求した理由は統一協会の行為が宗教法人法81条1項1号及び2号前段の解散命令事由に該当するものと判断したことによる。

統一協会は長期にわたり、多数の人々に対して自由に制限を加え正常な判断が妨げられる状況で多額の損害を被らせ、生活の平穏を妨げるとともに、多数の人々に多額の損害を被らせ、その親族を含む生活の平穏を害する行為をし、教団の財産的利得を目的として、献金の獲得や物品販売にあたり、多数の人々を不安または困惑に陥れ、その親族を含め財産的、精神的犠牲を余儀なくさせ、生活の平穏を害する行為をしたと政府は認定した。

この統一協会と多数の自民党議員が深い癒着関係にあった。
岸田首相は統一協会との関係を断ち切ると述べたが、地方自治体議員を含めて、依然として多くの自民党議員が統一協会との関係を断ち切ることができていないと見られている。
安倍首相は統一協会の関係組織であるUPF(天宙平和連合)にビデオメッセージを送っていた。岸信介氏の時代から岸・安倍家は統一協会と極めて深い関係を保持し続けてきたことが分かっている。この問題に対する自民党の事後処理は依然として十分とは言えない状況にある。

他方、自民党の組織犯罪問題はより深刻だ。
政治資金規正法の根幹は政治資金の収支を公開することにある。
政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにし、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的に同法が制定された。
同法は議員立法によって制定された。

政治資金の収支を公開することは同法の根幹。自民党は組織ぐるみでこの法律を犯した。
裏金に関しては所得税納付も行われていないと見られ、巨大脱税事件の疑いも存在する。
自民党が巨大犯罪組織であると表現できる。
違法行為を実行した議員は85名にも及ぶが日本の警察・検察当局は、このなかの3名しか摘発しなかった。日本の警察・検察の腐敗も鮮明になっている。

問題発覚とともに政治資金規正法の巨大な抜け穴にも改めて焦点が当たった。
同法は政治家個人への寄附を禁止しているが、政党が行う寄附を例外として除外している。
同法21条の2の2項の規定だ。
この規定を根拠に政党が「政策活動費」などの名目で政治家個人に寄附を行ってきた。
自民党では毎年、約10億円もの資金が幹事長に寄附されてきた。
この寄附については資金使途が一切明らかにされていない。
政治資金規正法の主旨を根底から否定する巨大な抜け穴だ。

自民党巨大犯罪が発覚したことを受けて本年の通常国会で法改正が行われたが、自民党、公明党、維新が主導して、何の実効性もないザル法改定が強行された。
21条の2の2項削除、連座制導入が必須の課題だったが、もぬけの殻のザル法改定だけが実行された。

今回の自民党党首選で有力候補となっている小泉進次郎氏は政策活動費の廃止を公約に掲げた。「決着」をアピールして1年以内に実現すると主張している。
その小泉氏が自民党党首選の直後に衆院解散・総選挙を実施すると公言している。
しかし、衆議院の任期は1年残っている。
小泉氏は公約実現の期限を1年と定めたのであるから、仮に小泉氏が新党首に選ばれ、首相に就任するなら、1年間で公約を実現し、その上で国民に信を問うのが順当だ。

「1年で実現する」との公約を掲げても、過去の自民党党首の公約を踏まえれば、その実現可能性に強い疑問が付せられる。
先に総選挙を実施してしまえば、仮に首相を続投することになった場合に1年で公約を実現できなくても、国民は不信任を表明できない。
小泉氏が1年間での公約実現を明言するなら、小泉氏が首相に就任する場合には、今後の1年間で実績を示し、その上で国民に信を問うのが当然の対応だ。
主権者は小泉氏に対して、この世論を突き付ける必要がある。
   (後 略)