マスコミの調査によると、自民党総裁選では小泉進次郎氏には当初の勢いがなく、順位は石破氏・高市氏の後を追う3位につけているという見方が多いのですが、進次郎氏のバックには名うての策士 菅義偉氏がついているので甘く見るのは危険でしょう。
進次郎氏と対照的なのが高市氏であり、いくら自民党だからと言って『極右』だけであれだけの勢いを持てるのでしょうか? 高市氏で特徴的なのは推薦人中に占める「旧統一協会と接点を持つ議員」の数が15人*と、全候補者中でトップである点です(*13人とも)。
進次郎氏が立候補表明の記者会見で、「首相になれば夫婦別姓を認める法案を国会に提出し、国民的な議論を進める。…もう議論ではなく決着をつけるときではないか」と軽やか?に述べたことが旧統一協会幹部をいたく刺激したために、その後彼らの支援を極右の高市氏に「一点集中」させた結果「この順位」になったといわれています。
進次郎氏は多分「旧統一協会」がそんな力を持っているとは考えなかったのでしょう。「旧統一協会」はネトウヨなどとは全く違い、特に選挙時には恐るべき力を発揮します。その点では高市氏はしたたかであり 見事なまでに彼らの力を活用しています。
高市氏は1994年にナチス礼賛本『HITLER ヒトラー選挙戦略』に推薦文を寄せたり、1994年から2001年にかけて少なくとも5回も統一協会関係紙「世界日報」に登場し、「夫婦別姓。私は大反対」などの発言を繰り返しています。
⇒(9月11日)米国の影と危うい新自由主義 進次郎出馬/高市早苗のヤバさは極右思想だけじゃない
前置きが長くなりましたが、元経産官僚の古賀茂明氏が掲題の記事を出しました。極右で大ウソつきの高市氏がもしも首相になれば日本は終わります。
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高市早苗氏の恐るべき“居直り体質”と“軍拡主義” もし首相になったら「日本は終わる」
古賀茂明 AERA dot. 2024/09/21
自民党総裁選挙が終盤に入った。全国紙などが行う世論調査では、石破茂、小泉進次郎、高市早苗の3氏が他の候補を引き離していて、 そのうちの2人が 決選投票に残ることがほぼ確実な情勢だ。
私はある陣営から自民党の党員・党友だけを対象にした9月16日実施の調査結果を入手した。2000人超の回答を得ているので、かなり信頼できるものだ。
それによると、石破氏の支持率が34.9%と非常に高い。1週間前にも同じ調査が行われたが、石破氏の支持率はほぼ変わらず安定的に推移しているそうだ。
一方、2位と3位には異変が起きた。1週間前には石破氏の後を追って小泉氏が2位につけていたが、今回の調査では2位が高市氏となっている。しかも高市氏が21.7%、小泉氏が17.2%で、その差は4.5ポイントも開いた。
小泉氏はもともと圧倒的に知名度が高く、序盤では石破氏と互角かそれ以上の支持を得ていたが、時間とともに失速するのが明確になった。
一方の高市氏は、小泉氏や石破氏に比べると、全国的な知名度はかなり低く、序盤での支持率は両氏にかなり引き離されていた。しかし、その後急速に支持を伸ばし、16日時点で小泉氏を抜いただけではなく、かなりの差をつけている。このまま行けば、高市氏と小泉氏の差はさらに広がりそうだ。
総裁選の決選投票では、石破対高市になる可能性がかなり高くなっているわけだ。
自民党員は、自民党内の動きには一般人よりもはるかに詳しい。
本コラムでは、1月下旬に行われた党員調査を紹介したことがあるが、その時も例えば上川陽子外相の支持率が意外と高かったのに驚いたのを覚えている。麻生太郎元首相が上川氏を持ち上げる発言をして注目され、一般の人はほとんど知らなかった時点の調査だったので、自民党員がいかに一般人よりも自民党内のことをよく知っているかが分かった。
今回も党員が小泉氏の発言などを詳しく見ていくことにより、同氏の実力に疑問を感じる人が増えていったということなのではないかと推測される。
高市総裁誕生の可能性も…
一方の高市氏は、自民党の総裁選挙管理委員会が党員などへの文書郵送禁止を通達する前に、政策リーフレットを郵送したことにより、党員に名前と政策を売り込むことに成功した可能性がある。仮にこの推測が正しいとすると高市氏の総裁選挙ルール回避行為によって情勢が左右されたことになり、総裁選そのものの信頼性に疑問が生じる。
1回目の投票で上位2人が石破氏と高市氏になった場合、決選投票で国会議員票がどう動くのかを見通すことは困難だ。
ただし 1回目の投票で石破氏が35%を超える党員票を得て、高市氏が20%程度にとどまった場合、2回目の投票で国会議員票を集めて高市氏逆転勝利という結果を導くことに国会議員が躊躇する可能性がある。石破氏支持の党員の声を無視して、国会議員が高市総裁を決めたとなれば、自民党への支持率が下がり、来たるべき総選挙で自分が不利な立場に立たされるという懸念を抱く議員が増えるからだ。
その意味では、石破氏が党員票でどれだけ高市氏を引き離すのかがカギになりそうだ。
先週、ある自民党の大物議員と複数の官僚OBと昼食を共にする機会があった。
そこでもやはり、石破氏有利ではあるが、高市総裁誕生の可能性も十分にあるということが話題になった。
興味深いのは、自民党総裁が石破氏になるか他の候補になるかで、今後の政治は全く異なるものになるだろうということで参加者の意見が一致したことだ。
石破氏以外の候補の話を並べてみると、結局は、金融緩和は続ける、大企業支援も中小企業支援も大々的にやる、子育て支援をやる、介護・保育労働者の賃金を上げる、地方への投資を拡大する、雇用の流動化や規制改革などで生産性を上げる、そして、軍備は拡張するというようなことが並ぶ。基本的に安倍政治が標榜していたこととの違いは見えない。
一旦決めた増税をやめるという茂木敏充氏を含め、アベノミクスの第1の矢である異次元の金融緩和と第2の矢の無責任な財政出動が主役の経済政策の継続を宣言しているようなものだ。河野太郎氏だけがかろうじて野放図な財政拡大への懸念を示したが、同氏を含め、アベノミクスへの正面からの反省の弁は誰からも聞かれなかった。
アベノミクスの結果として、通貨価値が下がって円安と物価高が進行し、上がらないと言われていた金利も上がり始め、政府の利払い負担が拡大する可能性が高まっている。
唯一、アベノミクスへの反省を見せる石破氏
このようにアベノミクスの弊害が噴き出す一方で、第3の矢として喧伝された成長戦略はいまだに成果が出ない状況だ。一方、各候補が唱える成長戦略には全く新味はなく、アベノミクスの焼き直しに過ぎない。これまで12年間近くやって失敗したのに、また同じことをやってうまくいくと考えているのだから「馬鹿につける薬はない」とはこのことである。
そんな中で唯一違いを見せているのが石破氏だ。
石破氏は、安全保障分野では、日米地位協定の見直し、さらには在沖縄米軍基地の共同管理という極めてハードルの高い問題を取り上げた。これまで自民党の中ではタブーとされてきた問題だ。アメリカに従属する日米同盟関係を見直したいという意欲が見て取れる。
石破氏は、アベノミクスについて検証するのは当然のことだとも述べた。
旧安倍派をはじめアベノミクスを信奉する議員たちの反発を買うのは得策ではないので、言い方はかなり注意深いものだったが、アベノミクスへの反省を踏まえた政策転換を打ち出そうとしていると見て良いだろう。こんなことを言えるのは石破氏だけだ。
石破氏が主張する金融所得課税強化もアベノミクスとの決別を象徴する政策だ。土地と株さえ上がれば良いという安倍晋三・菅義偉・岸田文雄各氏の政策を根本から否定すると言っても良い。格差放置政策転換の狼煙である。案の定、他の候補からは反対の集中砲火を浴びているが石破氏は揺るがない。岸田氏が、首相就任直後、「新しい資本主義」の象徴として金融所得課税について言及したが、株が下がると慌てて撤回したのとは大違いだ。
さらに、エネルギー政策でも、河野氏や小泉氏が脱原発から原発の新増設や建て替えまで認める完全な宗旨替えをするなど、他の全ての候補が原発推進を唱えるのに対して、石破氏だけが、再生可能エネルギーの最大限の拡大とそれによる原発依存度の低減を明言している。特に、原発のコストは再エネを上回るという当たり前のことを自民党議員としては珍しく正面から主張しているところを見ると、完全な「確信犯」であることがわかる。
前述のランチのメンバーの間では、決選投票の組み合わせが、石破対高市になるのか、石破対小泉になるのか、あるいは予想外の小泉対高市になるのかはわからないが、新総裁が小泉氏になれば、党内政治の波に翻弄され、おそらくこれまでの政治の延長、高市氏になれば、純化された安倍政治の強力な推進になるだろうという意見で一致した。高市氏の政策は、いわば「令和の富国強兵」である。
高市総裁誕生で訪れる「日本が終わる」シナリオ
高市氏が首相になったら、「日本が終わる」と私が言うと、「日本が壊されるんですよ」とか、「確実に緩やかな破綻になりますね」という意見が出た。
中国を極端に敵視し、そこと戦う準備を始めるのだから、防衛費はGDP比2%どころかその数倍でも足りないという議論がすぐに始まる。徴兵制は最後のテーマかもしれないが、日本の社会全体があらゆる意味で戦争に備える体制へと変わっていくはずだ。
もちろん、最初は全て国債発行で賄うが、早晩これは行き詰まる。すでに金利が上がり始めているのは、それに対する警鐘なのだが、そんなことにはお構いなしという政策が続くだろう。行き着くとこまで行くしかないのだ。戦争が始まらなくても、その準備は止まらないので、どこかで、社会保障や教育など国民生活のための予算は大きくカットせざるを得なくなる。
さらに心配なのは、幻の台湾有事を喧伝して台湾に独立を唆し、自ら戦争を誘発してそこに参戦するというストーリーだ。
その頃には、格差はさらに拡大し、戦争準備優先か戦争反対かで国民は分断されることになるだろう。
高市氏の怖いところは、その「居直り体質」だ。推薦人20人のうち、13人を裏金議員で固めて世間をあっと驚かせたが、これは、裏金問題を追及する国民に対する挑戦状である。さらに、高市氏は、総裁選で禁止された政策リーフレットの党員などへの郵送をルール実施直前だからと言って公然と配布した。ルール違反かどうかの問題もあるが、そもそも、党が金のかからない政治を目指すと国民にアピールしているのに、自分だけは、数千万円とも億円単位とも言われるリーフレット印刷・郵送を行ったのは、まさに背信行為だ。ルール施行前だったというがその証拠はどこにあるのか、巨額の資金はどこから来たのかという疑問も出てくるが、それらについて説明責任を果たしていない。
数々の自身のスキャンダルに対して公然と「何が問題なのか」というような態度を取り続け、本来リーダーにあるべき高い倫理観「李下に冠を正さず」とは正反対の「捕まらなければ何をしても良い」という「地に堕ちた倫理観」を体現した安倍元首相の亡霊が取り憑いたかのようだ。まさに「安倍晋三の真の後継者」である。
高市氏が首相になれば、こんな国に住みたくないという人が増えそうだ。
アメリカではトランプ氏が再び大統領になったらカナダやイギリスやオーストラリアなどに移住するという人がかなりいるそうだが、日本人は貧しいから逃げることもできない。
そんな恐ろしいシナリオを止めるのは、国民ではなく、自民党員・党友と自民党の国会議員である。しかし、自民党議員ははっきり言って国民のことなど考えていない。
前出の国会議員は、「自民党の議員は本当に質が下がっちゃったんだよ。こんな連中に日本のトップを選ばせていいのか 私は本当に不安だよ」と嘆いた。
最後の砦は、自民党の党員・党友だ。石破氏が高市氏に党員・党友票で大差をつければ、さすがの自民党議員もそれを覆すことはできないのではないか。
そうなることを切に期待したい。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。