TPP協定への新参加国が協定の素案やこれまでの交渉経過を閲覧できるのは、正式に参加国として認められてからなので、各国がこれまでに協議して決めた協定の素案や、各国の提案、説明資料、交渉に関わるEメールなど数千ページにのぼる資料に目を通せるのはその後からになると、東京新聞が報じました。
それによれば、米国の交渉担当官は「日本には正式な参加国になる前に一切の素案や交渉経緯を見せられない」と各国の交渉官に念押しをし、「日本には一切の議論の蒸し返しは許さず、協定素案の字句の訂正も許さない」と述べたということです。(東京新聞では最短で7月になるとしていますが、アメリカなどが直ちに議会に通告するという保証はありません。現実にカナダは11年11月に参加を表明しましたが、実際に交渉に参加したのは12年10月でした。)
この秘密結社ぶりは当初から知られていたことで、別に驚くべきことではありません。驚くべきは、決定の蒸し返しもできず、拒否することも出来ず、脱退することもできないという組織に、どういう内容の協定であるのかも全く知らないままで、血相を変えて飛び込もうとしている安倍首相や政府の振る舞いです。
とても正気の沙汰とは思えません。
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日本が一言半句の抗弁も許されないという900ページ余りのルール(24の分野に跨る総合的なもの)はもう殆ど出来ていて、参加国は既存の法制度とこれから制定する法制度を全てそれに適合するように強制されるという中で、一体安倍首相はどのようにして国益を守るというのでしょうか。
「TPP協定に入らなければ国益は守れるが、入れば守れない」の二律背反を理解できない首相が、日本の命運を決める不幸(憲法違反の行為)が眼前に迫っています。
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TPP協定素案 7月まで閲覧できず
東京新聞 2013年3月13日
環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、日本が交渉参加を近く正式表明した場合でも、参加国と認められるまでの3カ月以上、政府は協定条文の素案や、これまでの交渉経過を閲覧できないことが分かった。複数の交渉関係筋が12日、明らかにした。
オバマ米政権が「年内妥結」を目指し各国が交渉を進展させる中で、日本が交渉の詳細情報を得られるのは、最速でも3カ月以上たった7月ごろ。正確な情報を得るのが遅れ、日本が不利な状況で交渉を迫られるのは確実で、貿易や投資、各国共通の規制のルール作りに日本側の主張を反映させる余地がますます限られてくる。
交渉筋によると、正式に参加国と認められた段階で閲覧できるのは、各国がこれまでに協議して決めた協定の素案や、各国の提案、説明資料、交渉に関わるEメールなどで、数千ページにのぼる。参加国以外には公表しない取り決めになっている。
日本政府は協議対象となる輸入品にかける税金(関税)の撤廃や削減、食品の安全基準のルール作りなど21分野で関係省庁が個別に情報収集しているが、交渉の正確な内容を入手できていない。ある交渉担当者は、日本側の関心分野の多くは「参加国となって文書を見られるまで、正式には内容が分からないところがある」と述べた。
日本が参加国と認められるには、各国の承認が必要で、米国の例では議会の承認を得るために最低90日は必要な仕組みになっている。安倍晋三首相が近く参加表明した場合でも、5月に南米ペルーで開く第17回交渉会合に、日本は傍聴者(オブザーバー)としても参加できない。
シンガポールで13日まで開催中のTPP第16回交渉会合で情報収集する日本の非政府組織(NGO)アジア太平洋資料センターはじめ、米国、ニュージーランドの市民団体によると、米国の交渉担当官は会合で「日本には正式な参加国になる前に一切の素案や交渉経緯を見せられない」と各国交渉官に念押しした。さらに、「日本には一切の議論の蒸し返しは許さず、協定素案の字句の訂正も許さない」と述べた。