広島高裁は25日、「1票の格差」が是正されないまま行われた昨年12月の衆院選は無効であるとする判決を下しました。全国の高裁に合計31
選挙区の選挙は無効であると訴えた16件の訴訟のうち、これまで8つの判決が下されましたが、選挙無効の判決は広島高裁だけでした※。
※内訳は「違憲で無効」:1件、「違憲」:5件、「違憲状態」:2件
国政選挙が無効とされるのは戦後初めてで、ここまで踏み込んだのはもはや司法が単に違憲を宣言するだけでは、国会の自浄能力は期待できないと判断したものと思われます。また全ての高裁がこれまでの審判に比べて格段に早く判決を出すべく動いているのは、「判決が出るのが遅くて、是正が間に合わなかった」という国会の言い訳を封じようという司法側の意思によるものと言われます。
行政側は、違憲判決に対して全て上告の手続きを取るものと見られています。
26日には東京、大阪、広島、岡山、松江、宮崎、那覇の7か所、さらに27日には秋田の高裁や高裁支部で判決が言い渡され、全ての高裁判決が出そろうことになります。
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昨年の衆院選「無効」 一票の格差で初
東京新聞 2013年3月26日
最大二・四三倍の「一票の格差」が是正されずに実施された昨年十二月の衆院選をめぐる全国訴訟の判決で、広島高裁は二十五日、小選挙区の区割りを「違憲」と判断し、広島1、2区の選挙を無効とした。同種訴訟の無効判決は初。ただ、混乱を招かないために無効となるのは、衆院選挙区画定審議会が改定作業を再開してから一年となる今年十一月二十六日を過ぎた時点からとした。
筏津(いかだつ)順子裁判長は判決理由で「選挙権の制約や民主的政治過程のゆがみは重大。最高裁の違憲審査権も軽視されている」と指摘。格差の抜本的な是正に乗り出さなかった国会の怠慢を厳しく指弾した。
被告の広島県選挙管理委員会は上告するとみられ、無効判決が確定しない限り選出議員は失職しない。一連の訴訟で小選挙区についての判決は八件目で、違憲判断は六件目。最高裁大法廷が他の訴訟と合わせて統一判断を示す見通し。
二〇〇九年の衆院選について最高裁大法廷は一一年三月、各都道府県にあらかじめ一議席を配分する「一人別枠方式」による最大格差二・三〇倍の区割りを違憲状態と判断。昨年十一月に議員定数を「〇増五減」する緊急是正法が成立したが、昨年十二月の衆院選には適用されず格差は拡大した。
筏津裁判長は、一一年三月十一日の東日本大震災を考慮し、国会での是正期間が「ある程度長い期間になってもやむを得ない」と理解を示したものの、最高裁判決から一年半という基準を示し「憲法上要求される合理的期間内に是正されなかった」と指摘。「事情判決とするのは相当ではない」と結論付けた。
一方で「直ちに無効とすると、選挙区の議員が存在しない状態になる」と、一定期間が過ぎた後に選挙を無効とする「将来効判決」を選択。その時期を「十一月二十六日の経過後」とした。
二つの弁護士グループが全国十四の高裁・高裁支部に提訴した。今回の原告は山口邦明弁護士のグループで、現状の議席の配分は人口分布に比例していないため、三十一都道府県で議員の過不足があり、選挙権の価値に不平等を生じさせたと選挙無効を求めていた。
これまで五高裁(支部を含む)が「違憲」、二高裁が「違憲状態」と判断したが、いずれも無効請求は棄却していた。
議員一人当たりの有権者数の最大格差は千葉4区と高知3区の二・四三倍。高知3区に比べ、今回の訴訟の対象となった広島1区は一・五四倍、広島2区は一・九二倍だった。
衆院選「無効」判決 「国会全体の責任」
東京新聞 2013年3月26日
昨年十二月の衆院選を無効とした二十五日の広島高裁判決を受け、与野党からは「国会全体の責任だ」などと自戒の声も上がった。「一票の格差」是正を怠り、衆院解散に踏み切ったことへの批判も出たが、原因は立法府自身にもある。
衆院解散時に政権与党だった民主党の細野豪志幹事長は記者会見で「非常に衝撃を受けた。国会全体の責任であり、正当性に厳しい判断が下された」と指摘。「一刻も早く違憲状態を脱することが必要だ。札幌と福岡の高裁判決で(小選挙区の)〇増五減は不十分との判断も下されている」と制度の抜本改革を主張した。
自民党の石破茂幹事長は記者会見で、格差是正に関し「憲法上の要請で極めて急ぐものだ」と強調。抜本改革を同時に進めるべきだとの意見に対し「セットで議論すると解消が遅れる。全党が責任を持つ認識を持ってほしい」と〇増五減の先行を求めた。
公明党の山口那津男代表は政治の責任に触れ「結論を出す努力が十分でなかったことは肝に銘じなければならない」と表明。是正論議の進め方は「まずは〇増五減をやり遂げることが重要だ」と石破氏に同調した。
日本維新の会国会議員団の松野頼久幹事長は「無効判決の可能性がある状態で選挙に突き進んだことを反省しなければいけない」と強調。生活の党の森裕子代表代行は「衆院解散に追い込んだ安倍晋三首相にも責任がある」と指摘し、みんなの党の渡辺喜美代表は「あるべき選挙制度を議論し、やり直し選挙をすべきだ」と夏の参院選との同日選実施を求める考えを示した。
共産党の市田忠義書記局長は「比例代表中心の制度への抜本的な改正に全力を尽くし、衆院解散で信を問うのが判決に応える」と主張。社民党の又市征治幹事長も比例代表中心の制度か中選挙区制の導入を訴えた。