22日の衆院委員会で、国家の主権を侵害するとされるISD条項による訴訟の実績で、米国が無敗であることが明らかにされました。共産党の佐々木議員は「主権を危うくするもの。TPP参加をやめるしかない」と強調しました。
ISD条項に関しては、2月に行われた「TPPを慎重に考える会 勉強会」(衆院第2議員会館)で、講師の岩月浩二弁護士は要旨次のように述べたということです。
「ISD条項が適用されると、投資家が直接に国家と交渉することができるようになり、外国投資家が国家を超える存在となる。
ISD条項は日本国憲法第76条1項(司法権の独立)に、『外国投資家と国・地方公共団体に関する紛争については、司法権は外国投資家の選択による私設国際仲裁裁判所に属する』という但し書きをつけることになり、憲法違反。
憲法違反の協定を結ぶことは誰にもできない。」
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/59414
ISD条項の異常性が良く分かります。
またTPPにはISD条項の他にも、米国により数々の独善的な条項が盛り込まれています。
「驚愕の不平等条約TPPの毒素条項を解明する~これでもTPPに参加するのか!」 http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=273291&g=123201 にそれらの条項がリストアップされ解説も載っているので、以下に抜粋・要約させていただきます。
☆ISD条項
例えば参加国に投資した米国企業が同国の政策変更により損害を被った場合に、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センター(米国の制御下にある)に提訴できる。
☆ラチェット条項
貿易などの条件を一旦合意したら、後でどのようなことが発生してもその条件は変更できない。一度決めた開放水準は逆戻しできない。(ラチェットとは、一方にしか動かない爪歯車機構)
☆NVC条項(Non-Violation Complaint条項)
「非違反提訴」(米韓FTAで新しく登場)。米国企業がある国で期待した利益を得られなかった場合に、相手国がTPPに違反していなくても米国政府が同企業に代わって国際機関に提訴できる。例えば米国の民間医療保険会社が「日本の国民皆保険のせいで売上が伸びない」と米国政府に対し提訴を求めることができる。
☆スナップバック条項
米国が相手国の違反や米国が深刻な影響ありと判断するときは、関税撤廃を反故にできる。(米国にはラチェット条項はかからない)
☆米国の最恵国待遇
将来、参加国が他の国に米国よりも条件の良い最恵国待遇を与えたときは、自動的に米国にも付与・適用される。
☆ネガティブリスト方式
「非開放分野」として明記されたもの以外は全てが開放される。
☆規制必要性の立証責任と開放の追加措置
ネガティブリストにうたっても規制の必要性を立証できない場合は、市場開放の追加措置が取られる。例えば「コメ」をネガティブリストに加えていても、その規制の必要性を立証できなければ無条件で開放させられる。(立証の成否は誰が判断?)
以下にしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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米国無敗のISD 佐々木氏“主権侵害は明白”
しんぶん赤旗2013年3月24日
日本共産党の佐々木憲昭議員は22日の衆院財務金融委員会で、環太平洋連携協定(TPP)に盛り込まれる「企業と国家の紛争解決(ISD)条項」について「国の主権を侵害することは明白だ」と指摘し、交渉に参加しないよう求めました。
ISD条項は、多国籍企業が進出先の政府から「不当な法律や規制で損害を受けた」とみなした場合、国際的な第三者機関に提訴し、それが認められると進出先の国から賠償を得られる制度です。
外務省は (1) 第三者機関は仲裁人3人の多数決で決まり、上訴できない (2) 問題とされた制度の必要性は争われず、「不利益」の有無だけが裁定の争点になる とのべました。
佐々木氏は、米国がISD条項で訴えられた14件のうち負けたのはゼロ。一方で、カナダとメキシコが提訴された46件のうち30件は米国企業が原告だったことを紹介し、「ISDをいかにアメリカが有利に使ってきたかがわかる」と強調しました。さらに「企業の言い分が認められたら、国民の税金で賠償し、しかも結果的に外国企業の言うとおりの制度にしなければならなくなる。主権侵害の極めて重大な仕組みだ」と指摘しました。
安倍晋三首相は「日本企業も外国政府を訴えられる仕組みであり、平等な条約だ」と正当化しました。佐々木氏は「主権を危うくするもの。参加をやめるしかない」と強調しました。