2013年3月19日火曜日

憲法改悪阻止のために


法学館憲法研究所ホームページの「今週の一言」のコーナーに、「憲法改悪阻止のために―自民党改憲案から考える」と題する論文が載りました。
字数の制約があるために短い論文になっていますが、自民党改憲案の問題点が極めて簡潔に述べられています。 

9条の改が機密保護法・軍事裁判・海外派兵などを含む完全な軍隊の保持を目指したものであることや、自民党改憲案は一貫して国家を国民の上に置いて、国民の基本的人権を抑圧しようとしているものであることなどが述べられて、こうした自民党改憲案の危険性が分かれば、なおさら現行憲法の優れている点が良く分かるので、それが改憲阻止の力になるとまとめています。 

以下に事務局のつくった要約文を掲載します。
URLをクリックすれば原文にジャンプするのでどうぞ原文もお読みください)
末尾に「自民党改憲案の第九条(抜粋)」を添付しました。
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【法学館憲法研究所 今週の一言】 
憲法改悪阻止のために―自民党改憲案から考える
吉田健一 2013318
憲法会議代表幹事・弁護士
(要旨 事務局要約)
 「自民党改憲案と比べると現行憲法の意味や大切さがよく理解できる」とある学習会の参加者から感想が寄せられた。
 昨年12月、改憲を明言する安倍首相が誕生した。自民党、さらには維新の会など合わせると改憲を進めようとする衆議院議員は75%にも達している。
当面、96条改憲を目指すとしながらも、9条に焦点をあてた改憲をねらっていることはいうまでもなく、今年の参議院選挙での結果によっては、改憲の動きが加速される危険が大きい。

あらためて自民党改憲案がどのようなものなのかを条文に沿って検討すると、現法憲法のどういう点が否定されようとしているのか、具体的に考えさせられる。
自民党案は戦争を行うことを前提にし、9条を改憲して徹底的に現行憲法を否定する内容となっている。憲法前文からは、戦争遂行に障害となる平和的生存権も消し去られている。
 
そして戦争をするための国防軍を保有し、海外での活動を含めた役割が明記される。軍隊の統制、秘密の保持、軍事法廷(審判所)の設置が規定される。
国民も、領土等の保全や資源の確保のために協力させられる。
戦争になれば国民の権利を制限できる緊急事態法制が導入される。 

 自民党案は、基本的人権が侵すことのできない永久の権利である(97)とした天賦人権規定を削除し、基本的人権には責任及び義務が伴うとし、公益及び公の秩序に反してはならないとする。これは本質的な違いである。
集会、結社、言論の自由においては、公益及び公の秩序による制限を重ねて強調している。
家族の尊重や助け合いまでうたわれ、国とか「公」の立場がしきりに強調される。国旗国歌を尊重することまで国民に義務づける。

国民が個人として尊重されるために権力の横暴を制限するはずの憲法が、逆に国民を制限するものとされてしまう。
 改憲を発議できる要件を議員の3分の2から過半数に緩和する96条の改憲はもとより重大問題である。
 

このような自民党案の危険性とあわせて、現憲法が戦争を否定し、国民が個人として尊重されるための仕組みをつくっている意味を確認し、国民に知らせることが改憲の動きを止める大きな力になる。
 憲法改悪を許さないために、諸団体や労働組合、研究者が一緒になって、憲法を学び、憲法を実現する運動を進めてきた。
 いよいよ正念場である。
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参考資料
自民党改憲案の第九条 (抜粋)

第九条   (略)
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない
 
(国防軍)
第九条の二 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2   (略)
3   (略)
4 前二項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

(領土等の保全等)
第九条の三 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。