2013年3月16日土曜日

ISDS条項は国家主権の上に裁定機関を置く取り決め


 16日付の植草氏のブログに「ISDS条項は国家主権の上に裁定機関を置く取り決め」と断罪する論説が載りました。
世界銀行の一画に集められた数人の弁護士が 「投資家の利益」優先の裁定を下して莫大な賠償金を相手国に課すことが出来るシステムは、国家主権を上回るものに外ならないという指摘です。「TPPは憲法無視の協定」と言われる所以です。

 以下に同ブログの公開部分を紹介します。
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安倍氏TPP交渉参加表明 NHK大越記者腰抜け質疑
植草一秀の『知られざる真実』 2013316

安倍晋三氏がTPP交渉に参加することを正式に表明した。
 記者会見もおざなりの対応だ。
 質疑応答を担当する司会者は、質問者を固有名詞で指名して質問を受けていた。
 差し障りのない質問をする記者をあらかじめ決めておいて、その記者からの質問だけを受けているのだと思われる。
 「やらせ」記者会見と言って差し支えないだろう。
 このような重大な事案の記者会見をするのなら、少なくとも時間を十分に取り、広く質問を受けるべきだろう。
TPPは郵政民営化のマグニチュードをはるかに超える影響力のある施策である。
 郵政民営化がマグニチュード8であるなら、TPPはマグニチュード9ないし、マグニチュード10に匹敵するインパクトを持つ。 

TPP参加の問題点を改めて5点示す。
 1.日本の農業が破壊される。これは同時に、日本の文化、伝統、共同体社会が破壊されることを意味する。
 2.国民の生命・安全・健康を守るための諸規制、諸制度が破壊される。
 3.公的医療保険制度の根幹が破壊される。
 4.共済制度が破壊される。
 5.ISDS条項で国家主権が失われる。
 この5点だ。

 最大のポイントは5のISDS条項にある
 これを呑まないなら、救いの道は出てくる。
 ISDS条項は国家主権の上に、裁定機関の決定を置く取り決めである。
 この条項があるから、さまざまな制度の崩壊を防ぐことができなくなるのである。
 
安倍晋三氏はNHKニュースウォッチ9に出演した。NHKを代表する偏向記者である大越健介氏が「やらせインタビュー」を行った。
 自民党が決議した内容について、井上あさひ氏が質問した場面で、大越氏が本性を表わした。
 自民党決議は、
 1.コメ、牛肉、乳製品、砂糖、小麦の5品目を関税撤廃の例外とする
 2.国民皆保険を守る
 3.日本の主張が受け入れられない場合にはTPP撤退を辞さない
 の三つだった。

 これに対する安倍氏の発言ですべてが明らかになっている。
 安倍氏はこう言った。
 「国民皆保険を守ることは確約する。しかし、例外5品目については、できる限りの対応を取る。できる限りの対応とは、関税撤廃の緩和措置および国内対策のこと」
 つまり、国民皆保険は守るが関税撤廃の例外設定は実現できないことを示唆したのである。
 ガスだけ抜くが、根幹はすでに決まっている。完全な「出来レース」である。
 
まともなインタビュアーであるなら、ここで、
 「例外5品目が認められない場合には交渉から撤退するとの判断をするのか」
 と詰めるべきである。

 安倍氏は、これに対して明確な回答を示さない。
 そのことによって、例外5品目については、「必ず守る」事項ではなく、「単なるガス抜き、リップサービス」であることが明白になる。
 これがスタジオインタビューを行う意味なのだ。

 官邸での記者会見も同じだ。
何よりも重要なことは、ISDS条項を排除することだ。
 自民党は総選挙公約にこの点を盛り込んだ。
 これが主権者国民との契約である。
 これを受け入れれば、日本は国際資本によって好き放題に改変される。
 日本の命運を分かつ重大事項なのである。

 この意味では郵政民営化の方がまだまともだった
 郵政民営化に賛成するか反対するかの総選挙が行われたからだ。
 国民がメディアの誘導に乗せられて郵政民営化に賛成してしまった点は大いに反省しなければならないが、それでも、主権者に最終判断を委ねた点は評価できる。
 
 それを、国民にペテンをかけるような言い回しで、国の命運を分かつ問題で暴走する安倍晋三氏は許されない
 主権者国民は、手遅れにならぬうちに、安倍政権を倒閣しなければならない。

(有料ブログのため以下は非開示)