静岡大学はこれまでも「憲法」の講座を市民に公開してきました。ここ2年間は市民の聴講生はゼロでしたが、このところの憲法ブームを反映してか、今年は4名が受講しています。
もともと人文社会科学部の学生を対象にした講座=「憲法総論・統治機構」に聴講生として参加するスタイルで、全15回(週1回)にわたる講義は日本国憲法の成り立ちから説き起こす本格的なものです。
講座を担当する小谷順子教授(憲法学)は、「憲法の学習はまず条文を読むことから始めてほしい」と語っているということです。
以下に中日新聞の記事を紹介します。
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憲法授業、静かな人気 静大の市民開放講座
中日新聞 2013年7月4日
改正を考える前に憲法を基礎から学びたい-。安倍政権が初めて臨む国政選挙の参院選の公示が四日に迫り、憲法改正が現実的な政治課題となる中、静岡大(静岡市駿河区)が開く市民開放講座で憲法をテーマにした授業が静かな人気を集めている。
講座は、火曜日に開かれている「憲法総論・統治機構」。人文社会科学部の学生向けの授業だが、毎年学外の聴講生にも公開する。担当する小谷順子教授によると、一昨年と昨年は聴講生がいなかったが、今年は四人が受講している。
元静岡市職員の望月千裕さん(64)=静岡市清水区=もその一人だ。きっかけは昨年十二月の衆院選の一票の格差をめぐり、全国の裁判所で違憲判決が相次いだこと。「違憲状態をほっておいてはいけないという思いが、憲法への関心につながった。四十年前に単位を取るために勉強したことをもう一度、基本から学び直したかった」と話す。
全十五回の講義では日本国憲法の成り立ちから説き起こす。受講前、望月さんは「今の憲法はアメリカに押しつけられたもの」という印象を持っていたが、実際には連合国軍の草案に対して日本政府がさまざまな変更を加えていたことを知った。「あらためて条文を読むと非常に良く考えられている。押しつけじゃないなら、そう簡単には変えられない」。憲法を時代に即して変えることには賛成だが、改正のハードルを下げる九六条の先行改正には反対の立場だ。
参院選でも憲法改正が争点となっているが、国民的議論にはなっていない。「参院選が終われば三年近くは国政選挙がない。国の最高の決まり事なのだから短兵急に変えるのではなく、国民の目線に立った議論をしてほしい」と注文をつけた。(木谷孝洋)
◆「まずは条文読んで」
市民は憲法とどう向き合ったらいいのか。静岡大人文社会科学部の小谷順子教授(憲法学)に考えるヒントを聞いた。
「憲法は、国の権力者が暴走しないように拘束するための法律。私たちが自由に発言し、生活できているのは憲法のおかげだ。今の憲法で何が不自由なのか、九条を変えて実際に何が変わるのか。改正を議論する際にはそのことをよく考えたい。憲法は目に見える形で生活に影響を与えるものではない。その点で議論しづらい面があるが、生活の根本を支えているものでもある。国民としてその内容を知っておく責任がある。まずは条文を読むことから始めてほしい」