29日、TPPに反対する弁護士ネットワークが立ち上がりました。共同代表は全日弁連会長の宇都宮健児弁護士ほかです。
ISD条項による仲裁が国外の裁判所で行われることは、日本国憲法第76条1項の「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」の規定に反します。従って例えば憲法76条1項に後に『ただし、外国投資家が投資家国際私設法廷へ提訴する場合は、この限りではない』とでも付記する『憲法改正』を行わない限り、憲法違反の協定になります。
このISD条項が憲法違反とする主張は以前から弁護士などから上がっていました。しかし指摘されれば小学生にも理解できるこうした事実を、何故かマスメディアは一切報じてきませんでした。
それに加えて、2011年にドイツの国会が福島原発事故を受けて脱原発を決めたことに対して、スウェーデンの電力会社が38億ドル(約4000億円)の損害賠償を求めて提訴したり、韓国が日本のようなエコカー制度を導入しようとすると、米国自動車業界が韓米FTAを盾にして訴えを起こすなどして、他国の企業の株主たちが公然と国会の立法機能に干渉・妨害してくるということが現実に起きています。
これは「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と国民主権原理を規定した憲法41条にも反するものです。
もはや正義の旗を巻いたマスメディアには何も期待できないなかで、弁護士ネットワークの活躍によってそうした意識が急速に国民に広がって、TPP脱退の方向に民意を集中させて欲しいものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ISDは憲法違反 弁護士が反TPPでネットワーク
JAコム(農政・農業ニュース)2013年7月29日
TPP(環太平洋連携協定)に反対する弁護士ネットワークが7月29日に立ち上がり同日記者会見をした。共同代表は宇都宮健児氏、岩月浩二氏、伊藤正之氏が就任。弁護士318人が参加している。投資家が国家を訴えることができるISD条項がTPPに盛り込まれようしているが、弁護士グループはこれは憲法違反だとの主張を広く展開し、農業や医療などの分野でTPP反対運動を展開しているさまざなグループと連携して交渉からの即時脱退をめざす。
◆76条の司法権を侵害
記者会見に出席したネットワーク代表ら 宇都宮氏は「日本国憲法では日本国内で裁判することになっている。しかし、ISD条項による仲裁は国外で裁判を行うことになっている」と指摘。日本国憲法第76条1項では「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と規定している。しかし、宇都宮氏が指摘するように、韓米FTAや北米自由貿易協定(NAFTA)に盛り込まれて活発に提訴が行われているISD条項による裁判はワシントンにある世界銀行傘下の国際仲裁機関など、提訴された国以外で行われている。
この問題に早くから警鐘を鳴らしてきた名古屋市の弁護士・岩月氏は、かりに投資家による国家の提訴を認めるISD条項を締結するなら、「司法権を定めた憲法76条1項に後に『ただし、外国投資家が投資家国際私設法廷へ提訴する場合は、この限りではない』とでも付記する改正をしなければならない」と強調した。
「国際私設法廷」としている意味について、岩月氏はISD条項で提訴された場合、「投資家と提訴された国家がその案件限りで裁判官を選ぶ仕組みだから」と、その問題点を強調した。
◆政策を萎縮させる
弁護士ネットワークは「TPP問題が農業の関税問題に矮小化されている」として、日本の法律、制度にも大きな影響を及ぼすISD条項について広く訴える必要があるとする。 ISD条項について韓国法務省は、あらゆる政府や自治体の措置(条例や立法)が提訴の対象になると見解を発表している。
たとえば、2011年、ドイツが福島原発事故を受けて脱原発を決めたことに対して、スウェーデンの電力会社が38億ドル(約4000億円)の損害賠償を求めて提訴した。また、韓国は日本のようなエコカー制度を導入しようとしたが、米国自動車業界から韓米FTAに反すると訴え、韓国政府は制度導入を見合わせている。
このように一国の基本的な政策決定にまで影響を及ぼすほか、韓国のエコカー制度をめぐる対応のように、自ら制度や政策を引っ込めてしまう「萎縮効果」がISD条項にはある。
こうしたことからISD条項は「国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と国民主権原理を規定した憲法41条にも反する疑いが強いとして、ISD条項は「日本国憲法の根本的改変にも等しい事態を招く」と強調している。共同代表のひとり、伊澤正之氏は「TPPの本質は米国投資家の保護が本質」と批判。岩月氏は「国家が投資家に賠償金を支払って紛争を解決するにすぎないというが、ドイツの提訴例のように4000億円も支払って国策を維持していけるのか。そもそも投資家が政府を引っ張り出して提訴すること自体が異常な構造だ」と指摘した。
現在、北海道から沖縄まで各地で弁護士がTPP交渉について勉強会を開いており、今後は業界団体とも連携して法律面からTPP反対運動をサポートするほか、国会議員にも働きかけ、当面は情報公開を求めるとともに交渉から即時脱退を訴えていく方針だ。