安倍首相は、都内で開かれた改憲を目指す市民らの会合に寄せたビデオメッセージの中で、憲法を改正し2020年の施行を目指す意向を明らかにしました。
安倍首相は在野中に長時間を掛けてまとめた12年版自民党改憲案が野党から様々に批判されると、それにはこだわらないとしてあっさりと引っ込めました。国会で多数を握っていても国民投票で支持されないと思ったのかも知れません。
それでどんな代案にまとめるのかが注目されていましたが、ビデオメッセージでは9条に自衛隊の存在を明記することと高等教育の無償化を提起しました。
高等教育の無償化については反対する人はいないと思われるのでとりあえず措くとして、自衛隊の合憲性についてはこれまで内閣法制局は次のように説明して来ました。
憲法第13条はすべての国民は生命、自由及び幸福を追求する権利を認めていて、国にはそれを保障する義務があるのに対して、万一他国から不正な侵攻を受けたときに、自国民を守ることが出来なければ国民のそうした権利が蹂躙されることになるので、そうなることを防ぐためにいわゆる自衛隊を保有することは認められるというものです。
それはそれで筋が通っていると思うのですが。一方で憲法9条を素直に読めば自衛隊の保有を認めるものでないことも明らかで、先に行われた衆院憲法審査会で参考人全員が自衛隊は憲法9条違反であるとしました。
自衛隊は前身の警察予備隊・保安隊を経て設立されてから既に60年以上が経過していますが、現在も憲法との関係は継子扱いされたままです。その一方で、若い世代では自衛隊が「認知されるべき」だとする意見がかなり優勢です。
とはいえここまで引き延ばされてきた問題を、何も戦争大好きの安倍政権下で決着させなければならないということはありません。自衛隊の「市民権」については、信頼できる政権の下でいつかは検討すべきテーマであると思います。
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安倍首相 憲法改正し2020年施行目指す意向を表明
NHK NEWS WEB 2017年5月3日
安倍総理大臣は、東京都内で開かれた憲法改正を目指す市民らの会合に寄せたビデオメッセージの中で、憲法を改正し2020年の施行を目指す意向を表明しました。また具体的な改正項目として、戦争の放棄などを定めた憲法9条に、自衛隊に関する条文を追加するほか、高等教育の無償化などを例示しました。
この中で、安倍総理大臣は「かつて1964年の東京五輪を目指して、日本は大きく生まれ変わった。その際に得た自信が、その後、先進国へと急成長を遂げる原動力となった。2020年もまた、日本人共通の大きな目標となっている」と述べました。そのうえで、安倍総理大臣は「新しく生まれ変わった日本がしっかりと動き出す年、2020年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っている。私はこうした形で国の未来を切り拓いていきたい」と述べ、憲法を改正し2020年の施行を目指す意向を表明しました。
また安倍総理大臣は、具体的な改正項目について「私は、少なくとも私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきであると考える」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は「もちろん9条の平和主義の理念は、未来に向けて、しっかりと堅持していかなければならない。そこで『9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む』という考え方は、国民的な議論に値するのだろうと思う」と述べ、戦争の放棄などを定めた憲法9条に、自衛隊に関する条文を追加することを挙げました。
さらに安倍総理大臣は「70年前、現行憲法の下で制度化された、小中学校9年間の義務教育制度、普通教育の無償化は、戦後の発展の大きな原動力となった。70年の時を経て、高等教育についても全ての国民に真に開かれたものとしなければならない」と述べ、高等教育の無償化なども改正項目として例示しました。「教育無償化」は義務教育以外にも授業料を取らない範囲を広げていこうという考え方で、日本維新の会が去年発表した憲法改正原案に盛り込んでいます。
安倍総理大臣は、第2次安倍内閣発足以降、国会などで憲法改正に前向きな発言をしてきましたが、スケジュール感や改正項目について具体的に踏み込んで発言するのは初めてのことになります。