21日に「室井佑月の連載対談『アベを倒したい!』」第5回(前編)を紹介したまま、その(後編)が翌日のLITERA紙に掲載されたのを見落としておりました。
大変遅くなりましたが(後編)を紹介します。
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室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」 第5回ゲスト 小池晃(後編)
室井佑月が共産党・小池晃に説教!?
「共産党はネットの使い方が下手すぎ」「ネトサポに対抗する組織つくれ」
LITERA 2017年5月21日
日本共産党書記局長・小池晃参院議員を迎えてお送りしている室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」。前編では、森友問題はもちろん、安倍政権による北朝鮮危機の政治利用や共謀罪強行、2020年新憲法施行宣言の批判で意気投合、「安倍首相は後ろめたいときキレる」「自分に媚びない女性に厳しい」など、安倍首相を徹底ウォッチしてきた二人ならではの分析まで飛び出した。
ところが、後編では一転して、室井佑月が共産党と小池議員に「野党連合は大丈夫なのか」と追及。「共産党は真面目すぎ」「ネットやマスコミの使い方が下手すぎ」と説教を始めたのだった。はたして、共産党書記局長でもある小池議員はどう答えるのか? そして、野党連合の行方は? (編集部)
小池晃が「NHKの国会ダイジェストを見ると、僕が言い負かされてるみたい」と
室井 でも、これだけいろいろあっても、安倍政権の支持率って下がりませんよね。そうそう、小池さんにあったら、これをぜひ陳情したいと思っていたんですけど、世論調査って、信用できるんですか。マスコミの世論調査の実態について調べてほしい。だって怪しいんだもの。私のまわりには仕事じゃなきゃ、安倍さんマンセー! なんて人、いませんよ。地域や年齢層、時間帯、やりとりがどんなものなのか。本当に公正で正確な調査なのか。意図的な誘導があるんじゃないかと。
小池 内閣支持率はそんなことはないと思いますが、室井さんのおっしゃる通り、恣意的な世論調査もありますよね。「テロに対して備えるための、テロ等準備罪がありますが、どう思いますか?」と聞かれたら、「反対」とはなかなかなりません。たしかに、安倍政権の支持率が落ちないのは、野党の結束力の弱さ、与党・自民党に代わる力を示せていないことが原因のひとつにあると思います、でも、一方では、そうしたメディアの問題も大きいと思います。
室井 そうなんです! 国会中継のダイジェストなんてひどいですもんね。安倍さんが反論にならない論理をかざして逆ギレしている答弁を、上手に編集して、「なんか強そうな勇ましい人だ」「負け知らずでタフ」というイメージに仕上げてしまう。これこそ悪質な情報操作だと思うんです。
小池 そういえば、自分の国会質問を後からテレビで見ると、「これ、俺が負けているみたいだな」と思うことがありますね(笑)。
室井 実際は全然違うのに。
小池 さっき言った「妻を犯罪者扱いするのは不愉快だ」発言のときもそうでした。私は「昭恵夫人と籠池理事長がいつから知り合いか」と質問しただけなのに、安倍首相の「不愉快だ!」という逆上場面だけを流して、私の質問も反論もカットしてしまう。だから、犯罪者扱いした小池に対して、安倍首相が妻をかばったかのような印象をもたれてしまうんです。後でNHKの担当記者に「なぜあそこだけ切り取って流すのか」と聞いたら、「そうした方が、安倍さんの異常さがわかるんじゃないですか」と言っていました。でもそれはまったく逆だと思います。
室井 あの不愉快発言も、ネットでは「安倍ちゃん最強!」なんて絶賛されてましたもんね。
小池 テレビのニュース番組などでもほとんど政権批判がなくなりましたね。テレビの討論番組も少なくなった。以前は、『サンデープロジェクト』(テレビ朝日)などで政党討論をやっていましたが、最近は有識者討論ばかり。やるとしてもBSでしょう。
室井 安倍さんが首相になってから、安倍政権に批判的なコメンテーターはどんどん変えられているんですよ。
小池 テレビで批判的なことを言った司会者やコメンテーターに、政府から「ご説明を」なんて来るらしいですね。
室井 昔は、自民党議員の愛人やってる友達から、「あんた、それくらいにしとき!」とか注意されて、「先生が会いたがっているよ」と言われ、その議員さんと一緒にご飯を食べに行ったことがあるんです。そしたら「元気だな、跳ねっ返りが」とか笑われておしまいだった。ま、私は若くて可愛いバカ枠だったので、そんなものでしたね。それが今はネトウヨやネトサポ(自民党ネットサポーターズクラブ)と思しき連中から、いっぱい誹謗中傷がきます。ババアになったからという理由だけじゃないでしょ。テレビ局やスポンサーに、集団で「なんであんな女を使うんだ」と電話があったり、ツイッターなどネット系でも、私の発言を抜き取って、歪めて「こんなにバカなことを言ってる」と非難されたり。
小池 政権批判をしなくなったのは、ネトウヨの抗議をテレビ局が嫌がる、というのもあるんでしょう。
室井 ちょっとでも「安倍さんがこんな発言をしていてひどい」と政権批判をしようものなら、集団で「売国奴だ!」とか、「朝鮮に帰れ!」という書き込みがネットでもあるんです。芸能人はみんなそれを怖れて、発言をやめてしまう。あっ、そういえば、もうひとつ陳情したいことがあった。ぜひ、ネトサポの実態を共産党に調べてもらいたいんです。都市伝説的な噂では、「電通の子会社が、バイトを組織してやっている」なんて言われているじゃないですか。一体正体は何なのか、ちゃんと世に知らしめないと。大切なことですよ、思想じゃなくて、お金もらってそういう活動をしている人がいるかどうか分かるって。
小池 それは重大情報だ。ぜひ調べましょう。
室井「共産党にもネトサポみたいな組織をつくってほしい」と提案
室井 あと、共産党にもネトサポみたいな組織をつくってほしい。そういうことできるのって、組織力がある共産党しかいないと思うんです。本当は、世の中がおかしいと思っている人もいっぱいいると思うし、TV局の中にも、「本当にこのままでいいのか」と思っている人もいっぱいいると思うんです。だから、多くの人たちが声をあげやすいようにしないとダメですよね。そのために、私もこの連載などで何度も言っていますが、ネトウヨやネトサポのやり方を真似ていくべきだと思うんです。彼らって、ひとつの番組や人を集中的に攻撃するじゃないですか。だから、まっとうな政権批判や良い発言をした番組やコメンテーターに対し、すぐに「立派だ!」と声をあげる組織、集団を作ってください。
小池 赤旗のテレビ欄には、いい番組がやっていたら褒める投書をするようにと、テレビ局の電話番号が書いてあるんですが。
室井 知ってますけど、それだけじゃ甘いなぁ。言いづらいですけど、共産党って出しちゃダメでしょ。一般の人でひく人いるから。今は安倍政権を倒すため、縁の下の力持ちになって、組織力を生かして、24時間体制でテレビやネット、そして雑誌を見て、政権批判している人たちを賞賛したり仲間に取り込んだりしていかないと。野党全体に言えることですが、ネットやマスコミの使い方がヘタすぎると思う。一方の自民党はネットのことをすごく研究しているし、芸能人や文化人、評論家も上手く使っていて、一緒にご飯なんか食べてるんですよ。それで「もっと重要な問題があるだろう、森友なんかやっている場合か!」なんて擁護発言させるわけです。
小池 でも、そんななかで、テレビで鋭く安倍首相の“本質”を突く室井さんのような存在は貴重だと思いますよ。
室井 私は普通のおばさんですから、ガス抜きに使われているだけ。そうそう、この前、右翼雑誌の「正論」(産経新聞社)から共謀罪の対談に出てほしいとの依頼があったんですけど、相手が文芸評論家の小川榮太郎だって言うんです。あの安倍応援団で、言論弾圧をする「放送遵守を求める視聴者の会」の人間ですよ! しかも私も小川さんも共謀罪の専門家じゃない。本当に共謀罪について真剣に考えているなら、反対している専門家を出せばいい。きっと、小川さんの主戦場の「正論」で共謀罪反対の私を叩き潰すつもりだったんでしょ。卑劣なやり口ですよね。
小池 でも、室井さんの発言に拍手喝采している人はたくさんいると思います。だからテレビ局も出演させるんです。
室井 いや、まだまだです。その輪を広げていくためには、ネトサヨみたいなものを組織してもらうしかないんです。サザンの桑田さんや、長渕剛さん、渡辺謙さんなど、スター的な人たちが発信できて、みんなで拡散していけるのが理想です。「今、ウケてる! 支持されている!」という波に乗ると、芸能人ってサービス精神が強いから、もっと強く発信してくれると思います。
小池 たしかに、共産党も組織を上げて、前向きな発言をした人をプッシュする必要はありますよね。
室井 それと、共産党も芸能人に声かけて選挙に出したほうがいいですよ。
小池 共産党から出てくれますかねえ?
室井 そんな弱気こと言って、実際に声かけたことないでしょ! 動いてみないとわからないですよ。それと、自分たちでも番組をつくったほうがいい。
小池 ネットでは一応、『とことん共産党』という番組を持っているんですよ。
室井 あー、ダメですね。まず、番組名がダメだもん(笑)。だから党の色を出さないで、『ニュース女子』(TOKYO MX)のような感じで、こちらからサイドからのみ情報を出すんです。だいたい共産党って、真面目すぎるんですよ。小池さん、キャバクラとか行かないでしょう?
小池 行かないですよ(笑)。
室井 もうちょっと、そういうところに行って、若い女の子の気持ちとかちゃんとリサーチしたほうがいいですよ。そうだ、党名を出さずにテレビ局をつくればいいんじゃないですか。メディア対策に力を入れてもらいたい。『チャンネル桜』の逆張りのネットテレビとか。『ニュース女子』もDHCの一社提供だし、共産党の支持者に番組を買ってもらうのはどうですか?
小池 そんなにお金を持っている支持者がいるかなあ(笑)。実は、室井さんの言うようなことを考えたこともあります。でもスポンサーをどうしようかで話が止まってしまうんです。
「野党連合は大丈夫なのか」と追及する室井に小池が反論
室井 政権とくっついている人たちは、仕事が増えて儲けに繋がるけど、こっちは資金力もないですからね。でも、私、地方のラジオで20分ラジオをやらせてもらっていて、そこで安倍さんの批判をたくさんしています。そんな番組だから今まで絶対に提供がつかない枠だったのに、地元の企業がついてくれたんですよ。だから、共産党もあきらめないで、党の色を出さない、視聴者が食いつくようなフックを効かせた、政権批判のメディアをつくってくださいよ。
小池 そういうメディア発信を強めなきゃいけない、というのはありますが、同時に草の根的な政治運動を広げていかないと。安保法制のとき、国会前のデモで室井さんとお会いしましたが、ああいう闘いを起こさないといけません。あのときは野党共闘できていたじゃないですか。参議院選挙であれだけ協力できた。
室井 でも、野党がいまのような状況じゃ、そういう政治運動の広がりは難しいんじゃないですか。
小池 いや、やられっぱなしというわけでもないですよ。頑張っているところもある。たとえば沖縄。沖縄は野党が選挙に勝ち続けているじゃないですか。総選挙も知事選も、この前の参議院選挙も。「辺野古の基地を許すな」など、争点がはっきりしているからだと思います。その間、政府は機動隊を本土から連れてきて、辺野古でも高江でも、とにかく工事を進めて既成事実をどんどん作ってしまっている。「既成事実にしたら諦めるだろう」ということしかやっていないんです。福島も、参議院選挙で現職大臣を落として勝ったじゃないですか。「原発はダメ。第二原発も廃炉にしなきゃいけない」ということが県民の圧倒的な世論になっていて、争点がはっきりと見えているんです。
室井 たしかに沖縄は頑張っていると思いますが、うーん……。わたしは今、週の半分を地方で暮らしているんですが、地方になればなるほど自民党がやっぱり強いんですよね。なぜかと言うと、何か大きい建物を建てるとき、土建屋はここ! 弁当屋はここ! ポスターはここ! と、付け入る隙がなく決まっていて。政治に関して、政策を読んでいる人がほとんどいない印象です。前回の選挙を支えた野党連合もかなりやばいんじゃないですか。
小池 そんなことはないですよ。一歩ずつ前進しています。ただ、もうちょっと頑張らないといけないというのも事実です。共謀罪についても一緒にデモをしたり集会に出たり、断固廃案にするべく一緒に行動する必要がある。
室井 国会中継を見ていて思うんですけど、野党の連携があれば、少ない時間を有効活用して、重複した質問をせずに済むんですよね。「それ前の人がさっき聞いたのに、同じこと聞いてる!」というのがよくあるんです。共産党はそういうことがないですよね。
小池 うちはチームでやっていますから。民進党の人は、みんな個人でやっているから。でもそこはそれぞれの良さがありますからね。しかし民進党も変わってきている。安保法制のとき、当時の民主党議員が、「国民の世論と運動の力で、ストップさせたい」と言っていて驚きました。民進党は世論で動く政党だから、SEALDSのような若者が出てきて集会に人が集まり注目を浴びたり、安保法制反対の世論が高まると、いい意味で変わるんだなと思いましたね。
「いつまでに安倍を倒すか、期限を切れ」と迫る室井に、小池は…
室井 でも、民進党に主導権を握らせない方がいいですよ。昨年の東京都知事選を見ていてそう思いました。新潟知事選のときも、後から蓮舫代表がシャシャリ出てきて、中途半端な対応をして。そういえば民進党だった長島昭久さんが離党しましたが、共産党との共闘に不満だったんですよね?
小池 あれは口実ですよ。「今頃その理由で?」という感じじゃないですか。東京都議選が目前に迫ってきているので、このまま民進党にいたらダメだと、抜ける口実を探していたんじゃないかな。実際は、共産党と選挙協力した方がいいと思っている民進党の議員は結構いるんですよ。
室井 でも、民進党には本気で共産党嫌いな人もいますよね(笑)。以前、選挙カーで演説をしているとき、「共産党と一緒に上がりたくない」という民進党議員がいました。
小池 そういうこともあります。でも、そんなのいちいち気にしていたらやってられません。
室井 私、民進党のそういう姿勢を見るに見かねて、『週刊朝日』の連載で、「イデオロギー以前に人としてどうよ」と書いたことがあります。協力してもらってるんだから「ありがとう」という態度にならなきゃおかしいでしょ、と。
小池 あれ、志位(和夫委員長)さんが読んで、喜んでいましたよ。
室井 民進党は、誰が一番話せるんですか?
小池 今の執行部は話ができます。室井さんは疑いの目で見ていますが(笑)。
室井 でも野田さんって、リベラルの人にもすごく嫌われているでしょう。私も、あの人、嫌い。
小池 政権時代の印象があるから、ネガティブなイメージなんでしょう。でも、付き合ってみると、世間の評判ほど話がわからない人じゃない。ただ、存在感が重厚すぎて、電話してすぐに会えるといった身軽さはない。しかし会って話せば勘所はおさえてくれる人です。私は結構、信頼しているんです。
室井 小池さんの言葉を信じて(笑)、野党連合にはぜひ期待しています。それ以外でも “アベを倒す” 方法はありますか? 小池さん、そして共産党はどう闘うのか教えて下さい。
小池 森友学園問題の追及は徹底的にやりたいです。森友学園問題を追及することで、安倍政治の危険な本質が見えてくると思っています。実際、国民の財産や許認可の私物化、身内への優遇、さらには安倍首相が日本中の学校を森友学園のようにしたい、と考えていることも明らかになった。「安倍首相、頑張れ!安保法制国会通過、良かったです」と全国民に言わせるような社会にしたいわけでしょう。そこをきちんと暴いていけば、安倍政権を倒す突破口になると思っています。
室井 ずばり、期限はいつまでですか?
小池 き、期限ですか?
室井 いつまでに倒すのか。期限を切って、覚悟してほしいです。小池さんはつねに、一歩先に行くひとだから、ハードルを高くしたいんです。ズバリ、期限はいつまでですか?
小池 来年9月に自民党総裁選があり、安倍総理の再選が焦点となるでしょう。続投させないためにも、それまでに倒さなきゃダメですね。そのためには、国会の前が毎日人で溢れるような闘いをする必要があると思っています。国会では、野党が情報交換して、あらゆる側面から攻めて立てます。当面は共謀罪です。そしてテレビによくでる芸能人の方なども発言しやすい局面を作ります。一部の人の主張ではなく、これが世論なんだと、知らしめていく。
室井 それを実現するためにも、ネットやメディアをうまく使うようになってほしい。小池さんはわかっていると思いますけど、自民党や、その周辺の親衛隊ってすごく卑怯なんですから。だから、もう一度陳情します。ネトウヨやネトサポに対抗できる組織、集団を作ってください。これも共産党にしか出来ないと思うんです。機動力があるんですから。小池さん、本当にお願いしますね。
小池 わかりました(笑)。こちらも、もっとずる賢くやれということですよね。
室井 それで、安倍政権を倒してくださいね。絶対、絶対ですよ、期待しています!
(構成 編集部)
小池晃 日本共産党書記局長、参議院議員。1960年生まれ。東北大学医学部医学科卒業後、医師勤務を経て、1988年の参院選で初当選。現在は3期目で、日本共産党で常任幹部会委員、政策委員長、副委員長などを歴任し、現職。
室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。