北朝鮮問題はローマ法王庁の仲介で米朝会談が行われる可能性が高くなりました。
米国と北朝鮮は既にノルウェーの首都オスロで現地時間8、9の両日、核・ミサイル問題や米朝協議の可能性について、非公式協議を行ったということです。
3日、ティラーソン米国務長官も、トランプ大統領の「金正恩党委員長と会うことが適切であるなら当然そうするだろう」という1日の発言をフォローする形で、米朝協議に向けての前提条件とも言うべき「4つのノー」を呈示しました。これについては最終的には玉虫色の決着になるだろうと見られていますが。
韓国の新大統領も北朝鮮との宥和に熱心で「条件が整えば、ピョンヤンにも行く。私にできることはすべてする」と国民向けのメッセージを出しました。もともと南北は同一民族ですから憎み合っているわけでも何でもありません。
そうなると、今にも米朝間で戦争が始まって日本にも北朝鮮のミサイルが降ってきそうだという、安倍首相によるあの一連の脅しはいったい何だったのでしょうか。
「意図的に危機感を煽って国民を脅し、森友問題や共謀罪法案から目をそらす」とともに、将来の軍国主義化への布石にしようとしたとしか考えられません。
そもそも北朝鮮からのミサイル発射は、同国が滅亡を覚悟したときしかあり得ないというのが識者の一致した見方です。それなのに政権の意図に忠実なNHKは、5日以降11日午前段階で北朝鮮がミサイルを発射することを前提とした記事を5本も流しました。湯沢町でも政府の指示を受けて4月末に「北朝鮮からミサイルが飛来したときの対処法」を記したビラが新聞とじ込みで全戸配布されました。
そもそも北朝鮮のミサイル試射の際にそれが着弾する前に日本が発射情報をキャッチした例はまだありません。
そこまでして北朝鮮の脅威を煽ろうとするのは滑稽なことです。
そこまでして北朝鮮の脅威を煽ろうとするのは滑稽なことです。
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バチカンで握手も? ローマ法王仲裁で5・24米朝電撃和解
日刊ゲンダイ 2017年5月11日
「世界には自ら手を挙げる仲介役はたくさんいる。例えば、ノルウェーは助けの手を差し伸べられるだろう」――。ローマ法王の期待通りの展開になってきた。
「挑発」と「圧力」のチキンレースから一転、米国と北朝鮮が急接近。ノルウェーの首都オスロで現地時間8、9の両日、核・ミサイル問題や米朝協議の可能性について、非公式協議を行った。
冒頭の発言はローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が4月29日、エジプト訪問後の専用機中で記者団に話したもの。北朝鮮情勢について、法王が「事態は熱くなり過ぎている」「(必要なのは)外交手段での問題解決」と呼びかけた途端、まず態度を軟化させたのは、米国のトランプ政権だった。
トランプ大統領は5月1日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、「金正恩党委員長と会うことが適切であるなら当然そうするだろう。光栄に思う」と発言。唐突に米朝首脳会談の可能性に言及した。3日にはティラーソン国務長官が職員向け演説で、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄すれば ①国家体制の転換は求めない ②金正恩政権崩壊を求めない ③南北統一を急がない ④米軍は北緯38度線を越えて北側に侵攻しない――「4つのノー」を保証する方針を示した。
この方針が中国を通じて北朝鮮に伝わると、ローマ法王の発言通りノルウェーで、北朝鮮外務省の崔善姫北米局長とクリントン米政権時代の元国連大使らが接触。まるで法王が糸を引いたように両国は水面下交渉を始めたのである。
「アルゼンチン出身で、南米初のローマ法王に選ばれたフランシスコ1世は、米国とキューバとの国交回復の橋渡し役を演じたことで知られています。『世界には和解が必要』が口癖の人だけに、緊迫する米朝関係の仲裁を買って出た可能性は十分にあり得ます」(外交評論家の小山貴氏)
さらにトランプはイタリアG7参加直前の今月24日、バチカンに立ち寄り、ローマ法王と会談することを決めた。
「ただし、金正恩体制がトランプ政権の『4つのノー』をうのみにして、核放棄に応じる可能性は低い。北朝鮮にとって、リビアのカダフィ大佐の哀れな末路が大きなトラウマになっています。米国の圧力に屈し、進んで核開発を放棄した結果、NATOが軍事介入した“アラブの春”によって、独裁政権は崩壊。最後は民衆に射殺されました。この “悪しき前例” を教訓に絶対に進んで核を手放すことはないでしょう。とはいえ、米国との緊張関係がこれ以上、エスカレートする事態は避けたい。金正恩体制としても核放棄は明言しないまでも、互いに振り上げたコブシを収めるための “玉虫色の決着” に応じる準備はあるはずです」(小山貴氏)
24日にはバチカンに金正恩もひょっこり出没。ローマ法王の顔を立て、トランプと“見せかけの和解”の握手を交わす可能性もゼロではない。
韓国 ムン大統領「条件が整えば訪朝」
NHK NEWS WEB 2017年5月10日
韓国のムン・ジェイン(文在寅)新大統領は、10日、5年間の任期をスタートさせ、正午すぎに国会で宣誓を行ったあと、国民向けのメッセージを発表し、「朝鮮半島の平和のために、条件が整えば、ピョンヤンにも行く。私にできることはすべてする」と述べ、安全保障問題に全力で取り組む考えを示しました。
9日投票が行われた韓国の大統領選挙では、革新系の最大政党「共に民主党」のムン・ジェイン氏が当選を果たし9年ぶりに政権が交代することになりました。そしてムン氏は、10日午前、中央選挙管理委員会の承認を経て、韓国の第19代大統領に就任し、5年間の任期がスタートしました。
ムン新大統領は、正午すぎに国会で憲法の規定に従って、宣誓を行い、「大統領としての職責を誠実に遂行することを国民の前に厳粛に宣誓する」と述べました。続いて、国民向けのメッセージを発表し、「今回の選挙には勝者も敗者もない。われわれは新しい韓国を作るパートナーだ」と述べ、保守と革新の対立が続いてきた韓国の政治を変えると強調しました。
そのうえで、「安全保障の危機を速やかに解決する。朝鮮半島の平和のために東奔西走し、必要ならば直ちにワシントンに行く。北京、東京、そして条件が整えば、ピョンヤンにも行く。朝鮮半島に平和を定着させるためならば、私にできることはすべてする」と述べ、安全保障問題に全力で取り組む考えを示しました。
さらに、韓国で配備が進められているアメリカの最新の迎撃ミサイルシステム「THAAD」について、中国が強く反発していることを念頭に「問題の解決のために、アメリカや中国と真剣に話し合う」と述べ、対話による解決を目指す姿勢を強調しました。
永田町の裏を読む (高野孟)
目くらましのために北朝鮮危機を過剰に煽る“便乗詐欺”
日刊ゲンダイ 2017年5月11日
安倍晋三首相のゴールデンウイークの過ごし方といえば、4月27~30日に何の用事で行ったのか分からないロシア・英国を訪問し、5月1日は午前中に官邸で会議があって、午後は散髪、夜は新憲法制定推進大会で挨拶し、2日は東北被災地視察。3日に山梨県の別荘に移って7日まで滞在し、その間にお友達とのゴルフが3回、中華料理店での会食2回、庭でバーベキュー1回、温泉旅館で入浴1回と、本人も「非常にゆっくりした。明日からまた頑張る」と言うほど、のんびりしたリフレッシュ休暇だった。
とすると、今にも米朝間で戦争が始まって、日本にも北朝鮮のミサイルが降ってきそうだというあの一連の騒ぎはいったい何だったのか。元外務官僚が言う。
「意図的に危機感を煽って国民を脅し、政権への求心力を高めようとする心理作戦です。米国はもちろん、もし戦争になれば日本より遥かに大きな被害に遭うはずの韓国でも、そんな話にはなっていない。韓国のネットでは、北のミサイル発射のニュースを聞いただけで東京メトロが列車を止めたことが、『日本人って臆病なんだね』と笑い話になっているほどです」
実際、5月1日午前に官邸で開かれたのは、内閣危機管理監、国家安保局長、外務・防衛幹部を集めた国家安保会議で、当然、北朝鮮をめぐる情勢が議題となったが、何ら差し迫った危険はないということで、わずか15分間で散会となっている。だから安倍はそのあと散髪に行ったり、GWをゴルフ三昧でのんきに過ごしたりしたのだ。
それを「けしからん。緊張感に欠けている」と怒っている人が与野党双方にも評論家の間にもいるが、話はさかさまで、本当は危機など差し迫っていないことを知っているから、ゴルフに興じていたのである。緊張があるのにのんびりしていることが「けしからん」のではなくて、緊張など迫っていないのに、迫っているかのようなことを言って国民を恫喝していることが「けしからん」のである。
野党の中堅議員もこう指摘する。
「北朝鮮危機を過剰に煽って、それを目くらましに使うことで、森友学園事件を早く忘れさせよう、目の前の共謀罪法案を通過させよう、改憲への道筋もつけようという安倍の便乗詐欺に引っかかってはなりません」と――。