今年1月、突如文科省官僚の天下り問題がクローズアップされて、一年余り前に文科省の高等教育局長を退職後早稲田大学教授になっていた吉田大輔氏が教授を辞任し、文科省の前川事務次官が引責辞任しました。
加計学園の獣医学部新設の問題を担当する高等教育局は認可に強く反対していたので、局長の吉田氏はいわば官邸にとって目の上のたんこぶでした。前川次官も勿論理屈の通らない新設には反対でした。
それで先に高等教育局長をすげ替えた官邸は、今度は天下り問題を機に前川次官を辞任させることに成功しました。
ところでこの天下り問題の発端となったものは、『内閣府』の再就職等監視委員会の調査でした。
そもそも官僚の天下り問題は財務省や経産省をはじめあらゆる省庁で多年にわたり行われてきた悪しき慣行なので、それが改められること自体は結構なことです。
とはいえ何故その標的がむしろ地味な「文科省に絞られた」のか、そして間髪を入れずに次官を辞任させ、1年あまり前に文科省を去って再就職していた人までも就職先を辞任させたのかと多くの人が疑念をいだいた筈です。それがいまになってみると、それらは加計認可反対派を一掃するために内閣府が仕組んだものということですべての謎が解けますが、逆に政権の暗部を見せられたことで非常に不快な思いに苛まれます(以上「週刊新潮」ほか)。
前川前次官がまだ現役だった昨秋、首相補佐官から加計学園の獣医学部開学に向けて “手続きを急げ” と圧力をかけられていたことも明らかになりました。首相補佐官は和泉洋人氏で「菅房長官の懐刀」ともいわれているということです(毎日新聞・27日)。
また、文科省に「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」と発言した藤原豊審議官は、2016年2月時点では、今治市との面談で 「人口減少のなか、ほんとうに学生が集まるのか」、 「財政的に非常に今治市の状況が悪い」、「内閣府主導ではやれない、やりにくい」などと発言し、加計学園の獣医学部新設に反対の立場でした。それが「昨年7月の参院選が終わってから」今治市長がいろんなところで「安倍総理の強いリーダーシップでやるから安心してほしい」と言い出したのに歩調を合わせるように、藤原審議官も9〜10月には「総理のご意向」と言って文科省に迫るなど “変節” したということです(テレビ朝日 報道ステーション・26日)。
藤原氏を変節させた圧力の源泉が「総理・官邸」であることは明白です。
LITERAの記事を紹介します。
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首相補佐官が前川前次官に「加計の手続き急げ」と直接圧力の新事実!
天下り処罰も加計認可反対派の一掃が目的
LITERA 2017.05.27.
加計学園問題で、また新たな情報が出てきた。昨年秋ごろ、当時文科省事務次官だった前川喜平氏が官邸の首相補佐官に呼ばれ、加計学園の獣医学部開学に向けて “手続きを急げ” と圧力をかけられていたというのだ。
その首相補佐官とは、和泉洋人氏。文科省は2003年に「獣医学部の新設は認めない」という公示を出しており、和泉首相補佐官は前川事務次官を呼び出すと、〈告示改正の手続きに向けて「(大学を所管する)高等教育局に早くしてもらいたい」と要求〉したのだという。このとき、前川次官は〈「(文科)大臣が判断されること」と明言を避けた〉が、この一件は複数の文科省幹部に伝えられたと今日の毎日新聞朝刊が伝えている。
昨年の秋といえば、特区を担当する内閣府が「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」などと文科省に加計学園の早期開学を迫っていたことが内部文書によってあきらかになっているが、今回の報道は、同時期に官邸が直接、文科省に圧力をかけていたことを示す。
しかも、前川氏を呼びつけた和泉首相補佐官は、「菅房長官の懐刀」とも呼ばれる人物である。
和泉氏は旧建設省出身で、現在は政府が名護市辺野古で進めている埋め立て工事で省庁を統括している人物であり、新国立競技場の “やり直しコンペ” を仕切ったのも和泉首相補佐官だといわれる。もともとは民主党・野田政権時代に内閣官房参与として官邸入り、そのまま安倍首相が留任させるという異例の人事が行われたが、その背景には和泉氏と付き合いが長かった菅義偉官房長官の後押しがあったとされるなど、菅官房長官の「片腕」という立場だ。ようするに、菅官房長官という「官邸の最高レベル」の片腕が直接、事務次官を呼びつけて早期認可を指示していたのである。
「総理のご意向」発言の内閣府審議官もぎりぎりまで反対していた
さらに、昨夜放送の『報道ステーション』(テレビ朝日)でも、重要な証言が報じられた。
文科省に対して「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」と発言した人物は内閣府の藤原豊審議官と見られているが、今治市が国家戦略特区に選ばれた2カ月後の2016年2月に行われた今治市との面談では、藤原審議官はこんなことを語っていたと今治市関係者が証言したのだ。
「人口減少のなか、ほんとうに学生が集まるのか」
「財政的に非常に今治市の状況が悪い」 「夕張市みたいになったら困るんじゃないですか」
「文科省がどういう判断をするか、それにかかっている」 「内閣府としては主導ではやれない、やりにくい」
これは証言だけではない。当時、今治市議会に出された報告書にも、藤原氏から「今治市の獣医学部新設は困難」と伝えられたことはしっかり記載されているのだ。つまり、昨年2月の段階では、内閣府も加計学園の獣医学部新設に反対の立場だったのである。
しかし、この今治市関係者は「去年7月の参院選が終わってから急激に事態が動き出した」とし、こう話すのだ。
「市長がいろんなところでそういう話をしよるよと。『安倍総理の強いリーダーシップをもってやるから、これは安心してほしい』というようなことを」
加計学園の獣医学部新設に難色を示していたはずの藤原審議官もまた、同年の9〜10月には「総理のご意向」と言って文科省に迫るなど “変節” しているように、内閣府にも何らかの圧力がこの間に加えられたのだろう。そして、こうした証拠・証言からもわかるように、圧力の源泉が「総理・官邸」であることは明白だ。
同時に、この内閣府の転向を考えると、前川前次官をはじめ獣医学部新設に抵抗してきた文科省の役人は、官邸にとって相当目障りな存在だったに違いない。ここで俄然、気にかかるのは、そもそも前川氏が事実上のクビに追いやられた「文科省の天下りあっせん」問題の “出所” だ。
内閣府主導の文科省天下り処罰は加計認可反対派の一掃だった
じつは、今週発売の「週刊新潮」(新潮社)の記事では、政治部記者がこんな証言を行っている。
「高等教育局が大学などを所管するわけですが、早稲田大学の教授になった局長は、加計学園の獣医学部新設には強硬に異を唱えていました。そのため、安倍官邸が、その首を挿げ替えたとも言われているのです」
この文科省退職後に早稲田大学教授に天下った人物は、吉田大輔・前高等教育局長。その後の調査で文科省の組織的な関与によって再就職先のあっせんが横行していたことがわかり、事務次官だった前川氏は引責辞任した。
たしかにこの天下りあっせんは違法であり大きな問題だが、はっきり言って組織的な天下りのあっせんなどはどの省庁でも “慣例” となっているもの。しかもこの天下り問題の端緒となったのは、新聞や週刊誌のスクープではなく、内閣府の再就職等監視委員会の調査だった。それを1月18日のNHKが報じ、同日午前の会見では菅官房長官が「実際に報道の通りの事案が行われていたとすれば極めて遺憾」と踏み込んで発言。翌日には官邸幹部が前川氏の責任を問い「けりをつけなければならない」と述べ(朝日新聞1月19日付)、20日付けで前川氏は退任した。
当時から、官邸のこの “スピーディーすぎる対応” に「何か官邸の裏があるのでは」と見る向きもあったが、今回の問題によってあらためて、その疑惑は強まったのではないか。だいたい “出会い系バー通い” にしても、官邸は昨年の秋の段階で杉田和博官房副長官から在職中だった前川氏に「厳重注意」を行っていたことがわかっている。
これ自体があきらかに意に沿わない前川氏に対する監視を匂わせた恫喝に近い行為だが、同じように出会い系バー通いを前川氏の実名証言の口封じのため読売新聞にリークして報道させるという官邸の謀略を見れば、天下りあっせんの問題も前川氏への報復のために官邸主導で行われた可能性は十分考えられる。いや、「週刊新潮」の記事にあるように、加計学園の獣医学部新設に異を唱えた結果、吉田高等教育局長が報復人事にあった可能性だって高いのだ。
官邸のゴリ押しに抵抗すると、あらゆる手を使った報復が待っている──。こうなると、内閣府の藤原審議官の変節も納得できよう。一体、総理と官邸はどのように「行政をゆがめた」のか。さらなる追跡が必要だ。(編集部)