2017年5月24日水曜日

24- カトリック団体が共謀罪法案反対声明 戦中の弾圧にも言及

 23日、共謀罪法案が衆院本会議で可決されたのを受け、日本カトリック正義と平和協議会24日、会長名で「共謀罪法案」の反対声明を発表し、同法案の撤回、廃案を強く求めました。
 Christian Today, Japanの記事と反対声明を紹介します。
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共謀罪」法案衆院通過、カトリック団体が反対声明 戦中の弾圧にも言及
Christian Today, Japan 2017年5月24日
 記者 : 内田周作          
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の内容を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する「組織犯罪処罰法」の改正案が23日、自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数により、衆院本会議で可決された。これを受け、日本カトリック正義と平和協議会は24日、反対声明を発表。戦中の宗教弾圧により拷問を受けて亡くなった外国人神父の存在についても触れ、同法案の撤回、廃案を強く求めた。
 
同協議会は、同法案に反対する理由を4つ挙げている。最初に挙げたのは、社会に対して実際に損害をもたらした犯罪のみを処罰するという「行為原理」や、刑罰を科す範囲をあらかじめ明確に定めるという「罪刑法定主義」などの近代刑法の原則に反することだ。「犯罪の範囲はいっきに拡大し、犯罪の『共謀』『計画』をはかったという理由で、犯罪を実行していない人間の意思や内心が処罰の対象となり、国家による恣意的な処罰、自白の強要によるえん罪の危険が高まります」と警告している。
 
また、任意の捜査と情報収集の幅が拡大することで、プライバシーの侵害が頻発し、監視社会になってしまうと危惧。自首した場合の免罪が盛り込まれていることから、仲間うちでの密告が推奨され、社会の中に深刻な相互不信を作り出すとしている。さらに、恣意的な捜査や逮捕が可能になった監視社会では、実際の監視行動がなくても市民活動が萎縮し、憲法が保障する思想、信条、信教の自由、集会・結社の自由が破壊されかねないとしている。
 
第2次世界大戦下では、治安維持法により多くの宗教弾圧が行われ、日本のカトリック教会でも司祭や修道者、信者らが逮捕・勾留されることは多くあった。パリ外国宣教会のシルベン・ブスケ神父は、天皇への不敬言動やスパイ活動などの容疑をかけられ、拷問を受けて亡くなった。同協議会は声明でこうした過去の弾圧について触れ、「私たちの信仰するカトリックの教義が、権力にとって都合の悪い危険思想と見なされたからです」と説明。同法案が国家に恣意的に用いられた場合の危機感をにじませた。
 
さらに戦中は、こうした宗教弾圧により「信徒は萎縮し、警察への密告が行われ、教会は分断されました」と言い、「教会に、私たちが希求する愛と信頼に基づいた世界と正反対の出来事が起こりました。このようなことは、いかなる場所においても、もう二度と繰り返されてはなりません」と訴えている。
 
【反対声明】
日本カトリック正義と平和協議会
2017年5月24日
内閣総理大臣 安倍晋三様
法務大臣 金田勝年様
                       日本カトリック正義と平和協議会会長
勝谷太治司教
反対声明
 「共謀罪」を盛り込んだ「組織犯罪処罰法」の改正案が、2017年5月23日、衆議院本会議において強行採決され、可決されました。私たちカトリック正義と平和協議会は、以下の理由から、「組織犯罪処罰法」改正案の衆議院強行採決に抗議し、法案の撤回、廃案を求めます。
1)「組織犯罪処罰法」改正案は、実際に行なわれ、法益の侵害をもたらした犯罪のみを処罰し、市民の内心には立ち入らないとする行為原理、および、刑罰を科す犯罪の範囲をあらかじめ法律で明確に定めておかねばならないという罪刑法定主義を破壊します。近代刑法を支えるこれらの原則が破壊されてしまえば、犯罪の範囲はいっきに拡大し、犯罪の「共謀」「計画」をはかったという理由で、犯罪を実行していない人間の意思や内心が処罰の対象となり、国家による恣意的な処罰、自白の強要によるえん罪の危険が高まります。
2)「組織犯罪処罰法」改正案が承認されれば、捜査機関による任意の捜査と情報収取の幅は拡大します。その結果、プライバシーの侵害が頻発し、市民生活のあらゆる面での監視が強化され、監視社会が作り出されます。
3)自首による免罪を含む「組織犯罪処罰法」改正案は、仲間うちでの密告を奨励し、社会の中に深刻な相互不信を作り出します。
4)恣意的な捜査や逮捕が可能になった監視社会では、実際の監視行動がなくとも市民活動の萎縮が生じ、憲法が保障する思想、信条、信教の自由、集会・結社の自由が破壊されかねません。
 
 第2次世界大戦下の日本社会にも、治安維持法による監視と処罰の網の目が張られ、多くの宗教弾圧が行われました。カトリック教会でも、大勢の司祭、修道者が逮捕・勾留され、シルベン・ブスケ神父(パリ外国宣教会)は、天皇への不敬言動やスパイ活動など、事実とは異なる不当な容疑で憲兵隊に連行され、拷問によって命を落としました。私たちの信仰するカトリックの教義が、権力にとって都合の悪い危険思想と見なされたからです。こうした事件が起きたことで、信徒は萎縮し、警察への密告が行われ、教会は分断されました。教会に、私たちが希求する愛と信頼に基づいた世界と正反対の出来事が起こりました。このようなことは、いかなる場所においても、もう二度と繰り返されてはなりません。
 
 私たちカトリック正義と平和協議会は、「人間相互の信頼に基づく連帯」という民主主義の土台を壊す「組織犯罪処罰法」改正案の国会承認に断固反対し、法案の撤回、廃案を強く求めます。