2017年5月15日月曜日

安倍首相が改憲へ圧力 与野党協調の転換を直接指示

 安倍首相が3日発表した「9条に自衛隊の保持を『加憲』する」という改憲案は憲法9条を空文化するもので余りにも国民を馬鹿にしています。当然憲法審査会でも大問題になって、自民党筆頭理事の中谷元氏は「党内向けの発言20年施行に縛られない」との文書を出してその場を収めるしかありませんでしたが、ナント安倍首相はそれに「ブチ切れた」ということです。
 
 彼は12日、保岡興治・党憲法改正推進本部長と会談し、自分が提案した改憲案の2020年施行を目指し憲法審査会に提案する党の改憲原案をまとめるよう指示するとともに、公明党調整は、「高村氏が公明の北側一雄副代表と話し合うのがいい」と個人名を挙げたといいます。
 自民党の本流も含めて周囲とは極めて温度差のある提案なのですが、いまは本人の頭の中にはそれしかないようです。首相に近い下村博文幹事長代行は「自民党内で年内にコンセンサスをつくり、来年の通常国会に発議案を出せたらベストだ」と述べました
 
 元大原社会問題研究所長の五十嵐仁氏は、来年末には衆議院議員の任期を迎えるものの、次の総選挙で改憲派が3分の2を上回る見込みがない中で、これまでは安倍首相も、その後の国民投票まで見据えて野党第1党との協調を重視してきましたが、もはやそんな余裕はないと覚悟を決めたとえ国民投票で否決されるリスクを冒しても自らの任期中に改憲発議を行い、国民投票の壁を乗り越えたいと腹を固めたのでしょう」と述べました
 要するに国民投票で反対されるリスクを冒しても、国民をたぶらかすかのような改憲案で勝負をしようと腹をくくったということです。これは安倍氏がそこまで追い込まれたという見方もできるわけですが。
 
 日刊ゲンダイの記事、「五十嵐仁の転成仁語」 それに産経新聞の記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
安倍首相が改憲へ「圧力」 与野党協調の転換を直接指示
日刊ゲンダイ 2017年5月13日
全知全能感がハンパなくなってきた。安倍首相は12日、与野党協調での改憲戦略を進めてきた自民党憲法改正推進本部に方針転換を直接指示。9条に自衛隊を明記するなど自身の提案に沿った改憲の原案をまとめるようにハッパをかけた。
 
「2020年施行」と年限を区切った以上、いつまでも民進党との合意を目指している場合ではない―─。安倍首相の“圧力”には身勝手な思惑が透ける。
 自民は前日の衆院憲法審査会で、安倍首相の唐突な改憲宣言に反発する与党に「党内向けの発言で『20年施行』に縛られない」(中谷元・与党筆頭幹事)と表明。安倍首相の発言と審査会の議論を切り離し、審議再開を優先させたことに、安倍首相はブチ切れたようだ。
 
 12日朝、柴山昌彦首相補佐官を通じて「自公維だけで(改憲を)発議するのも官邸の意向だ」などと、党憲法改正推進本部に自身の考えを伝えると、「寝耳に水」と困惑する保岡興治本部長との会談をセット。「オレに従え」と言わんばかりに直接、圧力を加えた
 国民主権をうたう憲法は、国民が権力者に守らせるもの。その項目をいつまでに、こう変えると首相が独断で決めるのは立憲主義に反する。
 
 
9条「壊憲」をめざした「関ケ原の合戦」に向けて
 宣戦布告を行った安倍首相
五十嵐仁の転成仁語 2017年5月14日 
 徳川家康が石田三成とのたたかいに向けて腹の内を明らかにしたのが「小山会議」でした。これが後に東西両軍が関ケ原で激突した天下分け目の合戦に向けての発端となります。
 安倍首相は読売新聞でのインタビューと改憲派の集会へのビデオメッセージを通じて、9条「壊憲」の意図を明らかにしました。これは「関ケ原の合戦」に向けて徳川家康が腹の内を明らかにした「小山会議」に相当する転換点です。
 
 「壊憲」に向けてのギアを入れ替えたということになります。与野党の合意をめざして「低速」で慎重な運転を行ってきたこれまでのやり方を投げ捨て、3分の2を占めている「壊憲」勢力だけで突っ走ろうというわけですから。
 安倍首相は9条の1項と2項をそのままにして、新たに自衛隊の存在を明記した3項を加えることで公明党を引き込み、高等教育の教育費無償化を書き込むことで日本維新の会を抱き込む方針を明確にしました。これに「日本のこころ」などの「壊憲」勢力を合わせれば、民進党などの協力を得なくても改憲発議が可能になります。
 これまでは、その後の国民投票まで見据えて野党第1党との協調を重視してきましたが、もはやそんな余裕はないと覚悟を決めたにちがいありません。安倍首相は、たとえ国民投票で否決されるリスクを犯しても自らの任期中に改憲発議を行い、国民投票の壁を乗り越えて何としても2020年までに施行したいと腹を固めたのでしょう。
 
 12日の党憲法改正推進本部(保岡興治本部長)の幹部会で柴山昌彦首相補佐官は保岡本部長を前に「高村氏が公明党の北側一雄副代表と与党間で調整するのがいい」と提案しました。高村さんは北側さんと太いパイプを持ち、この二人は集団的自衛権の部分的行使容認に道を開いた安保法制の原案作成を担当しています。
 柴山さんは安倍首相の意を汲んで、安保法制での「成功体験」を生かそうと考えたのでしょう。この二人に任せれば、あの時のように激しい世論の追及をかわして上手くやってくれるにちがいないと。
 公明党も甘く見られたものです。9条「壊憲」に消極的な姿勢を見せてはいても、どうせ同じ穴の「むじな」だ、これまでもそうであったように、「いやだいやだ」と言いながら適当なタイミングで足並みをそろえるに違いないと、安倍首相らはそう考えているのでしょう。
 
 首相に近い下村博文幹事長代行はBSフジの番組で、来年の通常国会への自民案提出を目指す考えを示し「自民党内で年内にコンセンサスをつくり、来年の通常国会に発議案を出せたらベストだ」と述べました。9条「壊憲」をめぐる最初の決戦は、このときになるでしょう。
 それまでは衆院での「壊憲」議席を維持しなければなりませんから、よっぽどのことがない限り、首相の側から解散・総選挙を実施することは避けようとするでしょう。2014年総選挙の数字を基にした新聞各紙の予測では、野党が共闘すれば自民党は議席を減らすということで一致していますから。
 これだけのスピードで突っ走るということは、民進党など野党との合意は二の次だということになります。こうして、9条「壊憲」をめぐる対決の構図は次第に明確になってきました。
 
 もし、来年の通常国会に自民党の原案が出されれば、9条をぶっ壊そうとする自公プラス補完勢力対それをを阻止しようとする民進党を含む野党4党との激突が生ずることになるでしょう。天下分け目の「関ケ原の合戦」の前哨戦です。
 解散・総選挙の前に改憲発議がなされたとしても、衆院議員の任期は来年の12月までしかありません。これまでには必ず解散・総選挙は実施されることになります。
 安倍首相が「壊憲」議席をこのまま維持したいと考えて総選挙を先延ばししようとするのであれば、改憲発議ができなくなるほどに議席を減らすことが獲得目標だということになります。立憲野党4党としては、できるだけ早く解散・総選挙に追い込むことをめざさなければなりません。
 
 日本の命運を決する重大な政治決戦の日が近づいているということになります。安倍首相の挑戦に対して市民と野党がどのように応えるのか、9条をめぐる「激突の時代」が始まりました
 安倍首相は腹を固めたわけですから、私たちも腹を固めて対抗しなければなりません。一人一人の決意と本気度が試されることになります。
 
 
倍晋三首相、自民改憲原案作成を保岡興治本部長に指示 
憲法改正推進本部軸に挙党態勢で議論加速へ
産経新聞 2017年5月12日
 安倍晋三首相(自民党総裁)は12日、党本部で保岡興治・党憲法改正推進本部長と会談し、自らが提案した憲法9条改正と2020(平成32)年の新憲法施行を目指し、国会の憲法審査会に提案する党の改憲原案をまとめるよう指示した。執行部は憲法改正推進本部を軸に挙党態勢で議論を加速させる態勢作りを急ぐ。
 
 首相が3日に改憲の意欲を表明した後に保岡氏と会談したのは初めて。首相は「憲法審査会に出すわが党の案をしっかりまとめる努力をしてほしい」と指示した。保岡氏によると、改憲原案の対象項目として、首相が言及した9条と教育無償化のほか、大災害時を想定した緊急事態条項の創設が話題に上ったという。
 保岡氏は会談後、記者団に「できるだけ早く具体案を考える」と述べた。原案作成に向け公明党や日本維新の会とも今後協議する意向を示した。
 改憲原案の検討は、総裁直属機関の憲法改正推進本部を軸に進めるとみられる。顧問には首相の表明を支持する高村正彦副総裁、首相に批判的な石破茂前地方創生担当相らが名を連ねる。具体的な検討は本部内に「起草委員会」を設けて行う案も浮上している。
 
 さらに他の党機関も含め挙党態勢で取り組む方針で、下村博文幹事長代行は12日の記者会見で「幹事長室がサポートする」と述べた。下村氏は同日夜のBSフジ番組で「党内で年内にコンセンサスを作り、来年の通常国会の憲法審査会に自民党案を出せればベストだ」と意欲を示した。